町娘の悲哀

私はしがない町娘。

今までの王国は、王を傀儡にした、大臣達による独裁国家でした。

王はとても心優しいお方でした。

私は町娘、何故王のことを知っていると思いますか?

私は王がしばしばお忍びで飢えに苦しむ民の生活を見て回り、心痛めていたことを知っていました。

王はあまりにも純粋で、だからこそ大臣の言いなりになるしかない現状を嘆いておられました。

王が何をしたというのですか?

王は私達と寄り添っておられました。

王は私達にどうにかして困窮した生活を少しでも豊かにしてあげようと、宝物庫の宝を売払おうとしていました。

王はとても優しい微笑みを浮かべる方でした。

民よ、王を処刑してそれで幸せですか?

あの時私達を苦しめた張本人達は元気に生きているというのに。

王だけが私達の味方だったのに。

何故あの男を勇者と仰ぎ、担ぎ上げたのですか。

あの男など、王に及ばず、そしてただの私欲の権化だと言うのに。

王を殺すくらいなら、私と王を何処か知らない場所に逃して欲しかった。

穏やかに慎ましく暮らして、あたたかな家庭を作りたかった。

彼を愛していたのに。

私の愛する人を返して。

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