第223話 作業完了とメモリアル展
ロールバー取り付け作業が終わった3台は、取り敢えずこれで第二練習場デビューが出来そうだね。
でもって、せっかくこっちに持って来てる間に、基本整備しちゃおうか。時間も余ってるし、オイル交換とプラグチェックだね。
ボンネットが開くとエンジンが見えるけど、アルテッツァは4気筒なんだね。確か、6気筒版よりも4気筒版の方がパワーがあるっていう珍しい車なんだよね。
チェイサーは、ボンネット開けた時に、ボンネット支える棒が無いよ。
え? ダンパーが入ってるんだ。だから、手を放しても開いてるんだね……って、手を放すとゆっくり下がってきてるよ。
なるほど、経年劣化でダンパーが抜けてくると、こうなるのかぁ……そう考えると、原始的に棒で支えてる方が良いような気もしてくるね。
あ、チェイサーのボンネットを、ガレージのシャッターを閉める鉤付き棒で支えてるぞ、やっぱり頭は使わなくちゃね。
でもって、こうしてボンネットを開けてエンジンルームを見ても、アルテッツァの程度の悪さが際立つね。
このアルテッツァ、1度フレーム修正にかけた痕があるから、前回りを大破させた経験があるね。
しかも、その上で、両方のフェンダーは、クチャってなったのを、明らかに自分で手鈑金した痕があるし、更にエンジンも汚くて、全くと言っていいほど整備した跡が無いんだよね。
「手鈑金って、なんですか?」
「私は、フレーム修正ってのも分からないんです。お願いします!」
若菜ちゃんと陽菜ちゃんか。
説明すると、乗用車の場合、フェンダーやドアといった外板の下に、フレームっていう骨格があるんだよ。
だから、事故で、フェンダーやドア、バンパーにダメージがあっても、軽度なものだったら、それらで衝撃を吸収するから、それらを交換したり、鈑金するだけで良いんだよ。
ただ、重度の事故を起こすと、外板だけでは受け止めきれずに、フレームにダメージが回っちゃうんだ。
そうなると、外板だけ修理しても、真っ直ぐ走らなくなったり、ドアの開口部が歪んで開け閉めできなくなったり……と、かなり弊害が出てきちゃうから、フレームが歪むと、修正して貰うか、廃車するかって、なっちゃうくらいの大修理になるんだよ。
そして手鈑金っていうのは、フェンダーが事故で曲がっちゃったりした時に、鈑金屋さんに持ち込まないで、自分で叩いたりして直しちゃうことを言うんだよね。
とは言え、プロでもない人がやるから、仕上がりや修理の出来栄えもまちまちで、ほとんどの場合、一見してバレバレなほど、仕上がりが悪いんだよね。
この車の場合もさ、なんか、ニキビみたいにブツブツに膨らんでる箇所が無数にあってさ、マジで? って感じだよね。
恐らく裏からハンマーの尖ってる面で叩いたんだけど、勢い余ったって感じの膨らみ方だよね。
え? なんで知ってるのかって? 兄貴が土日のたびにやってたからだよ。
いつもハンマー持ち出して、最初の頃はフェンダー外して、裏からハンマーで叩いてたけど、ある時期から、裏に板当てて、表から叩くようになってたよ。
確かに、数をこなしていくようになると、兄貴の鈑金のスキルも上がっていったんだけどさ、綺麗に直したところで、車自体を兄貴が次の週末で昇天させてたから、ハッキリ言えば無駄なスキルだったんだよね。
よく見直してみると、この3台って、全部兄貴が乗ってたことがある車種だよ。チェイサーとスカイラインは、両方ターボだからグレード違いだけど、アルテッツァはRS200とかいう4気筒のグレードだったから、同じじゃないかな?
色は、チェイサー以外違うね、スカイラインは青だったし、アルテッツァは黄色だったからね。
「マイ、それ本当?」
うわっ! 優子、いきなり背後から水野みたいな現れ方するなよ!
心臓が止まったらどうするんだよ。
「大丈夫。第二体育館もAEDあるから」
そういう問題じゃないよ!
ところで、何の用? どうせ、ロクな事じゃないでしょ。
「そういう言い方って、無くない? あのね、今ので私、ひらめいたんだけど、文化祭の展示の中に、これをマイのお兄さんの乗ってたのそっくりに作り直して、『沢渡遊馬メモリアル展』やろうよ!」
ホラ見ろ、ロクでもない事だ。
優子さ、兄貴のシンパはやめた方が良いから。
あんなのと関わるとロクな目に遭わないよ。
優子、もう大人でしょ? こんなのに心酔してていい歳じゃないよ。
それにさ、この3台をどうやって週末までに、兄貴が乗ってたのと同仕様にするんだよ。チェイサー以外は色が違うし、そのチェイサーにしても、ホイールも純正の15インチの鉄ホイールじゃなくて、19インチとかだったし、エアロパーツとサンルーフもついてたからね。
アルテッツァは、色だけ変えればいけるかなぁ? ……いいや、確かトランクにデカいスポイラーがついてたなぁ。
スカイラインも、エアロパーツと19インチホイールで、九州にいるドリフト名人と同じ仕様とか言ってた気がする。
……って、私は何を真面目に考え込んでるんだよ! とにかく、こんなの無理だからね!
「ねぇ、マイ、マイ!」
えぇ~い、うるさい優子! やらないものは、やらないんだよ!
……って、悠梨じゃん。どうしたの?
「優子のおふざけ企画は別として、ものは相談なんだけど、この新しい部車も、展示させてもらえないかな~と思ってさ」
え? 水野と燈梨に相談になるけど、あっちの練習場の実際の運用は来週からになりそうだから、別に良いんじゃね?
「私は、良いと思うよ。舞華」
そう? 燈梨ゴメンね。
え? 文化祭で注目が集まるなら、そっちの方が嬉しいって? 燈梨はさすがだねぇ。
現役の燈梨がOKしてるとなると、水野の方は、私が言ったらほぼOK出るだろうから、良いんじゃないかな?
でも、そんなに展示場所あるの?
「いや、実行委員が昼に来て、市内の食品卸会社で食中毒出ちゃって、バドミントン部とサバゲ同好会の出店が出来なくなっちゃったんだって。その分を、車2~3台で埋めて貰えないかって話でさ」
結衣もやって来て説明を始めたよ。
この辺って、山の中だから、食材をまとめて仕入れるには、ルートが限られるんだよね。
そのうちの1つがそれだと、結構きついね。
そして、サバゲ同好会なんてあったんだ?
「マイ~、部長だったんだから、課外活動に関心持とうよ~。結構、この辺の学校では、活発な課外活動で、山向こうの学校とウチは、強豪校なんだよ~。来年には、部に昇格するらしいよ~」
ふーん、そうなんだ……って、ノーパン柚月め、いつの間にそこにいたんだ?
「ノーパンって、言うなよ~!」
ノーパンだから、ノーパンって言って、なにが悪いんだよ!
おまわりさーん、コイツ、ノーパンです!
「覚えてろー!」
さて、展示するのはまぁ良いとしても、どうする?
ロールバーと、4点式シートベルトつけただけで、車高もノーマルだし、チェイサーに至っては、鉄ホイールで、レースのシートカバーまでかかってるからね
。
まぁ、アルテッツァは、元々が走り屋仕様っぽいから、ちょっと手を加えるだけでいけそうだけどね。
そこに燈梨が小走りでやって来た。
「先生は、文化祭優先で、やり方は任せるって」
まぁ、水野なら予想できるほん投げっぷりだなぁ。
さて、どうしたもんかなぁ……。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『新部車3台の今後は?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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