第17話 残酷な嘘と優しい嘘


「親父!!回復ポーションとマジックポーション、これで買えるだけ頼む!」




俺は手持ち全部をカウンターに置く、道具屋の中年はこっちを向くと驚く。




「おお?ドラゴンがなんでこんなところに?しかもどうやって喋ってんだ?」



「悪いがこっちも急いでて無駄話をしてる余裕は無い!!」




「………まぁ金さえ貰えれば魔物だろうがお客さんだな、ひーふーみー……これだと全部で10本くらいだ」




「じゃあ回復ポーションとマジックポーション5本ずつ頼む!!」




「あいよ、毎度あり」



「よし、サンキュー!!、ってあれ?………おいなんか多くないか?」



「あ?、あーー、初回サービスだ、あんたもどうせなら多いほうがいいんじゃねぇか?」



「………ありがとうございます」



「まぁ、これからもうちをご贔屓にしてくれればお釣りがくるさ」




「…………わかりました、生きて帰ってこれたらここに通い詰めますよ」




「なんでぇ、おめぇさんそんな難しいクエストに行くのかい?」



「まぁ……そんな所ですね、それじゃあ、本当にありがとうございました!」



 


道具屋を後にした俺は宿屋に帰る、部屋に入るといつも以上に死んだ目をしているイヴがいた。




「…………まぁいいや………確かにあの人は会ったばかりの他人だ………むしろ無関係な私達の命が助かっただけで………御の字だね………私はまだまだやりたい事が沢山あるんだ………見捨てよう………」





「ーーとか言ってお前、俺が寝た後に一人で城に殴り込みに行く気なんだろ?」





「そーーそそそそ、そんなことするわけないじゃん」





無表情で目が泳がせまくるイヴ、嘘だってバレバレだ。





「ったく水臭いーー、どうせなら二人で助けに行こうぜ」




「えーー?………でも、良いの?覚悟を踏みにじるなって…………」






「………多分だがアーロンは約束を守る気なんてさらさらねぇ、しきりに『考えてやるって』って言ってたからな、近いうちに俺達にも追手が来るだろう、だからこっちも勝手にやらせてもらう!」





「………じゃあなんで止めたの?」





「あそこで突っ込んでも助けられるわけがない……準備してから襲撃したほうがいいだろ?」





「…………助けても彼女の国への援助はなくなる、責められるかもしれない………何か手はあるの?」





「何にもねぇ、助けた後で考える!!」




「………ふふ、なにそれ………わかった……一緒に…助けに行こう………………」




イヴは拳を前に突き出してきた、俺は拳を重ねる。




「よし!!、じゃあ乗り込みーー」




「ッッッーー?!?伏せて!!」



「へ?」







イヴが俺のことを抱きながら倒れ込む、刹那、近くの入り口のドアから剣が生え一瞬前まで俺の頭のあった空間を切り裂いた。





手応えがないとわかると、剣が引っ込んでいき、乱雑に切り込みが入る。




静かに役目を果たせなくなった扉は床に落ちていく、そんな中ドアノブの唯一の金属音がやけに耳に残った。



銀色の鎧に身を包んだ女騎士が風通しの良くなった入り口から入室してくる。





「ほぅ、我が剣を躱すとはなかなかやるな」




「お前は、クレア・シルバー??!?なんでここに??!」





「名乗った覚えはないのだがな…………それに自分で言っていたじゃないか、近いうちに追手が来ると、悪いが斬らせてもらおう」




隣のイヴは皮肉げに呟く。




「………ノックぐらいしてよね……」




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