第202話 出展物と後継者
それで、私ら3年は、秋の耐久レースが終わったら、実質部の表舞台からは引退するからさ、ちょうどななみんと燈梨もいるから、今後の部の展望とか、役員についてとか話し合っておこうかなと、思ったんだ。
「いやぁ~、何も考えてないんですよねぇ~」
ななみん、緊張がほぐれて、体育会系言葉じゃなくなってきたな。
休日なんだから、そうじゃないといけないよね。
文化祭はさ、私らの代の企画立案で進んでるから、良いんだけどね。例えば、その文化祭の反響を見て、来年にどう活かしていくのかとか、来年は、こんな出し物をやって収益を上げ、部費の足しにしたい、とかね。
「う~ん、と言われましても、自分は、今までそういったものには、縁遠くて……」
ななみんは体育系一直線だもんな。
運営って、あんまりやった事無いのか、燈梨は、家庭環境が複雑で、学校行事に関わった事無いだろうから、難しそうだなぁ。
ななみん、誰かこういうの得意そうな娘、心当たりないの?
「え~、自分にはあんまり……」
困ったななみんだね。
いざとなったら、思考停止でフリーズしちゃうのか。燈梨は様子から見て切り回せそうだけど、悲しいかな、まだ入学して2週間程度だから、コネクションが揃ってないんだね。
よし、こうなったら、ショック療法だな。
分かったよ、ななみん。
そしたら、私が来年の企画も作ってあげる。
「本当っスか?」
うん、だけど、必ずその通りにやってね。絶対にバカ売れするから。
出展名は『ランジェリー喫茶』だよ。
内容は読んで字の如く、みんなが下着で接客するんだ。
でもって、性風俗じゃないから、お触りとか、過度な露出しちゃダメって事で、これでさ、コーラ1杯1,000円とかで出した上に、1人当たりの時間制限つけて、回転率をメチャクチャ上げてやれば、超儲かると思うよ。
柚月がいない来年だからこそ、できる企画だよ。
ホラ、アイツがいるとパンツ脱いじゃって、ランジェリーどころか、ただのノーパン喫茶になっちゃうからさ。
2人共、唖然としちゃってるね。
そりゃそうだよ、ショック療法なんだからさ。
「マイ先輩~、さすがにそれはマズいっス」
そうなの? ななみん。それじゃぁ、しょうがないね。
私にはそれくらいしか考えられないから、やっぱり、みんなで考えるべきだと思うんだよね。
それに、出場する競技についても、練り直した方が良いよ。
今年は、創部して、メンバーが揃ってから、エントリーが間に合う競技を探した結果、こうなったんだから、来年は、学生ジムカーナは必須として、学生ダートトライアルとか、そういうのにもエントリーしてさ、学校へのアピールの機会を増やすんだよ。
「アピールって?」
良い質問だね、燈梨。
例えば、今年のジムカーナは、競合校の一部が車両不調とかのラッキーもあっての3位なんだ。来年は、当然そこが復活してるから、3位が危うくなってくる。
そうなって、最下位になっちゃった時に、ダートでは10校中4位につけていれば、学校側の心象も違ってくるし、両方最下位になったとしても、努力の結果だから、練習して頑張りますって、言えるわけだよ。
でも、出られる競技あるのに出場もしないで、ジムカーナで順位落としただけだと、遊んでるって思われても仕方がないよって事。
「なるほど……」
だから、色々と考える事も多くなってくるよ。
そして、この機会に話しておくと、今度から、役員の数も増えるよ。
「ええっ!?」
ななみんさ、今年は急ごしらえで、部員ゼロからのスタートだから、私の部長だけでスタートしたけど、今の競技と文化祭だけでも、役員が何人必要か分かる?
