冬眠を終えて学校に行くようになったら、みんなに注目されるようになりました。〜どうやら日に当たらない生活をしていたことで、俺は美肌のイケメンになっているらしい〜
第11話 逃げ出したくなるほどのイケメン。
第11話 逃げ出したくなるほどのイケメン。
……まずいことになってしまった。
「え〜、今日って一時間目から体育じゃん」
「やばたんっ。ちょぉ〜、萎えるんですけど〜」
前方、およそ20メートルほど。
そこを歩いているのは、二人組の女子高生だ。
スカートを膝の上まであげているため、足が結構見えている。歩くたびにスカートが揺れて、それはまるで天に誘う振り子のようだった。
「…………」
爽やかな朝の通学路の途中。
俺はそんな女子高生二人の後ろについていくように、そわそわしながら歩いていた。
「じょ、女子高生だ……」
で、でも……、違うんです!
家を出た後、普通に歩いていたら、同じ方向に歩く女子高生が別の道から現れたのだ。
……恐らくあれは同じ学校の生徒だろう。
今の時間は8時過ぎ。普通に歩けば、始業時間の8時30分に教室に辿り着ける時間だ。
うちから学校までの距離は遠くはないから、俺は一人で静かに歩いていた。
……そしたら、こうなってしまった。
前を歩く女子たち。その後ろにいる俺。
……別に変なことはしていない。
でも、どうしてこんな悪いことをしているみたいな気分になるのだろう……。
俺が後ろを歩くことで、「……うわっ、キモいの来てる」とか思われたりしないだろうか。
それでなくても、俺は学校に行ってなかったんだ。自然と挙動不審になってしまう。やや俯き気味で、足音を立てずに、誰の邪魔にならないように歩いている。
その姿はまるで暗殺者のようだった。
その時だった。
バチリッ。
「「ぃッ!?」」
……まずい。
足元に転がっていた木の枝を踏んでしまった。
露骨に驚いた前を歩く二人。
そして、同時にこっちを振り向いて、「……後ろいたんだ」というと、若干眉を潜めて、そのまま歩き続けていた。
俺は申し訳なくなり、顔を上げられなくなってしまった。
……まずい。顔が熱い。というか、前を歩く二人が、こっちをチラチラと見始めている。
明らかに、警戒する視線だ。
そして、互いにボソボソと小声で何かを言っているようで、なおもこっちをチラチラと見ていた。
これは……やっぱり不審がられているのだろうか。
自分でも、自分のことが不審者に思えてきた。
こうなったら、早歩きになって、前の二人を追い抜いた方が彼女たちのためになるだろうか。
でも、それで横並びになったら、もっと大変なことになってしまう。
ここは、歩くスピードを遅めて、彼女たちから距離を……いや、無理だ。なぜなら、後ろをチラッと見たら、同じように登校中の生徒が俺の後ろを歩いているのに気づいたからだ。ちなみに三人組の女子生徒だった。
前に二人。後ろに三人。
俺が後ろを振り向いた時に、そのうちの一人と目が合うと、後ろにいたその子はギョッとした様に、目を見開いていた。
「!」
「!」
慌てて俺は前を向く。
すると……聞こえてくるのだ。後ろでヒソヒソと囁く声が。
その後、後ろにいる三人組の女子生徒たちが途端に早歩きになって、俺との距離を詰めて来るのが分かった。
……まずい。
『ねえ、前を歩いてる人、さっき目があったけど、めっちゃカッコよくなかった!?」
『だよね!? チラッとだけ見えたけど、やばかった!』
『後ろから見た雰囲気からして、イケメン感あるなとは思ってたけど、すごかった! あ〜、もう一回見たい! 横顔だけでも見えないかな!?』
パタパタパタと迫ってくる足音。
……俺は焦った。
後ろから早歩きになった女子。前でチラチラと俺の方を見ている女子。
挟まれている。額に汗が滲んでくる。俺はハンカチでそれをさっと拭った。
……その時だった。
「「きゃ〜〜!」」
「!」
ギョッとした顔でこっちを見ていたらしい前を歩く女子生徒二人組が、そう叫びながら、全力疾走で走り去ってしまった。
「!」
直後、後ろから三人分の足音が俺を追い抜き、その抜き際にこっちをチラッと見ると、ギョッとした様に目を見開いて、
「「「きゃ〜〜〜ッ!」」」
一瞬立ち止まった後、顔を真っ赤にしながら、叫んで走り去ってしまった……。
「…………」
一人取り残される俺。
……何がいけなかったのだろうか。
ハンカチで顔の汗を拭いただけで、このありさまだ。
「…………」
もう……帰りたい。
その後の通学路、同じように俺とすれ違った女子生徒たちが、こっちをギョッとした顔で見たりしてきた。みんな、頬を赤く染めて逃げ惑うように走り去っており、まるでゴキブリが出たような大騒ぎになるのだった。
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