第227話 文化祭の花道

 貰った改善案を基にして、午後からは現役員と旧役員を招集しての改善案を打ち合わせて、明日に備えることにしたよ。

 なにせ、これが私らの運営としての最後のイベントなんだからさ、しっかり花道作りたいよね。

 

 え? 花道は自分で作るものじゃないんじゃないかって? 細かいところは良いんだよ、細かいところは。


◇◆◇◆◇


 文化祭の2日目が始まった。

 改善点は、人員の配置と声かけのポイント。

 みんなに、こういう狙いがあるって事と合わせて伝えたんだ。


 やっぱり、狙いは一般客に、どれだけ好意的な対象として認知させるかに尽きるんだよね。

 学校としても、一般生徒や、外部の生徒予備軍、その保護者なんかにアピールして、自動車部を受験の検討材料の1つにして貰って、生徒数を増やしたい訳だからさ。


 だから、対象から外れるのは明らかに成人してるオタク系ね。

 昨日、応対してて分かると思うけど、妙に話が長かったり、自分の理想像と違うとか、しょーもない話ばっかりで、先に繋がらないでしょ。


 逆に、一般のお客さんは、車だけ見て、内容を全く理解してないんだよ。

 だから、私ら女子だけの自動車部でも、入賞できちゃったんだって事を、しっかりアピールしておけば、自分の子供や親戚の子に受験を勧めてくれたりするわけじゃん。


 そういう理由で、説明が必要なんだよ。

 だから、人を見て、声掛けしようね。


 特にウチの部は、今年は出店がある訳じゃないから、お金も使わない休憩所や、待ち合わせ場所代わりに使われかねないからさ、暇つぶしの相手をしてあげる必要はないからね。


 そして、昨日、見ていて、追加したデバイスを、いくつかセッティングを行ったんだ。まぁ、デバイスって言うほどカッコ良いものじゃないんだけどね。


 まずは、水野に頼んで、大型モニターと、パソコン用意して貰ったんだ。

 実はね、紗綾ちゃんが耐久レースの時、カメラの他にビデオカメラも持って来てて、ずっとドキュメントで撮っててくれた画像があったんだよ。


 紗綾ちゃんはそれとは別に、動画投稿サイトとか向けに普段の活動と、耐久レースの画像を組み合わせたショートバージョンも作ってくれてたから、併せて入口前のブースと、メインブースに部室のテレビとプレイヤー置いて、迫力ではちょっと正面に負けちゃうけど、流すことにしたんだ。


 昨日、ちょっと見せて貰ったんだけど、紗綾ちゃんの動画、かなりイケてるんだよね。

 普段の練習走行や、整備の場面も、いつの間に撮ってたの? ってくらいあるしさ。これがあれば、老若男女問わず、活動が分かるだろうし、女子率の高さもアピールできて、結構部の魅力がビジュアル的に伝わってくるよね。


 それから、優子の家で、お店の改装をした時に用意してた風船が結構余ってたんで、それを貰ってきて、寄ってきた子供に渡したり、置いておくことで、子供に寄って貰おうっていう狙いで、各ブースに配分して設置したんだ。


 あとは、車両の一部変更かな?

 出店跡のスペースの、ナスカー風アレンジは、結構好評だったから、スカイラインもナスカー風にアレンジして、ナスカー風味2台展示にしたんだ。

 

 でも、昨日終わった後に急遽、スカイラインの化粧替えやるの、マジで大変だったんだからさ、なるべく黒か、逆に派手系な色のホイールをガレージから探して履かせたり、窓の所の網も、1台分しかなかったから、運転席側だけにして、チェイサーの助手席側から借りて、助手席用は、園芸部の網借りたりしてさ。


