第30話 風呂と万力


夕飯も食べ終え、部屋に備え付けてある風呂に入る俺。




「あ〜〜、いい湯だなぁ〜っと」





やっぱり風呂はいいものだ、ゆっくり、だが確実に俺の体を端から温めてくれる。




石鹸で洗った体からさらに細かい垢が落ちていく、命の洗濯とはよく言ったものだ。




「…………お邪魔します………」





「…………うん?」



ドアを開けて入ってきたのは体にタオルを巻いただけのイヴ。



状況が掴めず、アホ面を晒す俺。




「……………な、な、な、な、何やってんだ!!は、早く出てけよ!!」




やっと羞恥心が湧き上がり、退室を促す俺……しかしイヴは知った事かと言わんばかりにずんずん進撃してくる、やばいやばいやばい奇行種か?、人類にはまだ汚れなき少女の豊満な胸は早すぎるーーー。





「…………箸の持ち方………教えてくれた………から………お礼に背中………洗ってあげる………」






「ああっ〜〜〜、俺の初めては今日奪われるのーーって今なんて言った?背中?」




「…………うん」





赤面しながら言うイヴ、………なんだか汚い妄想をしてしまった自分が恥ずかしくなってしまった………。



「………お、おう、じゃあよろしく………」




「………任された………」



誤魔化すように湯船から出て、風呂椅子に座り、イヴに背を向ける。



………まぁ背中洗いくらいなら別にそこまで意識しなくていいだろ、精神的にはまだ子供もいいところなんだし。





彼女はまず風呂桶にお湯を張り、タオルに石鹸をつけて少し泡立てる、そのあと桶の水でさらに泡立て、準備完了。




「………よいしょっと………」




「おぉ〜」



「…………どう………?」




「なんか、他人にやってもらうといつも以上に気持ちいい気がするな」




「…………それならよかった…………痒いところはございませんか…………?…………なんちゃって……」





「ああ〜、背中の真ん中辺りを頼みますわ〜」





「…………ここら辺………?」





「あっ、もうちょい上……….行き過ぎ………そこ!そこそこ」






「…………ここか…………」






場所を指定するもどこかわからず右往左往するイヴ、適当にタオルを動かしていると偶然指定場所に重なる。




場所を理解した彼女はそこを重点的に洗い始める。





「おおおぉ〜そこそこ〜あ〜〜〜気持ちいい〜〜〜」





そんなこんなで冗談まじりに談笑、時間を忘れて話し込むこと数十分。




背中を洗い終えたので泡をお湯で落とす、そして湯船に浸かる。




「………おい、何しようとしてる?」




「……………一緒に入ろう………としてる………?」




「お、おまえ、それはダメだ」




「…………なんで………?」




「へっーー?、いや、それは、その〜…………そうだ!!!、体を洗ってないだろおまえ!」





「……………うん…………」





「そのまま入ると湯船を汚すからな、体を洗ってから入れ」




「………………わかった」





渋々顔でイヴが体を洗い始めると俺は肩まで浸かり素早く心の中で数を数える。






(………30)




「よし!!、イヴ俺はもうあったまったから出るな!!」




「……………一緒には入らないの………?」






「い、いやその浸かりすぎるとのぼせるからな!!そろそろ出ないと!!」




「…………わかった………湯冷めしない………よう………気をつけて……ね」




「あ、ああ〜、おまえもほどほどにしとくんだぞ〜」




不満げなイヴを浴室に残し退散する俺。













ーーーーーーーーーーーーーー



「ふぁ〜、………よく寝た」




風呂出た後はすぐに就寝、カーテンからこぼれた朝日が顔を照らし、そのまま俺は目覚めた。




「…………あれ?」




立ち上がろうとすると体が言うことを聞かない、寝ぼけているのかと視線を下げると、どうやら言うことを聞かないわけじゃなく、無理やり拘束されてると言った方が正しいようだ。





イヴがいつの間にか俺の布団に入っていて抱き枕がわりにされていた。




微かな寝息を立てて、めっちゃ可愛い………。






「ってーー、見惚れてる場合じゃねぇ、おいイヴ離れてくれ」




彼女に語りかけるが………それは最低最悪手だった。




「………………………眠い………」


「おーーい、寝ないでくれ〜ッッッーーイッテェェ!!」


「…………うるさい………」



彼女は無視して寝ようとする、勘弁してくれと俺は再度声をかけるがイヴは万力の如く俺の体に圧をかけ黙らせる。


「………スカピー…………」


そのまま寝た彼女だが、俺に抱きつく力はどんどん強まる、ゆっくりだが確実に締まっていく。


「あ、ちょ、ヤバイヤバイヤバイ、そろそろやばい、体が変な音してるから、早く離して!!死んじゃう!!僕死んじゃう!!!」


「…………zzzzzzz………セブンボールzzzzzzzzz…」


「セブンボールzzzzzzzじゃねぇんだよ!!!、起きてんだろおまえ!!!、そこはやばい、あっーー!!!!」



「…………頭空っぽの方が〜zzzzzzz…………夢詰め込める〜zzzzzz…………」



小鳥が囀る爽やかな朝を何か硬い物が破壊されるような低音が鳴り響き、台無しにする。



………………みんな、竜の骨を装備の素材に使うのやめとけ、めっちゃ脆いから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る