第318話 現代化計画とひらめき
まったくアマゾンめ、参ったか!
さてと、これで、ドアミラーの自動格納装置も付いたし、私の車の現代化計画も、ナビがつけば完璧かな?
どうよどうよ、最初の頃に比べると、グッと今の車っぽくなってるよね。
なに柚月? R32にはオプションでキーレスエントリーや、ドアミラーの自動格納装置はあったんだって?
だけど、高価な上に、当時はそこまで必要な装備だと思われていなかった事もあって、取り付ける人が少なかったんだって?
そうなの? でも、なんで柚月がそんなに当時のR32の事情に詳しいのよ。
「別に~、私の優秀さかな~?」
ウソつけ、柚月が優秀な訳ないじゃん。
どうせ、デタラメに決まってるよ。
「デタラメじゃないもん~!」
「マイ、その話は本当だよ。おじさんが買った時のオプションカタログにも、それについての記載があるんだよ」
へぇー、優子はオプションカタログまで持っていて、情報固めをしてるのかぁ……凄いもんだねぇ。
なに? でも流石に、ナバーンのカタログは持ってないって?
なにそれ、なばーんって?
「マイのバカー!」
柚月がかかってこようとしたけどあっさり避けて、逆に蹴りを入れてやったよ。
優子の話によると、バブルの終盤の頃、日産が立ち上げたオプションブランドの名前らしい。
かなり力を入れていて、スポーツ系の車はもとより、ファミリーカーからRVに至るまで、幅広い車種に色々なラインナップのオプション用品を用意してたらしいよ。
今で言うところの、ニスモとかのオプション品と考えれば良いのかな?
ただ、立ち上がったのがバブルの終盤っていう、一番タイミングの悪い時期だったから、ロクに認知されないままに、日産の経営状況が厳しくなるにつれて自然消滅していったんだけど、ちょうどR32やS13の後半あたりが、ブランド立ち上げで、結構大々的にやってて、専用カタログなんかもあったらしいよ。
「最盛期は、レカロと共同開発でナバーンのスポーツシート作ったり、専用のエアロやホイール作ったり、結構凄かったんだよ」
へぇー、優子がスマホで検索してみせてくれたけど、ホイールやハンドル、シフトノブなんてものから、エアロパーツまであったんだね。
正確な発音はナヴァーンなんだね、でも、面倒だからナバーンでいいや。でも、ホントだ、R32のオプションカタログにも載ってるね。
へぇー、MTに限らずAT用のシフトノブまで作ってるなんて凄いね。
でもって、このAT用のシフトノブって、使い勝手悪くないのかな?
なに優子? この次の世代になると、実際に車の開発段階から、ナバーンのオプションパーツが一緒に開発されてくるようになるって?
「ちなみに、部車や燈梨ちゃんのシルビアについてる、エアロバンパーやリアスポイラーは、ナバーン製だからね」
そうなの優子?
ちなみに、S14の前中期には、リアスポイラーが2種類あって、小ぶりな方は純正オプション品で、燈梨のについてるようなサイドまで周りこんでる大型のタイプはナバーン製なんだって?
「確かに、私のシルビアのリアスポイラーの真ん中の辺りにナバーンって書いてあったよ」
なるほどね。
今のニスモオプションやG'sみたいな事の先駆けみたいな感じってことだね。
「そういう理解で問題ないよ」
なんか引っかかる言い方だなぁ……まぁ、いいや。
でも、知らなかったなぁ、ナバーンなんて、私の車には1つも付いてなかったもんなぁ……。
「仕方ないよ。マイのは前期だもん。ナバーンが立ち上がるのは後期の中ごろからだから」
へぇー、R32やS13では後期の途中から立ち上がったから、今一つ装着車が多くないんだって。
「恐らく、もう何年か早く立ち上がってたら、バカ売れしたS13なんかに装着されて、結構知られた存在になったと思うよ」
そういう事ね。
タイミングが悪かったんだね。
ところで、なんでナバーンの話になったんだっけ?
