第226話 メイド喫茶と改善案
燈梨とあやかんと柚月、そしてオリオリさんという珍しい組み合わせで、お昼にしようと探してると、燈梨が不意に
「私、ここがいいかな~?」
とある教室の前で言うので、足を止めて見てみると、そこはメイド喫茶だったんだよ。
お昼の時間とズラして行ったために、すんなりと5人席に案内された。
燈梨って、こういうところ、好きなの?
席に着いて開口一番、私が訊くと、燈梨は恥ずかしそうに下を向きながら
「いや、夏に初めて秋葉原に連れて行って貰った時に入ってさ、ちょっと凄かったからさ……」
私とあやかんは、燈梨のイメージじゃないから驚いてたけど、柚月とオリオリさんは、そんなことは思ってなかったみたいなんだよね。
そして、次の瞬間、オリオリさんが言ったんだよ。
「あぁ、あたしとフー子たちと行った時ね」
ところで、話の端々に出てくるそのフー子さんって、いったい誰?
すると、柚月が口を挟んだ。
「マイは、その人、見たはずだと思うけど~。前に教習所で、オリオリさんと一緒にいた人だと思うよ~」
あぁ、あのスポーツやってたって感じの人か……って、私が訊いてるのは、外観の話じゃなくて、どういう関係かって話だよ。
私の燈梨に、不埒な事をしてないかっていうのがメインなんだけどね。
「あいつらは、向こうの店にいた頃からのあたしの手下よ。フー子、ミサキ、唯花、朋美、それと、東京に行ってる桃華の5人組」
オリオリさんが言うところだと、山向こうの高校に通ってて、当時、オリオリさんの働いてるお店に来ていた仲良しグループなんだって。
あるイジメ事件をきっかけに、オリオリさんが介入して解決して以来、お店をたまり場みたいにして、オリオリさんも、よく遊びに行くようになったんだって。
「あたしのジムニーに無理矢理乗ってよく出かけたものね……」
オリオリさんは、パオの前はジムニーだったのか? え、沖縄にいた頃、ニュービートルに乗ってたって?
「明日、あたし、また顔出す予定だから、連れてくるよ。フー子たちは、あれとしても、唯花と朋美は間違いなく来るからさ」
ユイカさんって、この間、和食レストランで見た、黄色いランエボに乗ってた人?
「あれ? 唯花の事、知ってるの?」
いや、知ってるって程でもなくて、見かけただけなんですけど、そのお陰で、来月からイアンの中に入ってるそこのお店でバイトできることになったんですよ。
「唯花さんが、車好きなおかげで、みんな凄い車に乗ってるんだよ~」
燈梨、そうなの?
夏に来た時に、みんなの車を運転させて貰ったんだけど、フー子さんは、今の型のロードスターで、ミサキさんは、ローレルの5速MT載せ替え車、唯花さんはランエボVIIで、朋美さんは鉄仮面だって?
「しかも、ミサキさんはお父さんの車、朋美さんはお爺ちゃんの車を貰ったんだって」
へぇー、凄いな、家族に凄い車に乗ってる人がいると、貰えちゃうんだもんね。
「マイだって、そうだろ~?」
柚月め、余計なところで横入りしやがって、いいんだよ! 私は、羨ましがりたいんだから、ウチのなんて、兄貴が置いてったカビの生えたしょーもない車だったんだから、その2台とは全く格が違うんだよ。
ここで、話題を変えて、部の関係者じゃない2人に、忌憚ない意見を聞きたいなと思って、ぶっちゃけた感想を聞かせてもらいたいんです。
「私はね、正面の結果発表でのアピールは悪くないと思うよ。ただ、欲を言うなら、ビジュアル的にアピールできるものがあると、もっと良いかな?」
なるほどね、あやかんの意見は、現役生の意見として、重要なものだね。
写真のボードは、とてもイイ感じなんだけど、結果のボードは、伝えたい情報がゴチャつき過ぎて、見る気が失せちゃうから、主題の『3位、完走の2冠』だけを特大化して、あとの情報は、下の方に纏めて書いておけば良いんじゃね? って、感じだった。
「あたしが思うに、ブースの作りとかは良いんだけど、来る層に分けてアピールできるように、人員を配置するのよ」
オリオリさんの意見は、数々のイベントもこなしてきた伝説の店員さんの意見だから、凄く実践に即してるぞ。
曰く、ブースを作り替えるのは無理なんだから、たくさんいる部員を適切に生かして、顧客誘導やアピールをするのが肝要なんだって。
オリオリさんの意見では、黙ってても足を止めるマニアックな客層は、訊きたいことは、嫌って程、質問してくるだろうから、適度にスルーで、子供とか、女子だけとかで来る層で足を止めた場合は、対応を手厚くすると、物凄く効果的だという意見だった。
まぁ、半日やってて何となく分かったよね。
変なマニア層は、頼みもしないのにウザ絡みって程、質問してくるか、黙って大人しく、ただし舐めるようにじっくりとだけど眺めてて、話しかけると、これまたウザい程、語り出す層なんだよね。
反面、女子だけとか、子供連れで、子供が興味を持った層とかだと、こっちが声掛けしないと、車だけ見て『へぇー、凄そうー』とか言っただけで、ボードも見ないで、いなくなっちゃってるんだよね。
それで、声掛けしてみて、初めて私らがやってるって事を知って興味津々になっていくんだよね。
午前、声かけてみて、一番ガッカリしたのは、家族連れに説明したら『教員のレクリエーションだと思ってたら、生徒さんがやってたの?』なんて、ビックリされた事なんだよね。
やっぱり、展示物だけだと、なかなか認知されてないんだねって、事は感じたんだよ。
県内でも珍しい、高校の自動車部で、尚且つ女子だけ……。
ここもなんとかアピールできないか、そして、今の意見を踏まえた上で、色々考えることにしたんだよ。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『2人の意見を踏まえて、2日目にどう繋げるの?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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