第334話 アフロとビニール

 はぁはぁ、柚月の奴めいちいちくだらない事しやがってぇ……。

 柚月を倒してから、引き込んだ電源線を綺麗に隠しながらオーディオ裏まで引き込んで、余った電源線を束ねてからオーディオの電源と付け替えたんだ。


 しかし、この電源ケーブル、なんで二股に別れてるんだ?


 「ウーファーをつける時や~、パワーアンプを稼働させるためだよ~」


 そういう事か。

 そのウーファーにもちょっと興味があるかな?

 それがあると低音が強くなるんだよね。


 接続が終わったけど、まだ優子は来ないみたいだから、ちょっとどのくらい変わったのか試してみよう。

 バッテリーを接続してから、エンジンをかけてオーディオのスイッチを入れてみたんだ。


 すると、いつもと同じ曲なのに、明らかに深みと広がりのある音になったんだよね。

 低音はより強くて深く、高音は伸びと広がりがより強く感じられてさ、音の幅広さがより強く感じられるようになったよね。

 なるほどね、電気の通り道を見直してみるだけでも、これだけメリットがあるんだね。


 それを踏まえての、スピーカー線の引き直しかぁ。

 まぁ、30年前の配線だし、それに、この細さだからね、この売ってたスピーカーケーブルだって、そんなに言うほど太いか? って思うんだけど、そのケーブルよりも遥かに細いからね。


 まずは、大体の長さで採寸して、長さを決めておこう。

 最初は取り回しを考えて、やや長めにカットしておこうね。足りないよりも余ってカットする方が良いからね。

 それで、オーディオ側はギボシ端子にするんだけど、これって、どっちがマイナスだろ?


 「マイナスは~、コードに線が引いてあると思うよ~」


 どれどれ……あ、ホントだ。透明チューブなんか使うから、中の線の色と混じって見分けがつき辛いんだよ!

 それで、配線を作ったら、次にコードにナンバリングをしておこう。


 「なにをナンバリングするの~?」


 どっちが右で、どっちが左かをだよ。

 今までは配線自体の色が違っていた上に、タグが付いてたから分かったけどさ、今度は同じ色の配線だから、外しちゃったらゴチャゴチャになって分からなくなるよ。

 だからビニールテープを巻いて、マジックで書いておくんだよ。更に、左右でビニールテープの色を変えておくと、万一マジックの文字が消えちゃっても、色で分かるから完璧だよ。


 「マイ~、頭良いなぁ~」


 そりゃぁ、お宅とは、ココの出来が違うんでね。

 え? 元ネタを教えろだって? 何言ってるんだよ、私のオリジナルだよ。アフロの探偵なんて、関係ないよ!


 取り回しで一番難しいのは、ドアの中に線を引きこむ作業なんだけど、前にキーレスエントリーをつけた時にやってるから、そんな難しい事なくできちゃったんだよね。

 助手席側は、キーレス配線通してないけど、でもってやった事ある作業だから、難なく完了しちゃったよ。


 一応言っておくけど、簡単とは言っても、配線通しのゴムパッキンの作業が2回あったり、配線の取り回しなんかがあるから、ビギナーがすぐにやってできるかというと、ちょい難しめで、やり応えのある作業になると思うよ。

 それで、スピーカー側の端子も作って接続が終わったところで優子が来たよ。


 「ちょうど良かったみたいだね」


 どういう事?

 タイミングとして、スピーカー配線に手を入れてる今が一番やりやすいんだって?


 まずは、配線作業で外したスピーカー裏に、このシートを貼るんだって?

 これで、裏の鉄板が共振するのを防ぐんだって?

 まぁ、原理は分かるよ。スピーカーは振動するからね。その後ろにある鉄板が共振するのは分かるけど、R32の場合って、スピーカーを取り付けてる樹脂製のブラケットの裏側が回り込んでるから、防振できてそうな気がするんだけど、え? それは甘いんだって? その樹脂が振動するからダメだって?


 とにかく、これで防振剤を敷いたんだけど、メインの作業は、ドアの中にあるサービスホールを塞ぐことなんでしょ?

 内張りを剥がしたドアの中には、修理や点検用にあちこちに大きな穴が開いてるんだけど、共振しないようにそこもシートとかで塞ぐんだよね。


 この間、解体屋さんで見たんだけど、今の車って、ドアのサービスホールが最初から塞がってるんだよね。

 さすがに完全に埋まっちゃってると、補修作業ができないから穴は開いてるんだけど、その穴に樹脂の板で蓋がされてるんだよ。

 アフターの世界で始まった事が、いつの間にか新車づくりに影響を与えることって、あるんだね。


 その前に、ドアの中のビニールの除去だって?

 え? あのドアの内張り取った先にある、分厚いビニールでしょ? でもってあれは、取っちゃいけないって言ってなかった?


 え? 今からサービスホールは全部塞いじゃうから水が入る心配はなくなるし、そもそもそのビニールも共振音の原因になってるんだって?

 そういう事かぁ……確かに、解体屋さんで見た車にも、そのビニールは最初からついてなかったね。


 このビニール自体の除去はそうでもないんだけどさ、これをくっつけてるこのベタベタの撤去は、ちょっと面倒だったなぁ……。

 パーツクリーナーで、あらかた溶かすんだけどさ、それでも残っちゃったりするからさ、そのくらいの場合は、もう1回パーツクリーナー吹くか、ガムテープで剥がしちゃうかのどっちにするかを考えたりしてさ……。


 綺麗に消えたところで、優子の用意したシートを貼っていくんだけどさ、これってただの銀紙かと思ったら、鉛が含まれてるんだね。この鉛で吸音と吸振するんだね。

 取り敢えず、ドアの鉄板の埃や汚れを1回綺麗に落としてから、貼る位置を決めてしっかりと貼りつけよう。

 R32の頃は、結構、このサービスホールを通して配線とかがこっち側に出てたりするから、それの位置を見直したり、避けられない物に関しては、シートをカットして線を通したりしたんだ。


 取り敢えず、形にはなったね。

 これで完全に穴が塞がったし、1ヶ所だけ配線通しにカットしたけど、そこだってきっちり塞がってて、水の進入もないから、狙い通り、これでこの穴からの音漏れはないよね。


 その上で、今度は内張りをきちんと戻してみて、干渉しないかだけど、そもそも今までに比して出っ張るものなんてないから、干渉するなんて考えられないんだよね。

 よし、運転席が終わっちゃうと、助手席の作業は簡単なんだよね。単純にさっきのおさらいだからね。

 

 よしっ、助手席も終わって完成したよ。

 さっき調べてみたらさ、本来デッドニングって極めるなら、ドアの中の可動部。例えば窓のレールだとか、鍵のリンクだとかまで防振したりとか、ドア内のレイアウトをなるべく振動しないように見直すとか、そういうところまで突き詰めるものなんだって。


 でもって、何事もそうだけど、極めていく事に自分のライフスタイルが合致するかってところが重要なんだよね。

 私は、軽量化しすぎてエアコンやオーディオの無い車とか一緒で、そこまで突き詰めたところで、古い車であるR32の故障要因を高めてくのは本末転倒だし、正直、私を感動させられるレベルのそこそこであれば良いと思ってるんだよね。


 だから、これで充分満足だよ。

 あとは、遂に完成視聴会だよね。

 さてと、それじゃぁ、内張りを元に戻して、接続したら早速試してみよっかなぁ……。


 

──────────────────────────────────────

 ■あとがき■

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『デッドニングの効果ってどうなの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。 

 

 



 

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