第25話 虚偽の森
そして数週間帝都を目指して馬車を進めていると、バカでかい森が目の前に見えてきた。
「でここが【虚偽の森】か………」
「はい、ここを抜ければ【帝都ザーディズ】ですね」
「…………【虚偽の森】?」
「うん?、ああ、イヴはこの森については知らないのか………ここは【虚偽の森】、なんの道標もなしに迷い込むと永遠に嘘と幻に騙されて出れなくなってしまう…………この森は様々な亜人が住み着いていてその中の狸人族と狐人族が化かしてるともっぱらの噂だな」
「…………へぇ〜」
「他にも王国の王都と帝国の帝都がこんな近くにある理由の一つがこの森です、ここには七大罪が一人、【強欲の罪マモン・オガリド】が封印されてるらしく、もしなんらかの手違いで封印が解かれてしまったら世界は混乱に陥ってしまいます、下手にここを戦場にするわけにはいかないので不可侵条約が結ばれている国境ってわけです」
「……………なるほど………他の七大罪の人、こんな近くにいたんだ…………」
「そうだなぁ〜………でも俺からしたら【アルカトラズ最下層】に【暴食の罪ベルゼブブ・ヒュドロニー】がいた方が驚きだぞ」
「…………なんで?」
「え?、だってーー」
「【マモン】と違って【ベルゼブブ】は封印場所を国が隠してましたからね………というのも今の七大罪はどの国でも抑止力のようなものですから場所は基本的に極秘です、攻めてきたら自爆覚悟で悪魔を解放する…………というふうにね、…………悪魔のおかげで人間同士の平和が保たれているというのはなんとも皮肉です」
「…………へぇ〜………」
そんなこんなで森の説明を終えると俺たちは中に入っていく、まぁ街道を外れなければ迷うことはない、パカポコと馬車を進めていく。
「疲れたでしょう?………そろそろ変わりますよ」
「おっ、サンキュー」
「いえいえ、これぐらいは当然です」
クリスが運転手を代わってくれる、なんだか勇者パーティーにいた頃を思い出す、代わってくれるのクリスだけだったからな。
馬車内にはいるとイヴが一人で何かを弄っている。
「なにしてんーー、ってそれ街で買ってたガラクタじゃん」
「…………うん、まぁ見てて…………『
彼女が詠唱すると剣と銃が足して二で割ったような武器に変化した。
「お、おおおおおー!なにこれ!!」
「…………なんか新しいスキル覚えてた」
「なにこれめっちゃかっこいいじゃん!!ガンブレードってやつか??!!」
キャッキャっとテンション上げて騒ぐ俺。
ーーーーーーーーーー
「結構進みましたね〜」
「そうだな〜」
「…………」
森の中を進んでいく三人、
「……………迷いましたね」
「…………言うな」
「…………お腹すいた」
クリスの言う通り迷ってしまった、かれこれ一週間ちょっとは彷徨ってしまった、速くて三、四日、遅くて五、六日…………現状、食料は動物などを狩って何とかしているが早くこの森を抜けたい。
「………やはり亜人の案内役がいるか〜」
「………そうですね〜」
「…………案内役?」
「この森の入り口は原住民が見張ってて、入ってきた人間達を監視していてお金払えば案内をしてくれます、あっちからしたらここは庭のようなものです、庭を散歩してお金をもらえるならこれほどいい話はないでしょう?」
「…………最初から頼まなかったって事は………どんな不都合があるの?」
「…………察しが良くて助かる」
馬車を止めて大声を張り上げる俺
「おおおい!!!聞いてるんだろ!!!案内を頼みたい!!!」
数秒経ち、草木をかき分ける人影が現れる。
「よろしゅうお願いします………やろ?、これだから人間は…………まぁええ、銭貰うた分は働いたろ」
狐耳が生えてる美人が歩いてくる、重ね着した服を腰の帯で固定している、あまり見た事ない珍しい服を着ている。
「…………でどのくらいだ?」
「金貨二枚でどうや?」
「おいおいボッタクリすぎだろ」
「たまにくるお客さん、そりゃたんまり落として貰わなきゃ割りに合わん………ま、あんたらがいつまでもここ居たいゆうなら話は別やけどな」
「ちっーー、商売上手め」
舌打ちしながら金貨を手渡す。
ちなみに金貨一枚ぐらいで中の下くらいの冒険者装備一式は買える。
「………なるほど、値段が高いのか」
ーーーーーーーーーーーーー
「そこを右」
「了解っと」
狐人族の言う通りに馬車を進めていく。
「………なぁ、小遣い稼ぎもいいけど、そんな簡単に人に姿を見せていいのか?」
「心配はいらへんでこれは『木葉分身』、本当のわっちな訳あらへんやろ…………お前らみたいな獣の相手に姿を晒すわけがない」
「…………えらく嫌われてるね……どうしてなの?クリス?……………」
「えっーーー、それは、ですね…………」
「……………亜人は……よく奴隷として捕らえられるからな」
「…………それは…………本当?」
「まぁ〜貴族の道楽だな」
「………………そっか………」
悲しそうに目を伏せるイヴになんとなく居心地が悪いクリスと俺。
「はん!、まるで貴族だけのような言い草だが一般市民だって
「…………ペット?」
「しらばっくれても無駄や、それや、そこの竜や」
「……………ペットじゃない…………仲間だ」
「どうだか!!口ではそう言って危なくなったら即見捨てる、お主らはそういう種族やろ」
「………………わかったよ…………」
「やっと認めよったか」
「…………貴方達狐人族は実際確かめもせず…………思い込みと先入観……………そして種族で相手を判断する………最低最悪の種族だってね………」
「…………なんやと」
イヴは吐き捨てるように言うと、狐人族の女は怒気を表すかのように後ろに生えてる尻尾の毛が逆立つ。
「まぁまぁ落ち着けよイヴ………それと狐さん、俺は飼われてるわけじゃないぜ、こいつらとはただの仲間さ」
「………ふん、イケメンは口も上手いってな、たらしこもうとしても無駄やで」
口ではそう言っててもなんか態度が軟化した気がする。
「へ?い、イケメン?」
「……………イケメンなんだ………」
「もしかしたら動物と人間、中間の亜人の美的感覚だと竜はイケメン………という風に見えるのかもしれませんね」
俺たちは小声で話し合う。
「………ほらもうすぐ出口やで」
「お、やっとか」
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