第332話 白錆と引き直し
まぁ、昨日の作業で結衣の車もあらかた応急処置ができたから、しばらくは問題ないよね。
それでも、できれば来月くらいまでにプラス配線の見直しは必要だよね。
「プラスの見直しって、具体的にはどうするんだ?」
結衣も興味が出てきたの? え? 自分の車の事なんだから当たり前だって?
まぁ、御大層な事言っちゃったんだけどさ、プラスの見直しって言っても、プラスの入口は決まってるんだからさ、バッテリー端子のリフレッシュとかだよ。
「ええーー!? そんな事、できるのかよ?」
つい最近まで車いじりなんてやった事ない、か弱いJKだった私ですら、ホムセンやカー用品店に、バッテリーの打ち替え端子が売ってるのを知ってるくらいなのに、なんで結衣は知らないのよ?
「マイが~、か弱いJKな訳ないだろ~!」
うるさいんだよ、柚月は!
話に直接関係しないのに、いちいち割り込んでチャチャ入れてるんじゃないよ!
このっ! このっ! こうしてやるっ!
「参りました~、ゴメンなさい~!」
そう簡単に許すもんか! 悠梨ー、柚月ヤッちゃって。
「オッケー!」
「イヤだ~!」
さてと、邪魔者は消したところで、本題に戻ると、結衣の車の電気の状況を見てみると、車庫保管で、冬場はほとんど使ってなかった車だから、そういった意味での状況は良かったんだけど、1年のうちで使ってない期間が長かったことが影響してるのか、端子の状態が全体的に良くないんだよね。
「それって、どういう事?」
それは、端子が腐食しちゃってるんだよ。
私らの車に比べて、結衣の車の端子って、白っぽくなってるのが多いし、密着面も輝きが無いのが多いしね。
こういうのってさ、ある程度通電してた方が良いんだよ。そういう設計になってるからさ、ある程度通電してるって前提だから、防錆処理もさほどしてないんだろうからね。
ホラ、通販のカー用品とかで、車に電気流して錆をガードするようなのがあるじゃん。きっと、それに近い考え方で、電流はある程度流れてた方が塩梅が良いんだよ
。
「なるほどな」
恐らくだけど、結衣の車って、冬場は使わないからって、バッテリー外してたとかじゃないのかな?
そう考えると、電流が流れてなかった事の説明もつくんだよね。
年式の割りに異様に走行距離が短くて、車庫保管の車って、一概に手がかからないとは言い切れないのが、こういうところなんだよ。
週末ごとに、ちょっとずつでも乗ってたとかなら、話は別なんだけど、年間で2~3回しか動かしてないとか、全く動いてない年があった車とかって、結構、そういうサイレントな不調要因が隠れてたりするもんだから、難しいところだよね。
「ところでマイ、となると、どこから交換していったら良いんだ?」
そうだね、マイナスアースはちょび強化しておいたから、余裕がある時に買い直せば良いけど、バッテリーのプラスとマイナスの端子は、買っておいた方が良いかもね。
私が、さっきなんで、結衣の車のバッテリーは冬場外されてたんじゃないかって話をしたのかと言うとね、バッテリー端子に小さな割れがあったんだよ。
「ええっ!?」
それ自体は、小さなひび割れで、通電に影響は無いんだけど、あれが割れてくるって事は、結構頻繁につけ外しをしていて、つける時につい、力を入れて締めすぎてるって事になるんだよ。
あの走行距離で、そんなしょっちゅうバッテリーが寿命にはならないだろうから、そう考えると、冬場にバッテリー上がりを起こさないように外してたんじゃないかって推測が出来たんだよ。
「なるほどね」
恐らくだけど、これだけでも結構シャキッとすると思うよ。
磨きでもイケると思うんだけど、外して磨くのも結構手間かかるし、割れも起こってる事を考えると、ここで新品にしておくってのがベストだよね。
「分かったよ……それで、どれを買えば良いんだ?」
まぁ、量販店に売ってる端子が手に入りやすいけど、形状は純正と変わっちゃうから、結構ゴツくなるよ。
恐らく肉厚になってるから通電性能とかは良いんだろうね。
それと、プラス端子に付いてる赤いカバーが付かなくなるかもしれないから、何かでカバーしなくちゃけなくなるかもね。
「あれ、ぶっちゃけなんで付いてるの? いらなくね?」
結衣、一応あれは安全のために付いてるんだよ。
走行中に、万一バッテリー端子が、ボンネットとかと接触した時に、剥き出しだと、ショート起こして車が止まっちゃったり、最悪は火災が起こっちゃったりするから、それを防ぐためのカバーだからね。
そんな可能性はほとんど無いに等しいけど、ゼロじゃないし、結衣の車だって純正状態じゃないんだから、何かのボルトとかと接触する可能性だってあるんだよ。
「なるほどね……」
車に純正で付いてるものって、バカにしがちなんだけど、凄くよく考えて作られてるものばかりだから、なるべく活かしておくに越した事は無いよね。
「だったら、新品の端子が出るか調べてみる!」
そうだね、それが良いと思うよ。
よしよし、これで結衣の車の電気は、これでかたがつくね。
結衣の端子交換とかと一緒にアーシングもやっちゃえばいいから、まぁ、結衣の日程次第ってところだね。
「ところで~、マイの車の電気はどうするんだい~?」
あれ!? 悠梨、突然どうしたの? 柚月と遊んでたんじゃなかったっけ?
「出せ~~!」
柚月は、掃除用具入れが好きだなぁ、なんなら、あそこに住んじゃえばいいのに。
まぁいいや、ところで、私の車の電気って? アーシングは終わったし、私の車のバッテリー端子は、まだまだ元気だよ。
「違うよ、バッ直端子だよ。やらないの?」
あぁ、そう言われてみれば、悠梨が前に、オーディオの電源を、バッテリーから直に引いてて、その音の違いに驚いたんだっけ?
その直後に、アーシングの話とかがあったから、すっかり忘れちゃってたよ。
でもって、それさ、そんな簡単にできるものなの?
「そこはみんなと私の違うところでさ、私は、トランクから他の配線伝いに引っ張ってきたんだけど、R32勢は、エンジンルームから室内に引き込む作業がいるよ」
そうかぁ……。
でもって、昔の私だったらめんどいから諦めたけど、配線を室内に引き込む原理は何となく分かってるから、そんなに難しくなくできそうだね。
専用のケーブルセットも、買ってもそんなにしないし、自分で作ることも出来るだろうから、なんか、ちょいちょいっとできちゃいそうだね、バッテリーからの直引き配線が。
そこまで面倒な作業なく、あの音が手に入るとなると、これは迷わずにやっちゃうしかないかなぁ? やっぱりやっちゃうしかないよね?
音楽をやっていたから分かるんだけど、音の世界って、こんなもんだろうって、思えばこんなもんなんだけど、一度向こう側を味わっちゃうと、ついつい向こう側に行きたくなっちゃうんだよね。
こんなすぐそばにエデンが待っているのに、それを味わわないで終わりにできるのか
すっかり上機嫌になって、私は悠梨の提案に乗っかって、オーディオ電源の直引きをやってみる事にしたんだ。
なんか、妙にやる気が起こっちゃって、何故か分からないけど、初めて体がウキウキしながら作業の準備に臨んだんだよね。
その時はね、まさかあんなことになるなんて思ってもみなかったんだよね。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『バッテリー端子の交換って、どうなるの?』など、少しでも『!』と思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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