第32話 謎の男と同行者

「やぁ、あまね。魔王国での用事全部キャンセルにされたんだけど。」


「どうせいつもの実験台探してただけですよね。」


「失敬な。ちょっと開発した魔法を試しに行っただけだ。もちろん、了承ももらってな。」


 彼はフェルス。教会の死霊術師で、主に教会の墓の管理をしてくれている。もちろん、墓荒らしなどは許していない。


「はいはい。レイズもありがとうございます。」


「いえ。10分掛かってしまって申し訳ありません。」


 レイズは恐縮そうに言ってはいるが男の方をしっかりとみている。彼が使った【雷雨】は水分を生み出し、電気を発生させ放電する魔法だ。この魔法の利点は手加減がしやすく今回は弱めたらしい。


「くく…」


「何が面白いのですか?」


「いやなに。私を捕縛した褒美をあげようとね。」


「あとでゆっくり聞きますので。」


「俺にこの依頼をしたのは教会の連中だ。」


「そうですか。あなたにはたっぷりと話を聞きますので。レイズ、連れていけますか?」


「無駄だね。また会おう。」『反転』


 その瞬間男は消え、残ったのは陽炎だけだった。


「消え…た…?」


「瞬間移動…でしょうか。」


「おかしな魔力反応は感じられませんでしたが…フェルスさん。」


「……だめだね。憑けた死霊も反応がないね。完全に逃げられたみたいだ。」


 レイズの方を見ても頭を横に振っている。彼も見つからなかったのだろう。


「そうですか…仕方ありません。とりあえず、レインさん達と合流しましょう。」


「あ、僕は遅れていくよ。この遺体を埋葬してあげなきゃ。」


「レイズ、レインさん達を探せますか?私はこの人を見張っていますので。」


 絶対何かをやらかしますよね。この人。


「わかりました。」


「ひどいなぁ。教会のお仕事をこなそうとしているだけじゃないか。」


「フェルスさんはさっさと済ませてください。ラークさんは空からレインさん達を見つけられますか?」


「わん。」


 私達は各自やることをこなすことにした。


 side:謎の男と少女


 どこかの山にある洞窟。

鏡が何枚もある洞窟の中で少女がいた。

ふと鏡が光ると男が出てきた。

少女はそちらに声を掛ける。


「だいじょーぶ?」


「あぁ。ありがとう。」


「おしごとおわった?」


「あぁ。あの村の村長を殺して機械を壊せって依頼はしっかり完了した。」


「おつかれさまー。」


「次の仕事はなにかあるか?」


「うーん…まだきてないね!」


「そうか…とりあえず、依頼人に報告するぞ。」


「はーい♪」


男と少女はまた分かれる。

男は外に向かい。

少女は鏡の前で祈る。


彼等は動く。

前進するしか道はなく。

振り返れば赤の道。

男は赤に染まり。

少女は鏡の光に染まり男を迎える。


「さて、行こうか。」「いってらっしゃーい。」


男が望むは光。

少女が望むは安全。


互いを思い今日も行く。

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