第209話 アンドロイドと柔らかい爪

 いい? 優子。

 私の見立てはこうだね。


 確かに悠梨は存在してたんだよ。中学生の頃までは間違いなくね。

 それで、コレはいつなのかは断定する材料が無いんだけど、ある日さ、1人で、森の中に入っていったところに、突然謎の発光体が墜落してきて、それを目撃した悠梨は、それに乗っていた宇宙人に捕らえられて、口封じと、人体実験のために宇宙に連行されたんだよ。


 今、ここにいるのは、宇宙の科学の粋を集めて作られた、超精密なアンドロイドなんだよ。

 言っとくけど、アンドロイドって言っても、携帯のOSじゃないよ。


 宇宙科学の技術の粋を結集して作られたものだから、地球レベルの科学力で調べても、人間と結論付けられちゃうんだけどね。

 だから、今頃本物の悠梨は、見知らぬ星で解剖とかされちゃってさ、毎日何かの実験されているに違いないよ。その間も、そこのアンドロイドは、みんなを騙しつつ、地球の情報を日々、星に送り続けて、地球侵略の資料にしてるんだよ。


 「そんなわけあるかー!」


 あと、もう1つはね、東京に出かけていった時に、人身売買シンジケートの奴らに目をつけられて、本物の悠梨は捕らえられちゃったんだよ。

 そして、シンジケートの奴らは、騒ぎが大きくならないように、捕らえていた少女の中で、一番商品価値の低そうな娘を、悠梨として生きていく事を条件に、整形して、解放したんだよ。


 「なるほど!」


 優子はガチで喰いついてるよ。

 本当にしょーもない話が好きだな、優子は、絶対、写真週刊誌とか購読しそうだよね。


 だから、悠梨はしょっちゅう東京に行くんだよ。

 東京の繁華街の奥にある、シンジケートのアジトに行って、定期報告をして、裏切ってない事を証明してるんだよ。

 それが証拠に、よく、悠梨の周辺を黒塗りの車が見張ってる事に気がつかない?


 「そう言われてみると……」


 そうなんだよ、優子! それはね、シンジケートの連中が、悠梨の身代わりに仕立てた娘が、裏切って逃げ出さないかを監視してるんだよ。

 今頃、本物の悠梨は、外国の娼館に売り飛ばされて、仕事が終わると、逃走や自殺防止に口と手足を拘束されて、牢屋の中に入れられてるに違いないよ!

 だから、こんなに悠梨の性格が以前と違うんだよ。


 「イヤーーーー!」


 優子が、怖がるフリしながら、凄く嬉しそうに聞いているのを、私ら4人が完全にジト目で見て、更にななみんと燈梨は、完全に腫れ物に触るような目をして、優子を見ていた。


 それをお構いなしに優子が


 「それで、マイ的には、どっちの説が有力なの? 宇宙の方? それとも、シンジケート説?」


 と、喰いついてくるのを無視して、私は本題へと戻った。


 スタッドレスはね、いくら溝が全量残っていても、古くて硬化してるのなんて、意味の無いタイヤになるからね、使っちゃダメなんだよ。

 さっきも言ったように、都会の人で、スキー行く時しか使わなかった、なんて人の場合は、5年使ってたけど、1,000キロ走ってないとかいう中古スタッドレスが出てくるけどさ、アウトだから。


 大抵、そういう人の場合、住宅事情的にベランダとかに置いてたんだろうけど、それってタイヤの保管場所としては最悪だからね。

 紫外線をモロに浴びるし、昼と夜の寒暖差も大きいから、ゴムにとっては劣悪な環境なんだよ。


 「でも、なんで、溝が残ってても硬いとダメなの?」


 燈梨、初心者らしい良い質問だ。

 凍った路面は結構凸凹なんだよ。その表面には溶けた水の膜が張っていて、この水こそが、滑る原因と言われてるんだよ。

 スタッドレスタイヤは、その水を排水させつつ、覆われた氷の路面を掴む事で、走ったり止まったりできるんだけど、その凸凹により密着させるために、柔らかくなってないとダメなんだよ。


 「そうか、硬いと、路面の凹凸に対応できないからなんだね」


 そういう事だよ。

 溝があっても硬いと、タダのパターンの深いタイヤになっちゃうから、みんなも気をつけようね。

 そのタイヤの製造年と週までは、タイヤの側面に打刻されてるんだよ。4桁の数字の頭2つが、製造週で、後ろ2つが製造年の下2桁なんだって。


 ちなみに、スタッドレスの賞味期限って、どのくらいを見ておけばいい?


 「溝が無くなるまで」

 「悠梨のバカー!」


 悠梨と柚月が、お決まりの寸劇をやってるよ……って、マジなのか?

 やっぱり、悠梨は宇宙のアンドロイドなのかもしれないな。


 「私は、アンドロイドなんかじゃないぞー!」


 じゃぁ、ボカロ?

 にしちゃぁ、歌もヘタだしね……。


 さっき、5年前のはアウトだって、言っただろーが、それを聞いて尚、溝が無くなるまでなんて回答が返ってくること自体が、どうかしてるんだよ。


 「じゃぁ、5年?」


 燈梨、ここでその回答だと、ハズレだね。

 5年は、首都圏の都市部に住んでる人が、何年かに1回の雪の機会に備えて、冬の期間だけ履かせてる……とかの場合の賞味期限で、日常的に雪や凍結に見舞われてる私らの場合は、4シーズン目でも、赤に近い黄色信号なんだよね。

 大体が3~4シーズン目がこの辺で使う場合の賞味期限だね。だから、入学時に新調して、卒業時にお役御免……って、ところかな。


 これで、どんなタイヤを買えば良いかは何となく分かったでしょ。

 どのブランドが……ってのは、正直好みとか、予算とか、重視する性能の違いとかになっちゃうから、一概には言えないよね。


 「質問なんですけど、予算の問題になった時に、高性能な中古品と、輸入品で、聞いたことのないメーカーの新品とだと、どっちが良いんですか?」


 おぉ、ななみん。

 究極だけど、切実な質問だね。

 これはね、一概に回答は出来ないから、実物を比べてっていう話になっちゃうよね。


 原則は、新品が良いんだけど、輸入の不明ブランド品とかだと、性能の評価をしている情報とかが無さすぎて、判断のしようがないからね。

 比べてる高性能品のゴムが新品並みに柔らかくて、製造年が去年とかのレベルなら、そっちが買いっていう言い方も出来なくはないね。


 いくら製造年だけで見ても、夏の間、履き潰してたとか、とんでもない使い方をしてる可能性もあるから、やっぱり中古品を買う場合は、その現品の程度をよく見極めてからだよね。


 「なるほど、マイ先輩のアドバイスは、マジでためになります!」


 いやぁ、ななみんは、いつもいつも上手だな~。


 よし、まだ冬の備えについての話は続くよ~。


──────────────────────────────────────

 ■あとがき■

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『次のためになるアドバイスは何?』など、少しでも思いましたら

 【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。


 次回も、冬の準備についての話が続きます。


 お楽しみに。

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