 ゼッケン作るのも大変だったし、このスカイラインの製作で、昨日は夜までかかっちゃったからね。

 しごきや根性論や、夜まで活動なんてしない、スマートな部活を目指してきたのにさ……。 


 それと、サファリも持って来て、アルテッツァと繋いで、救援風のオブジェにして、展示したんだ。

 そうだよ、自動車部なんて言うと、スポーツカー一辺倒の、暗くてジメジメした部に思われがちだからさ、こういう4駆なんかもある、ワイドな層に対応した部活だって見せてあげるのも面白いよね。


 ちなみに、1時間に1回、サファリのウインチでアルテッツァを実際に引っ張るイベントなんかも予定してるんだ。

 きっと、子供メインにウケるんじゃないかなって、思うんだよ。


 やった事を羅列するとこんなもんなんだけどさ、実際にやってみると、凄く時間もかかるし、結構大変な作業も含まれていて、正直、協力して貰った1、2年生にも申し訳なかったんだけどさ、みんな凄く喜んでくれて

 『自動車部の文化祭って感じがして、嬉しいです』

 なんて言ってくれる娘までいて、夜までかかった作業も、物凄く達成感があったんだよね。


 よーし、文化祭第2日目、はっじまるよー!


◇◆◇◆◇


 1時間半ほどやってみて、昨日よりも、盛況っぷりが分かるくらいの反響だったね。

 特に凄いのが、校門前のモニターのところで、あそこで結構な人が足を止めて見てくれるようになったんだよね。


 そこから、昨日はなかった流れとしては、そこのブースからメインブースや、出店脇の第3ブースまで足を延ばしてくれる人が、結構な数いた事なんだよ。

 昨日のお客さんは、校門前に行ったら、そこでおしまいで、他のブースで足を止める人は、ほとんどいなかったんだよ。

 『さっきも見たから』とか言っちゃってさ……。


 でも今日はね、正面で話を聞いた人たちが、こっちまで足を延ばしてきてくれて、R32見た後で、ナスカーたちの方へと誘導できたんだよ。


 やっぱりさ、競技車とその結果でお客さんの足を止めて、R32の普段の活動紹介へと誘導して、最後には、文化祭用に作ったドレスアップ車両へと足を向けて貰って、大会での戦いから、ちょっとお遊び要素の強いところまで、自動車部の魅力を余すことなく伝えられたと思うんだよね。


 それと、燈梨の感性が冴えたのが、サファリの展示ね。

 私らにとっては、向こうのグラウンド整備と救援車くらいのつもりで、正直、部車の頭数に入れてなかったんだけど、やっぱり、ゴツさが際立つからなんだろうね、こっちも子供と女子に人気だったよ。

 

 特に、1時間に1回、ウインチの実演やるとさ、黒山の人だかりができるんだよ。

 もう、通路が通れないくらいに人がたまっちゃってさ、もう、私らがビックリしちゃうくらいで。

 最初は、ムーヴでも引っ張ろうかって、話してたんだけど、インパクトがある方が良いって話で、貢献度合いが低くて、ボディのサイズもそこそこあるアルテッツァにしたんだけど、これが正解だったかもね。

 ムーヴだったら、正直『軽なんか引っ張っても』なんて、言われてインパクト不足だったかもよ。


 それと、意外に人が集まった展示は、プレミオとムーヴなんだ。

 どっちもグラウンド整備車として使ってる、日常の写真を撮ったボードと共に、ドレスアップして並べて、特にムーヴは『放置からの復活』として、部に勝手に捨てていかれたゴミとしてのスタートから、整備をして……という物語にしていった事が、共感を呼んだのかもね。


 校長の奴も、プレミオの展示には、凄く気分を良くしてたみたいで、何回かやって来ては、遠くからニコニコしながら眺めてたよ。

 これで来年の部費のアップは間違いないよね。

 

 あぁ、満足だよ! あとは、来年にどんな出店やればウケるかなんかを、現役の娘達と話し合いたいかなぁ……。


──────────────────────────────────────

 ■あとがき■

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『ここの学校は、文化祭後のキャンプファイヤーはあるの?』など、少しでも思いましたら

 【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る