第18話 vsクレア・シルバー

立ち上がり態勢を立て直す。




(クソ……まさかこんな早くに……しかもクレアが来るとは…………とりあえず………)




『鑑定!!!』




相手のスキルを見て戦略を立てる………つもりだったのだが。



(………ほぼノイズだらけで見えねぇ………)




「おや?、そこの竜、鑑定が使えるのか、ますます珍しい、だが残念、敵にそう簡単に情報を渡すとでも?」




(……一応スキル名だけでも見ておこうかと思ったが………スキルかアイテムどっちかはわからんが、鑑定を無効化してやがんな………面倒臭い……)




俺が少し思考を巡らせていると、隣のイヴは呟く。





発疹皮膚武イラプショーー』




『我放つ音速の刃!音速一閃アクセル・スラッシュ!」




「ッッッーーー!!」




イヴが武器を出そうとするも、クレアが消えたと思った刹那、目の前まで移動していて居合切りを放ってくる。




回避に集中するために詠唱は中断、紙一重でギリギリ躱す俺達。



「イヴ………だったか?スキルの話はアーロンから聞いている、厄介ではあるがこの間合いなら私の剣の方が早い」




得意な顔で笑うクレア、対称的に無表情ながらも額に汗を浮かべるイヴ。




相手の言う通り狭い室内だと剣士の方が有利、流石に素手では話にならない、真剣白刃取りでもできなければ無理。



対人戦経験皆無のイヴでは覆しようのない圧倒的不利…………一対一に限れば。




「俺を忘れんなぁ!『我が拳に火種の殴打!!子竜火ノ粉拳ベビーナックル!!』





俺はクレアに飛びかかり、最大火力の拳を顔面に打ち込む………が、彼女は難なく剣脊で受け止める。



「ちっーー、やっぱりダメか!」



「フン、軽いぞ、幼いとはいえそれでも数ある種族の中でも最強の一角、竜なのか!!」



「ッッッーー、ガハッーー!!」




お返しとばかりに蹴りを見舞ってくる、避けようとする余裕もない、気づいたら腹にもらっていた。




そのまま吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる、しかし時間は稼げた。





発疹皮膚武器展開イラプション魔硬化工程ハードニング砲身腕アムド・バレル弾丸装填カートリッジ発射準備完了セット……発射ファイア



俺が注意を引きつけてる間にイヴは詠唱を済ませ、クレアにぶっ放す、高速で接近する弾丸、俺は彼女のスキルを避けるのはおろか耐えたやつすら知らない。





………しかし、クレアはイヴの攻撃を一刀両断、弾が分かれてあらぬ方向へすっ飛んでいく。





「ひゃ〜、まじかよ………」



「………すごい………」



「思ったよりは遅いな、我放つ音速の刃!音速一閃アクセル・スラッシュ




イヴはあまりのことに呆然とする、一瞬とはいえそれは戦闘中としては致命的、弾を切った後、即距離を詰めてきた。



「ッッッッッーー!」


彼女は咄嗟に砲身となった腕で直撃は避けるものの衝撃はなくなるわけではない、派手に吹っ飛ばされる。




「イヴ!!」



「隙だらけだ」



「しまっーー」


思わずイヴの方を向いてしまう俺を足払いで転ばせ胸を思い切り踏んづけてくる。



「ぐっーー!」





「………フン終わりだ………アーロンに逆らうからそういうことになる、あの世で後悔するんだな………ーーいや、いいことを思いついた、おい蜥蜴、土下座で命乞いをして私と一緒に主人を殺すと約束するならお前だけは見逃してやる………どうだ?」






「………われ……や………き……がす…し……いき」




「………うん?、聞き取れん、もう少しはっきり言ってくれないか?」





瓦礫で埋もれて姿が見えないイヴをの方をチラ見する俺。




「………俺だけは助かる?仲間を殺せば助けてくれるんだな」





「………ああ、約束しよう」




「………わかりました」



俺が肯定の意思を返すと彼女は足を退け、俺は正座して頭を地面に擦り付ける。




「………助けてください、お願いします」




「はは、良いだろう、特別に………私が介錯をしてやろう!!!」






土下座してる俺からは見えないはずの剣を最小限の動きで回避する。




「なっーー?!」




思った通りクレアは俺の頭目掛けて剣を大上段で振り下ろしている。




「きっ、貴様どうやってーー」



子竜ノ火ノ粉ベビーフレイム!!』



「な、無詠唱だと!!?」



(……違う、お前に質問されたときに小声で詠唱を済ませておいただけだ……スキルが発動するかどうかは賭けだったけどな)



撒き散らされた火に一瞬怯むクレア、その火の中突っ込みながら詠唱する。



『我の拳に火種の殴打!!子竜火ノ粉拳ベビーナックル!!』




顔面目掛けて必殺を誓いながら拳を繰り出す………しかし彼女は手のひらで受け止めていた。



「……….また顔狙いか、芸が、コフッーー」




「へへ、やっぱりな……戦いが大得意のあんたら貴族より喧嘩は平民の俺の方が上手いらしい……」





実は顔面への攻撃はフェイント、本命は腹への攻撃、両腕で顔面と腹への同時攻撃を仕掛けていた、誰でも顔面を攻撃されるのは怖い、だからこそ目がついてない腹の方は警戒が薄くなる。



冒険者の大多数は対人戦に慣れていない、なぜならほとんど魔物との戦いしかしないからだ、役に立つかわからんフェイント覚えるよりも自分の攻撃力を上げたほうが効率的。



騎士なんかの決闘でも剣vs剣みたいなのが一般的だろうし、そもそもこんなフェイント卑怯だのなんだのいわれるからやる奴もいないしな。




「クッーーこざかしい真似を」




「チェックメイトだ、『我が拳に火種の殴打!子竜火ノ粉拳ベビーナックル!!』



「な、まっーー、グボォォォ!!!」



腹に触れてる状態でスキルを発動、クレアの命乞いは断末魔の悲鳴と変わりぶっ飛ばされ壁に磔になる。



『スキル子竜火山突きベビーボルカニカ、詠唱待機を閃きました』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る