第24話 未知との邂逅



ゆっくりとまぶたを開け周りを確認する、世界には塵が積もれば山となるなんてことわざがあるらしい。



一理あると感じさせる光景が広がっていた。



屑鉄が積もって一山作られ、歪なバランスで保っていたが、時間とともに崩れてまた新たな屑鉄が頂点に乱雑に積まれていく。



大半は上に引っかかることもできず、騒音を立てながら落ちていき、最後に甲高い音を立てて地面に叩きつけられる。



地面に落ちた屑鉄は二度と陽の目を見ることはなく、一生を終える、いや、終わったからこそここに行き着いたのか。



運良く万が一、頂点に残れたとしても次に弾かれたらそこまで、後は転がり落ちるだけで地面という最底辺へ落ちていく。




確かに集まれば山になるだろう、しかしそれに価値はあるのか?



小さい事でもコツコツとやれば山になる、そこに善悪の区別はない、なぜならこうして乱雑に処理したごみ山がいくつも集まってできたのがこの不毛の地。




生き物はおらず、魔物すらいない、ここにあるのはただのガラクタのみ、最初からか途中からかは判別がつかないが、無駄、無意味、無価値、存在否定の烙印を押され、原型を止めることすら許されない、せめて嵩張らないように朽ちてくれ、捨てた人間の心理はこんなところだろう。




「……確か私は寝てたはず………ここは……何処?」





イヴは呟く、誰に聞いたわけでもなく独り言のつもりだったが返答する声が一つ。





「君の故郷さ」






「ッッッッーーー!?」




彼女は驚愕して、その場から飛び退き相手を観察する………なんだか全身にモザイクがかかっていて男か女かすらわからない。





「傷つくなぁ〜そんな警戒しなくてもいいじゃないかイヴ」






「…………貴方、誰?」





「僕のことは………まぁ………Aとでも呼んでくれ」






「……………私に何の用?」





「一応忠告しとかなきゃ不公平と思ってね…………今すぐ暴食の罪を殺して九頭龍殺しの称号を得た方がいいよ」






「…………ベル爺を殺せってこと?」





「うん、じゃなきゃ七元徳はおろか、七大罪の中の一番にすらなれず近いうちに君は殺される」





「…………七大罪は知ってるけど………

シチゲントク?…………

私が死ぬ?…………

とりあえず断る………

モザイクだらけの不審者の言うことを信じられないし………

もし貴方のいうことが真実だったとしても………

自分のためにベル爺を殺すなんてできない」






「…………まぁ良いさ、忠告はしといたからね、君が、EVEエヴァ】になり、【天魔の園】に辿り着けることを祈っているよ」






「………【EVEエヴァ】?…………【天魔の園】?………君達?………一体どういう意味ーー」






そこで意識はブラックアウトした。




ーーーーーーーーーーーー



「も、もう勘弁してくれよ」




「なに言ってるんですか、まだまだです、私がどれだけ心配したと思っているのですか!!全く貴方という人はーー」




「ひぃぃぃぃ〜〜イヴ助けてぇぇ〜〜」




「…………私の力の範囲を超えてるわ」





俺とイヴは聖女様にお説教をされていた、なぜこんなことになったかというとそれは十数分前に遡る。




「実は俺、ハル・セルリアンなんだよ」





「は?」






「…………………」





朝食中、俺はそうぶっちゃけた、やはりいつまでも嘘ついてるのはダメだと思い全部クリスにばらした、最初は信じなかったが色々俺しか知らない話などをしてやったら信じた、最初は泣いて俺に抱きついてきて胸を貸してやる。





やっと落ち着いて、顔を上げて話しているとだんだん顔が怖くなっていき今に至るというわけだ。




「全く、まぁ今回はこれくらいにしときます」





クリスの説教がひと段落付き、やっと朝食が食えると思いきや、次はイヴの質問が飛んできた。





「……………ねぇシチゲントクって知ってる?」





「【七元徳】?、そりゃあれだ、大昔にいたと言われている7人の天使だな」




「天使?」




「そうさ、こう書いて、【七元徳】」




独特なイントネーションで言っていたためわざわざ紙に書いてみせる。




「………ふ〜〜ん、それで………この天使様達は何者なの?」





「なんでも、初代魔族軍の頭、初代魔王【魔女王エヴァ】が従えていた幹部【七大罪】を倒し、捕らえたのが【七元徳】と言われている」




「………へぇ〜………参考までに7人の名前と簡単な性格や特徴を教えてくれないかな」







「へ?、あーーーっと、まず

純潔の徳ジャンヌ

おっぱいーーじゃなくて滅茶苦茶優しいお姉さん、ダイナマイトボデーーじゃなくて、スタイルが良くて、俺達童貞ーー、じゃなくてモテない男に人気な処女らしい」





「…………なるほど………で他の天使は?」





「…………他はなんか性格キツイらしいから知らん」




「…………おっぱい大きくて優しいお姉さんが……好きなんだ」




「…………体がムチムチしてて、全体のバランスが崩壊せず、万有引力に屈さず、常に上を向き俺達男に光を与えてくれる太陽の如き大きさーー、G〜Hあたりの大きさが一番好みかな」




「………ふ〜〜ん」




イヴはなぜか嬉しそうに自身の胸に手を当てる………いやまぁ彼女の気持ちにはなんとなく気付いてはいるが、まだ外に出たばっかなので友情と愛情の区別がついていないのだろう、…………と、いうか俺今竜だし、イヴは機械種だけど見た目は人間だからな、人間と竜と付き合うって全く想像できん……まさしく美女と野獣……分別がつくようになったらちゃんとした対応をしたい。



「ハル最低です」




「ハッッッーー、い、いや今のは違うんですよ聖女様」





「…………ところでイヴさん、そこの人の説明はあってるけどちょっと違うんですよ」




「…………違う?」





「そこの人?」




絶対零度の冷たい目をしたあと、笑顔でイヴに笑いかけながら話すクリス。






「【七元徳】は天使は天使でもただの天使じゃ無い、天使の中でも最高位の天使、【熾天使】と言われてます」





「…………【熾天使】」




「はい、そして【七元徳】の名前と性格教えてあげますね。

まず忠義心の厚く自分が認めたものは裏切らない【七元徳】の天使長【忠義の徳ザドギエル】


滅多なことじゃ怒らない天使

【忍耐の徳カフジエル】


自分より優秀な人に対して全く嫉妬心を抱かない天使【慈愛の徳ラファエル】


あれもこれもと欲しがらない天使

【分別の徳ガブリエル】


決して怠けない天使

【勤勉の徳ラジエル】



己を常に律する天使

【節制の徳ウリエル】



……………あとはそこの人が言っていた、穢れを知らない純白の天使

【純潔の徳ジャンヌ】



ですね」




「…………なるほど、ありがとうクリス」




「………あれ?俺は?」




「………………ありがとう、ハル」




かなり複雑そうな顔で礼を言うイヴ。







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