第169話 メイドフェアとブレーキパッド
お昼は、ちょっと足を延ばして、新しくできた和食レストランに行ってきちゃったんだよ。
ここってさ、隣の県が発祥で、あっちの県だと店舗数が多いんだけど、山を越えてこっちに来ると、ほとんど無いんだよね。
え? なに悠梨? 麓の市街地に行くと結構あるって?
なんで、こっちはスルーしてるのよ? マジ感じ悪くね?
なに? すでに忘れ去られた過去の観光地なんかよりも、市街地に行くのは当たり前の行動だって?
大体、イアンモールの出店だって、県内で今のところ一番遅かったじゃないか、だって?
悠梨ー! あんたって娘は、地元の誇りを忘れて、都会人の合理主義にかぶれやがって、私は、そんな都会人に魂を売り渡した、あんたが悲しいよ。
えいっ! えいっ! 真人間になれっ!
ええ~い! 止めるな、柚月、結衣!
◇◆◇◆◇
ここの制服って、マジで可愛いよね。
今は、メイドフェアらしくて、再来週までホールの女の子たちは、みんなメイド服なんだけどさ、そのメイド服も、安いメイドカフェもどきみたいな、コスプレ衣装丸出しのじゃなくて、デザインや縫製までオリジナルの、凄い手の込んだやつなんだよ。マジ凄くない?
ここの通常の制服もさ、大正浪漫的な、和服アレンジの可愛い感じのなんだけどさ、それとイメージ合わせて、ちょっと
良いなぁ、私も、ここでバイトしたかったなぁ、今のところでバイトはじめて2ヶ月目で、ここがオープンしたからさ、タイミング悪かったんだよね。
しかも、ここさ、募集して瞬殺だったらしいから、もう、今更って感じだよねぇ……、大学生になったら、ここに鞍替えしようかなぁ……って、思ってたのになぁ。
どしたの柚月? え? 秋にイアンモールにも、オープンする予定なんだって? マジ? いいなぁ、今のうちに、そっちでバイト始めよっかなぁ……こういう可愛い制服着てバイトしたら、きっと辛いことも楽しくこなせると思うんだよねぇ、その上で、お給料も貰えて最高じゃん?
そしたら、燈梨も誘って、同じシフトに合わせてバイトするんだ。いつもバイトしながら、頭のてっぺんから、足の先まで燈梨の制服姿を観察できちゃうなんて、マジでサイコーだね! これこそ、一石三鳥だね。
痛っ! なにすんだよ、柚月!
「どうせ、燈梨ちゃんの制服姿とか想像して『燈梨ちゃんがバイトしてたら、その時間に押しかけて、頭のてっぺんから、足の先まで舐めるように見回して、挙句、わざとスプーン落として拾わせようとか、思ってるに違いないよ! マイのえっち~!」
この野郎! 柚月、ちょっとトイレに来い!! 今日という今日こそ、パンツ脱がせて、トイレに流してやるからな!
なんで止めるんだよ、悠梨と優子は、コイツなんてね、徹底的にお仕置きしておかないと、調子に乗るんだからね。
そう言えばさっき、柚月のバカが私に絡んでた時、そこにいた綺麗なお姉さんが
「あかり?」
とか言って、一瞬、こっちを見たような気がしたんだけど、気のせいかな?
あ、窓の外を何気なく見てたら、あのお姉さんたち帰るところだ。
なんか、黄色いセダンに乗ってるよ、派手だね~。なになに? アレはランエボだって?
ふ~ん、あの人たち、この辺の人じゃないよね、でも、お店の中にいる娘達が、凄くあのお姉さんに注目してたんだよね、なんでだろ?
「マイ、これ! これ!」
え? これってさっきのメイドフェアの、チラシじゃん……って、このチラシに写ってるモデルの人って、さっきのお姉さんじゃん!
え、マジ~? さっき声かけとけば良かったよぉ~。
◇◆◇◆◇
隣の県の、地元食材が売りだからさ、美味しいんだよね、ここ。
アレルギーの人もいるから、あんまり無条件でお勧めできないけど、蕎麦ミックスサラダなんて、さすがこのチェーンって、感じで好きなんだけどね。
お勧めメニューに入ってないから、外したんだけどさ『地元鶏のトロットロオムライス』って、どうなんだろうね?
誰も食べた事ないのか、じゃぁ、今度来た時に頼んでみようかな、とは言え、滅多に来ないけど、今度来るのは、燈梨とお揃いの制服で……かな? へへへ。
ところで、午後は特に作業もなくなっちゃったから、どこかブラブラと行こうかぁ。
まずは、ファストファッションのお店をみんなで覗いてみたんだけど、ちょうど入れ替わり時期のせいか、微妙な感じのものしかなかった。
私、思うんだけどさ、山向こうの教習所に併設されてるファストファッションのお店に行くようになっちゃったから、私らの目が肥えちゃったんじゃね?
なんか、最近、このお店の品揃えが物足りなくなってきちゃったよ。
「私も、それは思うんだ~、なんか、最近ねぇ……」
優子が言った。
やっぱり優子もそう思うよね。私と悠梨と優子は、ここに、しょっちゅう入り浸ってたからね。
車に乗って、行動範囲が広がったから、このお店の品揃えに満足できなくなっちゃったんじゃないかな。
ある意味困った一面なのかな……。
ここが、オープンした時、とっても嬉しかったし、ほぼ毎週行ってたんだけどね……。
仕方ないから、カー用品店に行ってみたんだ。
目的は無いんだけどね、なんかしら面白いものとかがあれば買っちゃうんだよね。
ほとんど買うものなんて思いつかなくて、意味もなくブラブラとカー用品とか、オーディオのコーナーとかをブラブラして、ナビの体験機をいじってみたりしていたが、ふと柚月と顔を見合わせて、結衣を捕まえてチューニングパーツコーナーへと行った。
「なにするんだよー! 放せよー!」
騒ぐ結衣に、私と柚月は向かい合って挟み込み
「結衣~! さっきマイが言ったハズだよ~。ブレーキパッドは、ノーマルじゃダメだって~!」
「分かってるよ」
「だったら~、なんでここに来てるのに、何の話もしないんだよ~!
柚月は怒ってるね、今日の結衣のいい加減な態度に、柚月はちょっと怒ってたからね。
「何も言わないってことは~、どれにするかくらい、決めてるってことだよね~」
「ううっ……」
「なんで、結衣はさ~、今回の事に関して、主体性が無いんだよ~!」
あぁ、柚月ったら、結構怒ってるね、結衣をガンガン追い込んでいっちゃってるよ。
どうしたもんかな~って、優子だ。
「ユズ、そんなに強く言ったら、結衣が何も言えなくなっちゃうでしょ!」
「分かったよ~」
ここで優子が助けに出てくるとは思わなかったけど、ここから話は、どんなブレーキパッドが良いのかについての話になった。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
多数の評価、ブックマーク頂き、大変感謝です。
モチベーションのアップにつながり、創作の励みになります。
よろしくお願いします。
次回は
優子によるブレーキ講座が始まります。
お楽しみに。
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