魔王の嘆願

私は愚かでした。

民から反旗を翻されても仕方ない男でした。

故に、私は処刑されても仕方のない男なのです。

私は、ある女性を愛しました。

その女性は、平民でした。

王の私とはあまりにも身分が違いました。

お忍びで街をふらふらと歩いていたあの時、大臣を抑える事ができない無様な王である事に悩んでいたあの時。

私の目の前に現れたのが彼女でした。

いつしか私は微笑む彼女に会いたくて、城を抜け出していました。

彼女との想いを確認することなんて出来ませんでした。

確認するなんて勇気は私にはありませんでしたし、何より確認したところで私と彼女との関係を変える術を私は持ち合わせていませんでした。


ある日民衆の暴動が起きました。

先陣を切った彼は私のよく知る男でした。

彼は民衆の人望も厚く、俗に言う上に立つ者でした。

彼に倒され、私は死ぬ。

それが運命として決まっていたような、そんな心持ちにさせられました。

はは、私はあの男に負けたのです。全てにおいて。愛する人も。国も。

あの男はあろうことか大臣たちを生かしました。

私だけ処刑が決まってしまったのです。

あぁ、どうか、どうかお願いします。

あの男をお止めください。あの男は勇者でもありません。

私欲に塗れた悪魔です。

あの男から私の愛する彼女をお救いください。

彼女は彼に囚われてしまった。

きっと、心が壊されてしまう。

彼女だけは、幸せに生きてほしかった。


そんな願いすら、私の願いというだけで果たされてはいけないのですか。

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