第191話 薄い本と5人乗り
さて、本題なんだけど、今度の土曜日にさ、国道伝いに、山を抜けて秋の爽やかなドライブに行かない? って思って、お誘いに来たんだ。
「えっ!? 私とで、いいの?」
勿論だよ、燈梨じゃダメだったら、わざわざ部屋まで来たりしないよ。
もしかして、迷惑だった?
「そんな事ないよ、喜んで行くよ。私、この辺って、免許取りに来た時に泊ったけど、別荘と教習所の往復で、何処にも行ってないしさ」
そうだよね~。それじゃぁさっそく準備してと、あとで車にワックス掛けないとな
……って、優子ったら、なに私のことをジト目で見てるの? 感じ悪いな。
「マイ、それって、2人きりで出かけるの?」
いや、別に? 優子も行きたいの?
行きたければ、来ても良いよ、一応歓迎するよ。
「なにそれ? 感じ悪いんだけど」
そう? 私、感じ悪い?
ねぇ、あやかん、感じ悪い?
「えぇ~? そんな事ないけど?」
だよね、あやかんも行く? 折角燈梨も行くって言ってるしさ、ホラ、優子も来るってなると、2台で行った方が良いだろうから、あやかんも行った方が良いかなって。
「そうだね~」
「私は、1台で良いと思うんだけど」
えぇ~!? 優子さ、4人で1台って、どうよ?
3人で1台でもね、優子が話の輪から外れると可哀想だから言ってるのにさ。
「なんで、私が話の輪から外れるの確定で話が進んでるのよ!」
えー、だってさ、いつも優子って、修学旅行のバスの中とかで、変な話して、みんなをドン引きさせてたじゃん!
小学生の頃は、ゲームか、お洒落の話してるのに、1人だけミヤマクワガタの話しなんかするから、誰も優子の話、聞いてないしさ、高校の修学旅行の時だって、優子は部屋割りの中で1人だけ、カワサキのバイクの魅力について語ってて、柚月と悠梨にマジでキレられたらしいじゃん。
「そうなんだ」
そうなんだよ、あやかん。気をつけないと、優子は、みんなが聞いてるものだと思って、どんどん話し込んでいくからね、注意しないと、ふと気付いた時には不機嫌な顔した優子に
『なんで感想聞いてるのに、答えてくれないのよ!』
とか言われて、お説教とかされちゃうからね。
「その話は、いいから!」
あそ、まぁ、とにかく気をつけてね優子、あやかんをドン引きさせないでね。
「燈梨ちゃん、マイに気をつけた方が良いよ~。どうせマイはね、私たちの車を撒いて、2人きりになってから『疲れちゃった~』とか言って、燈梨ちゃんをホテルに連れ込む気だよ」
……あのね、優子。
私は、優子の家のおじさんやおばさんみたいに、薄い本を読んじゃダメっては、言わないよ。優子がそういう話が好きなの知ってるし、読ませてもらって、凄いなって本もあったからさ。
だけど、いくら私でも、そんなことするわけないじゃん、優子の妄想を現実とごっちゃにしないでよ。私は優子の読んでる薄い本みたいな趣味は無いの!
「大丈夫だよ、舞華が、そういう趣味じゃないことくらい、私だって知ってるよ」
燈梨、嬉しいなぁ、私のことを信じてくれて、私は幼馴染の優子が、私のことをそんな風に思っていたなんて、ショックで、しばらく立ち直れなさそうだったけど、燈梨がそう言ってくれると、とっても嬉しいよぉ。
じゃぁ、早速プランを考えよう。
紅葉には少し早いけど、山の景色は、紅葉になってなくても、凄く綺麗だからさ、眺めの良いポイントで休憩にしながら、ゆっくり行こうよ。そして、1つ目の休憩ポイントでお昼っていう感じで良いよね?
「うん」
燈梨と綾香が返答すると、優子も頷いた。
じゃぁ、出発は10時で、ここ集合で良い?