「いいえ!」
即答だなっ。
まず競技に関しては、高校生の学生の部で参加できる競技を調べて、エントリーの実務や、その後の参加校の打ち合わせに出る競技担当に、エントリーする部車を選定して、無ければ調達してきて、レギュレーションに適合させるように作業を仕切る車両担当。
更に、その競技車両を運搬するトラックの手配をつけてくる担当もいるよ。今年は、私と柚月で交代でやったけど、それは、人数が足らなかったからだからね。
それに、エントリー費用や、トラックのレンタルするなら、会計担当者も必要だしね。
「ううっ!」
もう、目前に迫ってる事だよ、ななみん。
そして、文化祭に関しては、出し物と展示の両方を1人で仕切るのか、分けるのかを含めて難しいけど、最低、文化祭担当は、いるよね。
そこに会計担当者と、展示車両の絡みで、車両担当者も出てくるよね。
本当は、普段の活動の中でも、練習場の責任者とか、ガレージ担当者、更には練習走行の担当なんかも必要だなと思うよ。
まぁ、ガレージ担当は、車両担当の兼任でもいいけど、そうすると、車両担当は兼任が多すぎて負担になっちゃうよね。
「……」
私らも、最初は私が部長って、柚月が勝手に決めただけで始まったけど、必要に迫られて増えていって、今は、優子が会計で、悠梨は外装と文化祭の演出担当、結衣は文化祭の庶務と設営の担当だし、柚月は副部長兼、車両担当、そしてマゾヒスト部の部長だからね。
だから、みんなの適正とかを考えて、推薦してくれないと、私ら、最後に適当に決めるしかなくなっちゃうからね。
「ううっ、部長は燈梨さんにやって貰って、副部長は沙綾っちに押し付ければ、安泰で、私は楽できると思ったのに~」
ななみんの心の声が聞こえちゃったよ。
あやつ、徹底して役職から逃げる気でいたな。
しかも、転校してきたばかりの燈梨に部長を押し付けるとか、どんだけずる賢いんだよぉ! 姉さんは、そんな汚いいじめっ子にななみんを育てた覚えはないよ!
「ち、違うんですよ~」
なにが違うんだよ! 私の燈梨をイジメようなんて、そんなの神が許しても、この私が許さないからね。
よし! こうなれば柚月にサクッとLINEだぁ
「やめてくださいーー!!」
はぁはぁ、ななみんめ、走行中の車の中で暴れたら危ないじゃないか!
暴れるななみんを取り押さえ、縛り上げて、後ろの席に押し込んだのも束の間、柚月へのLINEは、燈梨が
「可哀想だから、やめてあげようよ」
と言うので、やめてあげたよ。
さぁ、ななみん。どういうつもりなのかを、聞かせて貰おうかなぁ?
返答によっては、このまま窓から崖下に転がしちゃうからね~。
「違うんですよー、燈梨さんは免許持ってるし、年長だし、部長に相応しいからであって、決して私が楽したいからじゃないんですよー」
うっ、もっともらしい。
けど、じゃぁ、なんで副部長まで沙綾っちにするんだよぉ。ちゃんと『押し付ける』って、聞こえたんだぞぉ!
「そっちは、押し付けて逃げようとしたんです。沙綾っちにやらせれば、私は、沙綾っちを使ってうまく立ち回りながら……」
やっぱり、汚い事考えてたんじゃないかー!
このっ! このっ! やっぱり許すまじ、この格好のまま柚月に引き渡してやる!
「ズッキー先輩だけは、勘弁してくださいー!」
うるさい、うるさい! グローブボックスから、ガムテを出して……と。ななみんを黙らせてやる。
「舞華、許してあげようよ~」
燈梨、良いの?
燈梨はななみんに利用されて、部内でこき使われるんだよ。
「いや、悪気があったわけじゃないし、私は部長やってみたいしさ!」
そうなの、燈梨?
燈梨、ホントにやってみたいの?
ななみんに脅されてるんじゃないの? ブラとパンツを人質に取られてるんじゃないの?
どうなんだ? ななみんめ! ホントは引っ越しの時に燈梨のパンツを……このっ! このっ!
「むううううーー!」
ななみんが涙を流しながら、私に訴えかけてきたが、私は心を鬼にしていくよっ!
「私ね、舞華に誘われたこの部で頑張りたいんだ。だから、できるならやってみたいんだよ。部長を!」
ホント?
「うんっ!」
次期部長が決まった瞬間だった。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『燈梨は部長を本当にできるの?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
次回は
遂に、ドライブも終盤、景色を楽しみながらの今後の話は続きます。
お楽しみに。
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