そうだ、オプション品の話からそんな話題になったんだよね。
とにかく、もう部活も終了の時間だから、取り敢えず駐車場まで移動しよう。
1、2年生のバイク組が帰って行くのを見送って、私らは、さっきの話題で、もうちょっとだけ盛り上がっていた。
あ、ホントだ。
燈梨と部車のS14のリアスポイラーの真ん中に、確かにナバーンのマークが入ってるよ。『navan』のVより右側の2文字が逆向きになってるところにバブルを感じるよね。
確かに、このリアスポイラーやバンパーは、車に合わせてデザインされたって感じのする纏まったものだよね。
え? S13用のリアスポイラーもあったんだけど、あまり目立たなかったんだって?
へぇー……。
そろそろ、ナバーン談義にも飽きてきたので、帰ろうかな……と思ってたところ
「優子のこれって、何のスイッチなんだ?」
と結衣が、センターコンソールにある妙なスイッチを指さした。
なんだろコレ? 扇風機の羽みたいな絵が2つ描いてあって、ドアミラーの格納スイッチみたいに、真ん中がオフで、右と左は風量の違いになるように見えた。
「あぁ、これはピュアトロンのスイッチだよ」
優子なにそのぴゅあとろんって?
「日産車用の空気清浄機の事、ディーラーオプションで、どの車にも設定されてるよ」
そうなの? そんなの初めて聞いたよ。
え? 大昔からあったし、つい最近まであった物だって?
でもって、空気清浄機なんて、本来なら結衣の車にピッタリそうなんだけど、なんで優子の車についてるんだろうね。
「伯父さんは、昔から気管支が弱かったみったいだよ。だから、空気清浄機は欠かせなかったみたい」
そうなんだ。
でもって、優子の伯父さんは、かなりのヘビースモーカーだったような気がするよ。
伯父さんが住んでた家の壁がまっ黄色だったって、優子のおじさんとおばさんが言ってるのを聞いたことがあるし、いつも煙草臭かったのを覚えてるから。
「でも、お婆ちゃんが煙草が苦手だった事もあって、車の中では吸ってないんだよ」
そうなんだね。
「マイ、聞こえてるんだよ! なんで私にピッタリなんだよ」
だって、結衣は部屋が埃まみれの
危うく柚月が死にかけたし、優子まで咳き込んじゃったんだよ。
きっと車の中だって埃まみれで、空調を作動させるとたまった埃が車内を循環してくるんだよ。
ある意味、これって兵器だからね。
だから、結衣の車にはピッタリだと思うんだよねぇ……。
私が言いながら結衣の車の中を覗き込もうとすると
「いいんだよ! それに変な言葉作るなよ!」
と言ってブロックしてきたよ。
どうやら結衣の車の中は、埃まみれみたいだね。
「おーい、やっぱり結衣の車の中、埃っぽいぞ!」
逆サイドにいた悠梨が、後ろのドアを開けて中をなぞった指を見せながら言った。
そして同じく、開いたドアから室内に身を乗り出していた優子が
「これじゃぁ、ピュアトロンつけても、すぐにフィルターが詰まっちゃいそうだね」
と顔を曇らせながら言った。
「お前らー!!」
結衣は顔を真っ赤にしながら、手近にいた柚月に掴みかかった。
「私、何も言ってないよ~!」
「いーや、お前のその目が、私の事をバカにしてた!」
「言いがかりだよ~!」
次の瞬間、柚月は結衣の腕を振りほどいて、ダッシュでその場を離れていった。
逃げていく柚月を追う結衣を見て、最近の結衣は、まるで芙美香みたいなこと言うよな~……と思いながらいると、ふと、思いついたことがあった。
きっと、これはいいアイデアだと思うんだよねぇ。
「待てぇー!」
「イヤだ~!」
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『当時のオプション品について、勉強になった!』など、少しでも『!』と思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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