「うん!」
また2人が返答し、優子が頷いた。
よし、すっごく楽しみだなぁ……早く来ないかなぁ、土曜日。
「そう言えばマイ、ユズ知らない?」
柚月、恐らく解体屋さんだと思うけど、どうしたの?
え? 今日、あやかんと会って、一緒に燈梨の家に行くってLINEしたら、すごく喜んで、ここに来るって言ってたのになぁ……だって?
あ、ケータイが鳴ってる。柚月からだけど、サクッと無視しよう。どうせ、解体屋さんからに違いないからね。
え? なに優子? どうやって、柚月をここから遠ざけたのかって? あぁ、解体屋さんに同じ色のGTS-4が入ったって言ってね。
「でも、色は違うけどGTS-4のクーペが入ってきてたから、まるっきりガセネタって訳じゃないと思うよ」
そうなの優子? 昨日の夕方、解体屋さんに寄ってから帰ったんだけど、左後ろが潰れたシルバーのGTS-4がちょうど入ってきたところだったって?
よし、これで柚月の奴に、後で何か言われる筋合いは、なくなったって訳だ。
ちょっと土曜日の天気をさっと調べてみたけど、良かったよ。晴れて暖かいんだって、ちょうど良いドライブ日和だね。
「私、お弁当作るね!」
え? 燈梨、そんなの悪いよ、どこかで買って食べれば……って、え? 折角誘ってもらったのに、このくらいさせて欲しいって?
なに、あやかん? 燈梨のお弁当は美味しいんだから、断るなんて勿体ないって? そうか、じゃぁ、お願いしちゃおうかな~、へへへへ……。
「じゃぁ、今から買い物に行かない?」
ああ、早速食材の買い出しだね。
そうだ、燈梨、最近、物凄く安い食品スーパーが出来たんだよ。だから、そこから行ってみようよ。
みんなで部屋を出たところ、ドアの外に人影があった。
あ、七海ちゃんじゃん! どうしたの?
あぁ、祝日で暇だったから、燈梨のところにフラっと、来たんだね。
ちょうどいい所に来たね、土曜日に、このメンバーでドライブに行くことにしたんだ。七海ちゃんも来る? その時のお弁当の材料の買い出しなんだよ。
ねぇ、買い物さ、燈梨の車じゃなくて、優子のにしようよ。
七海ちゃんが来たから、優子のなら5人乗れるでしょ。
え? どしたの七海ちゃん、なんで、燈梨の車はダメで、優子の車なら良いのかって?
シルビアは4人乗りで、スカイラインは5人乗りなんだよ。スペース的には大して変わらないけど、人数分のシートベルトと、法律上の定員が違うからね。見た目的には似ていても、シルビアとスカイラインの性格の違いが表れてるよね。
「マイ先輩の言う事は、いつも勉強になりますっ!」
そんな~、七海ちゃんたら、そんなバレバレのお世辞言ったって、何も出ないからね……え? お世辞じゃないって? 嬉しいねぇ。
よし、じゃぁ、ちゃちゃっと行っちゃおう~。
まずは新しくできた食品スーパーに行って、次に悠梨の家の近くの、ウルトラバリューかな?
え? 七海ちゃん、マジ? 業務用スーパーが出来たの? へぇ~、ちょっと行ってみたいかも? ねぇ、良いよね?
優子が車を止めた隣の空き地を目指して、みんなで階段を降りたところへ、1台の車が乱暴に滑り込んできた。
まったく、危ないなぁ、私の虫の居所が悪かったら、蹴っちゃったかも……だよ。燈梨に感謝するんだな。
と思って、邪魔なその車を見ると、どこかで見た事のあるような変な色なんだよね。
一体、どこで見た事があるのかを思い出していると、ドアがガチャッと開いて、人影が私たちの前に立ち塞がったんだよ。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『スカイラインと、シルビアの性格の違いって何?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
次回は
買い物に出ようとしたメンバーの前に現れた1台の車。
そこから降りて来たのは……。
お楽しみに。
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