第31話 ハルvsイヴ1
「全く、何をしたらこんなことになるんですか!!」
「………………ごめん…………ハル………」
「き、キニスルナヨ」
全身をバッキバキにされた俺、イヴの謝罪に対して棒読みの片言で返事をする、怪我はクリスに治療してもらっている。
いやぁ〜神様仏様聖女クリス様だな〜。
「全く、あまりはしゃがないでください………よし、これで終わり、どこか痛む所はありますか?」
「………五体満足バッチリだ!」
「よかったです」
「………………ごめん………なさい」
「ま、あんまり気にするなって、今度から気をつければ良いんだし、クリスもいるからすぐ治してくれるしな」
「……………最初から私の治療をアテにされても困るんですが………」
話もそこそこに朝食が運ばれてきたので頂く、昨日教えた甲斐があり、二人とも箸に手こずる様子はなく、黙々と食べて行く。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした〜」
「………………ご馳走様………でした」
腹が膨れたら体を動かしたくなってきた………。
「そうだ、なぁ、イヴ、模擬戦しないか?」
「………模擬戦…………?」
「ああ、飯食ったら体動かしたくなってさ〜、それに新しく覚えたスキルも試したいし、どうだ?」
「………いいよ………負けない………」
「………とは言いますが、やるなら何処か広い場所が必要ですね、天狐さんに聞いてみてはいかが?」
「確かに………じゃあ天狐さんを探しに行こうぜ!」
屋敷内を彷徨く………まるでだだっ広いダンジョン探索してる気分だったが、十数分歩いていると天狐さんを発見、早速事情を話してみる。
「なるほど………それなら道場がええやろ………赤狐、案内してやりはなれ」
「………御意」
「ひゃううん!!、い、いつからそこに…….」
天狐さんが呟くや否や俺の後ろから音も無く現れ、静かな声で返事をする………俺はいきなり意識の死角から出てきたので情けない悲鳴をあげてしまう。
「………天狐様にハル様が話しかけた時から………」
まるで最初からその場にいたような口振り、いきなり視界に現れた赤狐、少なくとも俺の視界には影も形も無く、瞬きした刹那のうちに出てきたようにしか見えなかったのだが。
「………………聞いた………クリス………ひゃううん!………だって………プッーー」
「ちょっ、あんまり笑っちゃいけませんよイヴさん、ブッフーー」
………………なんだか後ろからクスクス笑い声が聞こえる、滅茶苦茶恥ずかしい………
「お、お前らぁぁぁ!俺だって怒る時があるんだぞ!」
「………………あのさ何か勘違いしてるみたいだけど………これは模擬戦の一環なんだよ………………」
「………うん?どういう事だ?………」
「………戦いっていうのは………………戦う前から始まってる………例えば東方の最強を決める決闘で………片方の剣士が何時間も遅刻して………相手を苛つかせ………迂闊な一手を誘い………勝利した………なんて話もあるし………これは高度な心理戦なんだよ………こういう細かい所もこだわってやったほうが………より実践的で………意味のある訓練になるんじゃないかなと………思って………やっているんだよ」
「………………なるほど!!流石イヴ!!じゃあ訓練だから仕方なく俺を馬鹿にしてて普段は尊敬しまくってるって事だな!」
「………うん………わかってくれたなら………いいよ………」
彼女は体を震わせ俺から顔を背ける。
「………チョロすぎですよハルさん………」
クリスは呟くも、ハルの耳には届かなかった。
「こちらです………」
雑談もそこそこに赤狐さんの案内に従い歩いてると道場に着いた。
「じゃあやりますか!」
「………………おう………」
俺とイヴは道場へ入り、準備を整え………ようとしたが、色濃く感じる視線………視線の主は赤狐さんだ。
「………………」
「あのぉ〜赤狐さん、もう仕事に戻られても大丈夫ですよぉ〜」
無言でその場に立ち続けている赤狐さん、彼女に見られ続けて堪らず声をかける。
「………お客様をおもてなしするのが私の仕事です」
彫像のような営業スマイルで笑う赤狐さん………………どうやらこのまま居座る気のようだ。
イヴの方は気にすることもなく、道場に備え付けられた木刀を手に握り、俺も同じように握り、構える。
「………ま、まぁいいか……」
ドラゴンテイマーのスキルで契約中のイヴ、普段から軽く小突く(?)なら大丈夫だが、流石に戦うのは無理、だから制約を緩くして俺に攻撃できるようにする。
(うん?………ヘぇ〜イヴのステータスもいじれるのか………俺のステータスと比べると強すぎるから俺よりちょっと上くらいにしとくか………)
「おーーーい、俺とステータスが違いすぎるからお前のステータス弄らせてもらったからなーー」
「………別にいいよ………」
「……よし、なら、準備完了!どっからでもかかってこい!!!!」
『
詠唱をすると背中から砲身を出し魔力を放出、目にも止まらない速さで俺に突っ込んでくる始まるや否や、速攻で距離を詰め、とっとと勝負を決めてしまおうと……そういうつもりだろう。
だが、そうは問屋は卸させねぇ。
『
「へ、イヴ、高速移動がお前の専売特許だと………思ってんなよ!!、『我操る、子竜の火種筒、…………今!!、
イヴが移動してる最中に詠唱を終え待機状態で相手の攻撃を誘う、予想通りイヴは『
………上にすっ飛びすぎだな、スキルLvが低いから上手く調整ができない。
『……………
「どわぁっと『我操る、無気力な墜落翼!!
飛んだ後、一瞬停滞し重力に負ける瞬間にイヴは間髪入れず追撃、落ちてくる場所を狙い撃ちしてくる、しかし俺は口早に詠唱を済ませ翼を広げる、すると翼から不可解な力が漲り、風を受け止め落下速度が目に見えて鈍化する。
当然彼女の弾は俺にかすりもしない。
『………チッーー、なら、
『
『させるか!!我操る、子竜の火種筒!!
面倒そうに舌打ちをした後、数撃ちゃ当たるの理屈で攻めようと全身から武器を生やすイヴ。
何をするかわかった俺は『
…………不本意ながらクレアとの戦いで学んだイヴのスキルに有効な戦法、離れて戦うとジリ貧になってしまうだけなので隙を見て攻め込む、つまり詠唱を邪魔して接近戦に持ち込む。
『我の拳に火種の殴打、
「ッッッッッ!!」
俺はイヴを遠慮なくぶん殴る、彼女は展開していた武器でガードする、ステータスの違いか、はたまた重量の違いか、大樹の如き重さを見せ、全く後退せずその場にとどまる。
「今度はこっちの………」
『我焼き貫く、子竜の火種弾、
「ッッッーー!!」
イヴが反撃する前に俺は口から火ノ粉の玉を顔面にぶっ放す、煙に包まれたイヴから一旦距離をとり、笑いかける。
「どうだ、イヴ、少しは効いたか?」
『………
イヴは間一髪防御スキルを発動、直撃は避けている、しかしダメージは確実に蓄積されているはず。
その証拠に彼女の体に所々、焼き傷が見られる。
「…………思ったよりやるね………」
「へ、お楽しみはこれからだ!!」
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