第39話 悪魔の復活


 イヴと天狐を介抱する俺達、数分経った後に天狐は目を覚ました。


「うっーー、ここは一体………」



「………気づきましたか?」


「クリスはん?、…………ッッーー、金狐は!!?!」


「そ、それは………」


「連れてかれちまった………」


 言いづらそうにしているクリスの声を代弁する俺。



「そ、そんな………」



俺の言葉を聞くや否や、ふらつく天狐。



「だ、大丈夫ですか!!!?」


「……おおきにな」


天狐を慌てて支えるクリス。


「………なぁ、あいつら、前に襲ってきた連中だよな?」


「………せやな」


「………あいつらが言ってたんだが、金狐は強欲の罪の封印の要って、本当なのか?」


「………そや」


「で、でも、一人だけじゃ無理だって、そんなに焦る必要はないでしょう?………」


「………………」


「………この街の惨状を見る限りそっちにも手が伸びてるだろうな」


「…………ハルはんの言う通りや、急いで連絡したが返答がなかった……」


「そ、そんな………」


「………ねぇ……その封印場所はどこなの?」


「ッッーー、イヴ、目を覚ましたのか!!!?」


「………うん………ついさっきね………」


イヴは頭を振りながらも静かに返答する。


「………聞いてどうする気や?」


「………金狐を助ける………」


「さっきボコられてたやないか、それでも行くんか?」


「…………勝てる勝てないじゃない………ここで友達を見捨てたら………イヴエクスマキナは死ぬ………生命活動を続けてるだけの………屍だ………どっちにしても死ぬなら………少しでも金狐を助けられるかもしれない可能性がある…………死に方を選ぶ………」


「………イヴはん……」


イヴは鉄のように冷たい口調で淡々と語り、鋼の意志を固める、大した決意だ………見ようによってはただの神風特攻を決める馬鹿にしか見えないが、そう指摘するのは彼女に対して酷い侮辱に思えた………が一つだけ気に食わないことがある。


「ふざけんな!!!」


「………え?………」


「俺がお前の背中を守るんだから絶対お前は死なない!!約束しただろうが!!お前が死んだら誰が俺の背中を守るんだよ!!」


「………ご、ごめん………なさい」


「………二度と言うなよ」


彼女の捨て身同然の思考がいたく気に入らない、絶対彼女を殺させてたまるか。


「ふふふ、ハルはイヴちゃんが大好きですからね、死なれたら困りますよね〜」


「は、ハァッーー?!わ、わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!!!」


「………へへへ、私もハルが好きだよ………」


「へ?!!?いや、だ、だから俺はーー」


「………作るご飯が美味しい………!!」


「「…………さいですか………」」


異口同音で相槌を打つ俺とクリス。


「ふふふ、なんや楽しい奴らやっちゃな〜………まぁワイに元々選択肢なんかあらへん、今の里に戦えるものはそういない、戦力を揃えるなんて悠長なことをしてたら奴らが封印を解いてしまうかもしれへんしな、追ってくれるなら願ったり叶ったりや」


「へへへ、そうこなくっちゃな」


天狐は地図を使って解説する、大体の位置は掴めた。


「じゃあ行きますか!!」


「まぁ、ワイは残るんやけどな」



「ええ?!!一緒に行ってくれないんですか?」


「助けに行きたいのは山々やが、今の里を放置することはできん、第二陣がいるかもしれへん………ワイがいても何にもできんかもしれん、やけど、居なかったらそれこそ何も守れへん!!、娘は心配やが、私情で里を見捨てることはできん!!」


「………いいんじゃねぇか?、だって金狐は俺達が連れ帰るんだから、天狐さんが残って里の体勢を整える方がよっぽど効率的だ」


「…………そうだね……………」


勝算なんかない、虚勢を張る俺、だがこの嘘だけは本物にして見せる、絶対に。


「すまんな、娘を……頼むで」


「「「任された!!」」」


三人は異口同音で決意を固める。



地図通り進む事、数十分、目の前に遺跡が見えてくる、あれが例の封印場所だろう。


早速中に入る、中は入り組んでいて罠もそこら中にある。


慎重かつできるだけ急ぎつつ進む俺達………


何やら祭壇………らしきものが見えてきた。


「………雰囲気出てきたね………」


「………だな」


「ですね」


俺達は会話しながらも注意深く進んでいく………すると大きな扉の前に二つの人影が見えた。


二人とも見たことある顔で、一人さっき戦った尋常じゃないスピードを持つ男、もう一人はッッーーーその瞬間俺の頭は一瞬フリーズした、頭が混乱しながらも口だけは感情的に大声を上げる。


「な、なんであんたがそいつと仲良く喋ってやがる!!ーーー風狸!!!」


「………うん、ああ、貴様は昨日の蜥蜴か、こんな所になんのようだ?」


「質問に質問で返すなクソ野郎!!!!」


「誰なんです?」


「…………誰?」


「銀狸の……父親だ」



俺は歯軋りしながら、殴りかかりそうになるのを必死に耐える。


「おい!!、金狐はどこだ!!」



俺を無視して会話する二人。



「ひーふーみー、おいおい、なぜこんなにも邪魔者が来る、流石に手を抜きすぎてはないか?、あそこまでの大金を払わせておいて………」


「………ふん、意外と臆病だな、今からあの悪魔を飼い慣らすつもりなのだから、何人こようが死体が増えるだけだ、そこまで困ることがあるのか?、それとも……まだアレに情が残っていたか?」


「ふん、くだらんことを、わしにそんなものあるわけがない、見てろ……」


「や、やめっーー」


風狸は屈んで足下の魔法陣に魔力を流し込んでいく、直感的に嫌な予感を察知した俺はやめさせようとするも、間に合わない、風狸の魔力に反応して祭壇が光り輝いていく、一際輝くのは扉の前にあるアイアンメイデンを象った彫像。


「クソッッーー」


目を開けてられない、少ししたらどんどん光量が下がっていき、なんとか目を開けられるようになる。


「……………まぶしい………っっーー」


「油断するな………ょーー」


「えーー、ぅそーー、」


俺たちは三者三様に声にならない悲鳴をあげる、置き物だと思っていたアイアンメイデンが開き、中から金狐と銀狸が出てきた………身体中から血を吹き出しながら力無く横たわる……風狸と男はもう用済みとばかりに眼中に無い様子、大きな扉の前に近づいていく、俺たちはその隙に二人を抱き上げ祭壇から下へ移動させる。


「クリス!!回復を頼む!!」


「で、ですが、これはもう…………」


「無茶を承知で頼む!!全身全霊全魔力で癒してくれ!!」


俺は元の場所へ戻る、そうあのクソッタレな野郎どもがいる場所。


「テメェら、ゆるさなぃーーー」


「………嘘………」


俺達は再度言葉を失う、二人に臆した?違う、大きな扉の中からイヴと全く同じ顔をした奴が居たからだ。


「これが………あの」


「おお!、こいつが七大罪が一人マモンオガリドか!!!」


「■■■■■■■■■■■■■?」


訳のわからぬ奇声で復活の産声を上げる悪魔。

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