第206話 グダグダと冬支度
あやかんと別れて部室へとやって来ると、3年生が集結していた。
やぁ諸君、ご苦労。では、これから次期役員に関する打ち合わせをしようじゃないか。
「なんか偉そうだなー」
違うよ結衣、『偉そう』なんじゃなくて偉いんだよ。
なにせ私は部長だからね。役立たずの結衣とはちょっと違うんだよ。
「マイ、いいから、くだらないテンション作らないで、やることやろうぜ!」
悠梨にしては珍しく建設的な意見じゃん。
え? 私は、さっさと終わらせて、文化祭の展示する車の作業がしたいって?
あ、そ。
それで、ステージのメインに、部車のタイプMを持ってきたいって、1、2年生から要望が上がってるから、やっていいかって?
良いんじゃね? 文化祭のことは、車は悠梨、ブースは結衣に任せてるんだから、2人で打ち合わせて、概容と決済だけ私の所に投げてくれれば良いよ。
ただ、100%OKって訳じゃないから、それだけは理解しててね。
さて、早速本題の次期役員なんだけど、今のところ、部長は燈梨に任せようと思ってるんだ。
別に押し付けてるんじゃなくて、本人の立候補もあったし、ななみんの推薦もあるから、特に問題は無いでしょ。
「でも、転校してきたばかりでしょ?」
優子の意見はもっともだと思うよ。
でも、そこは、ななみんがサポートにつくって言ってたし、そうなれば、他の2年生も同様になるんじゃないかな?
「まぁ、免許も持ってるし、そういう意味での活動の幅も他の2年生より広いから、良いんじゃね?」
結衣が人事に珍しく意見を述べたため、ここの話はスムーズに決定したよ。
意見があったのは、柚月からで、ななみんの副部長は良いとしても、ななみんは数字に弱いから、会計向きじゃないという指摘があって、そこを打ち合わせたのと、それに伴い、ななみんには抜いた分の肩書をつけようという事になり、練習場担当という肩書がついた。
まぁ、要はグラウンド整備や、練習場の整理整頓、そして、学校側と、部員数に見合った練習場所獲得の交渉なんかを担う重責な部署だよ。
他の2年生についても、私より柚月の方が詳しいだろうから、私の立てた案のチェックと見直しなんかもやって貰えると助かるかな。
え? 見返りだって? そもそも柚月は副部長だろ? なんで部長の補佐するのに見返りがいるんだよ。ちゃんと仕事しろよ!
あ、分かったよ柚月、見返りにななみんを、マゾヒスト部と兼任にしてあげるから。前から柚月、マゾヒスト部の後継者について、頭を悩ませてたじゃん。これでスッキリ解決できるよ。良かったね!
「私は、マゾヒスト部じゃない~!」
よし、これで、頭を悩ませてた後継役員人事も、スッキリ解決したから、次にいこうか。
そろそろ冬に突入するんだけど、冬と言えば、必須装備はスタッドレスタイヤだよね。
私の呼びかけにみんな頷いたよ。
ただね、部車全部にスタッドレスを買う予算はさすがに無いんだよね。
そこで必要な車を絞り込むことにするよ。柚月、優子、何ボサッとしてるの! 補佐と書記の仕事!
私の声掛けに柚月は黒板に部車の名前を羅列した。
まずは除外されるのが、競技車両の2台ね。冬の間は、ジムカーナやレースの本番で使う車での練習はしないからね。
それで、今度は、逆に必須の車を挙げるね。
まずはシルビア。
これは校外に出かける用事で使う車だからね、無いと身動きが取れなくなっちゃう。
次に教習車ね。
これは言うまでもなく、動かなくなると冬場の1、2年生の練習ができなくなっちゃうよ。
次に、グラウンド整備車の2台か。
正直、この2台に新品を奢るのは、とても勿体ない気がするけどさ、でもって、冬の期間グラウンド整備しなくていい訳じゃないしね。
「マイー、プレミオってさ、校長がタイヤ持ってるんじゃね?」
確かに、春まで校長が乗ってたんだから、まだ持ってるかもしれないね。
校長の今の車って、ホイールナットが4穴で、そのまま流用できないハズだから、後で水野に訊いて貰おう。なので、一応必要だけど保留かな。
ムーヴのも、解体屋さんとかに無いかなぁ……? 新品は勿体ない車の筆頭だよね。でもって、冬場は雪が降るからさ、グラウンドに散水する必要、無くね? むしろ、水なんか撒いたら凍っちゃって危なくないか?
「そう言われてみれば~、そうだね~」
バカぁ!
柚月がへらっとして言って、直後の私の正拳が貫いた。
「痛いなぁ、なにするんだよぉ~!」
うるさい、うるさい!
出た意見を、ただ右から左に流すんじゃなくて、自分の頭で考えて、必要なものかどうか、考えてから議題として発出するんだよ!
こんな長い物に巻かれるような、風通しの悪い会議じゃダメだよ。
まるで、どこかの政党みたいだろ! 私は、そういう一党独裁政治がしたいんじゃないんだよ。
さて、話を戻すと、今、必須は3台か、しかも1台は保留中……と。
冬の期間、他の部車でも走ってみたくないの?
「でも、冬場って、私ら引退じゃね? となると、燈梨って娘は別として、教習車以外運転できる娘がいなくね?」
悠梨の悪いところが出たな。
もう自分が関わらなくなったら、関係ありませ~ん的な冷たい態度。
そんなんじゃ、下級生から嫌われちゃうし、OB会にも呼んでもらえない寂しい人生送る事になっちゃうぞ。
それに、言っとくけど、私らは、耐久レース以降、役職と協議参加には参加しなくなるけど、練習走行とかの通常活動にはこれまで通り、参加するんだからね。
「え?」
オイオイ、悠梨に限らず、優子と結衣もその認識かよ!
もう、君たち3人は、あとで心と体を鍛えるべく、スクワット100回ね!
さて、正式部員が、マゾヒスト部との掛け持ちの柚月だけになっちゃったな。
「マゾヒスト部じゃない~!」
分かり切ったウソの弁明はいいからさ、次に冬の間も練習したい車を選んじゃおう。
「パワーのある車で、積極的にスピンの練習するのも、ためになると思うよ~」
ふむふむ、なるほど一理あるね。
柚月にしては、とても建設的な意見だよ。
確かに、私らに限らず、1、2年生にも、積極的にスピンさせて貰って、どういう走りをすると、スピンするのかとか、スピン状態からの立て直しとかの練習を、場数をこなしていく事が、運転の上達への近道な気がするね。
じゃぁ、タイプMにも、用意して貰おう。GTEは教習車と似たような感じだから、これは冬の期間はお休みでいいか、床の件もあるしね。
これで、冬タイヤの件は、ひと段落かな?
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『スタッドレスって、本当に必要なの?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
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