第19話 指切り拳万針千本呑ます(ざまぁ
「くっーー、まさか貴様らごときにこのような無様を晒すとは………」
磔られた壁から這い出てくるクレア、だが息は上がっている、俺の攻撃は多少なりとも効いてるようだ。
「ひとつ聞きたい、なぜ剣の軌道が読めた?」
「………あんた止めの時は決まって大振りで頭を狙う癖があるんだよ………特に格下の敵はな」
「…………なぜそんなことを知っている?」
「敵に言うとでも?………にしても直撃くらって立つとは思わなかったぜ」
「フン、舐めるな、この程度の攻撃でーー」
『
俺とクレアの会話の最中に壁の残骸から爆音を轟かせ高速で彼女に接近するイヴ。
「なっーー?!」
『くっーー、疾れ!邪悪を切り裂く断罪の刃!
『我紡ぐ子竜の足袋!
クレアはその速度に驚くきながらもとっさにスキルで迎撃、俺はほぼ同じタイミングでイヴにバフをかける、そのせいでいきなり速度が上がったイヴを捕らえきれず、攻撃を外してしまう。
「なっーー?!」
『
一瞬でクレアの目の前まで移動したイヴは移動中に詠唱を済ませたのか、腕が砲身になっていた、その腕で腹をぶん殴る。
クレアはギリギリ剣を間に挟み、直撃は回避する。
「クッッーー、ざ、残念だったな、とどめとはーー」
『我紡ぐ子竜の斧!
イヴが次どうするか分かっている俺は彼女に攻撃力強化をかける。
『………
「ガハッーー!」
クレアの言葉をガン無視してイヴは防御された砲身から砲弾を発射、超至近距離で接射されたため防御を押し切られまた腹に一発食らい彼女は意識を闇に落とす。
「勝ったな……」
呟く俺にイヴは近寄ってきて普通の拳で殴ってくる。
「いってぇ!!何しやがる!」
「…………見捨てられるって聞いて………ちょっと怖かった………」
無表情ながらも拗ねてるように見えるのは俺の気のせいだろうか、いつもくらってる鉄拳より頬がひりつく錯覚を覚える。
「あ、い、いや、その、わ、悪かった………」
「………まぁ作戦だったから良いけど………本気だったらステーキにしてた……」
「すいません、女王様」
「………今度好きなだけご飯奢ってくれたら………許す………」
「え?、そ、それは〜」
「…………………」
「わ、わかりました!!奢らせてください!」
無表情かつ無言なのが逆に怖い。
「…………約束ね………」
表情筋が固まっていたのか、めちゃくちゃぎこちない笑顔を披露するイヴ、不細工な笑顔に少し吹き出してしまう。
「で……アーロン………いやクリスは城のどこにいる?」
「クッーー殺せ!、私はアーロンを裏切らない!」
意識がないうちに縛り上げ、質問する俺、予想通りの反応をするクレア。
(………どうしたもんか………)
考え込む俺を尻目にクレアに近づくイヴ、彼女の剣を拾い上げる。
「…………ねぇ………女騎士さん………極東の島国では………約束を破られないよう………面白い歌を口ずさむんだけど………その歌の歌詞知ってる……?」
「………なんの話だ?」
「……私も本で読んだだけなんだけどね………………指切り拳万………」
「は?」
言うや否や、彼女の指に剣を中程まで入れて止める。
「ギャァァァァ!!、な、な、なに、を、ガハッーー」
「ちょっーー、イヴ!!??何してんの?!!?」
悲鳴を上げた瞬間に殴りつけ黙らせるイヴ。
「…………嘘ついたら針千本……呑ーます………
全身から武器をはやしてクレアに突き付けるイヴ。
「………私の針はちょっと太いかもしれないけど……騎士様なら大丈夫だよね………?」
「は、は、話します!話しますから許してください!!」
「…
「こ、こぇぇーー」
一瞬イヴが悪魔に見えた。
ーーーーーーーーーー
「なるほど……なるほど………」
「………私が知ってる事は全て話した………もういいだろ治療してくれ」
「うん……さっき嘘ついた分は許す………でも治療って……私回復スキルは使えないからな………」
「俺がポーション持ってる……ほら……」
彼女の切れ損なった沢庵のような指にポーションをかけて直してやる。
「……フン………」
(………やべぇ今更だけど腹立ってきた☆、感謝も謝罪も何もないのかよ……)
「うん………治ったね………じゃあ……
「「…………は?」」
「
俺とクレアは異口同音で疑問符を浮かべるのと同時に突き付けていた武器を接射していく、彼女は悲鳴も上げる暇もなく意識を失った。
「おいおいおい!!何も殺す事ーー」
「大丈夫、殺してはいない………ちょっと痛かっただけだと思うよ………」
「………絶対ちょっとじゃないと思うんだけど……」
「……そんな事どうでもいいから………はやく行くよ」
そういうと彼女はクレアからアイテムを物色し始める、使えそうな物を持つ。
風通しの良くなった入り口から出て、城を目指す俺達。
俺とイヴはフード付きマントで気休め程度に正体を隠す。
走ってる途中でふと気づく俺。
「なぁ……俺が約束破った時って……さっきのやるつもりじゃないよな?」
「………………」
イヴは無言かつ無表情。
「だからそれが一番怖いからやめてくれ」
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