第15話 テイマーとは?(哲学
次は俺の服選び………なんて事はない、だって俺はそこそこ装備が整ってるからな。
俺たちのパーティーの実力は普通に高いと思う、そこら辺の剣士やらタンクより硬く強くさらに後衛並みの遠距離火力を持つイヴ。
回復役、光魔法のプロフェショナルのクリス。
そしてイヴよりは弱いがフォローぐらいだったら前衛できて、種類も効果もあまり大した事ないがバフ持ちの俺。
しかしまだお互いの事全く知らず、チームワークの「チ」の字も無いパーティー。
無理に高難易度のクエストを受けることもない、とりあえずお試しとして新入りが受けるゴブリン討伐に来ている。
「ギャッギャッギャッ!!」
異形の裏葉色の小鬼が耳障りなノイズに等しい鳴き声をあげ、錆びまみれの剣を振り回してくる。
久しぶりの命のやり取りに肝を冷やしながらも、頭は熱くなっていく、そんな矛盾した錯覚を俺は感じていた。
相手がどんな弱者だろうと戦場で油断は禁物、油断していればいつのまにか急所を穿たれ、総ての生き物に等しくあるもの、死が訪れるわけだ。
魔物だって俺たちと同じ生き物、次の瞬間には死んでるかもしれない、そんな状況に追いやられたらそれこそ死に物狂いで抗う、それが生き物のごく普通の行動。
窮鼠猫を噛むというように窮鼠が猫の首を噛みちぎるなど、珍しくともなんともない。
命のやり取り、真剣勝負で調子をこいたら死ぬ、というあまりにも当たり前なこと。
という訳で遠慮容赦出し惜しみなしで最初から俺たちのパーティーの
「ギャッギャッギャッ!!」
「………
腕から剣が生えて相手の攻撃を捌く。
剣同士がぶつかる度に火花が散らされる、錆びていても剣ということだろうか?
「…………もう飽きた…………」
「ギャーー?」
彼女が憂鬱そうに呟いた刹那、気づいたらゴブリンの剣ごと体を一刀両断。
ゴブリンはキョトンとした顔で力無く地面に倒れこみ、数分様子見、動かないので試しに腕を切ってみるイヴ、しかしゴブリンに反応なし、事切れたようだ。
「………よし……これでクエストクリアだね……」
ふんすと満足そうに頷くイヴ、そんな彼女を見てるとめっちゃ癒される。
討伐証明の耳を切り取り、ギルドから貸出された素材袋に詰め込む。
俺は依頼書を取り出し内容を確認。
「うん、クエストクリアだ」
俺たちのパーティー、記念すべき初依頼は成功に終わった。
単独で行動しているゴブリンを探し、三対一で確実に仕留めること三回。
一気に仕留めた方が良いと脳筋冒険者は思うだろうが、限界ギリギリの戦闘なんかアクシデント一発で危機に陥ってしまう。
面倒だが、手間をかければそれだけ安全に事を運べる。
見込みの無さそうな手間はかけないが、確実に効果が出る小細工、俺は割と気に入っていた。
世界に生き物は腐るほどいるが、俺たちの命はたった一つずつ、できるだけリスクを回避するのは当然。
「そうですね〜皆さん、クエストクリアお疲れ様でした……………ーーってそんな事はどうでも良いんです!!」
クリスはいきなりノリツッコミを始めた。
「「……………え?、何?なんか問題あった?」」
またしても異口同音で聞き返す俺たち。
「なんでテイマーが前衛してドラゴンがサポートしてるんですか??!逆でしょ普通!!」
「「……………」」
正しすぎる正論をぶつけられ再度固まる俺たち。
ーーーーーーー
「……どうする?………もうバラしちゃう?」
「いや、あのさ、お前昨日の俺のテンション考えろや、ふざけんな恥ずかしすぎだわ」
「………私は胸にきたよ………「こういう時は感謝を伝えてくれた方が嬉しいぜ…」っていうハルのセリフ」
「あのさ、的確に人の傷を抉り出すのやめて、しかもさ、明らかに茶化すテンションじゃなくて真顔で言うのやめて、なんなら茶化して欲しい」
「…………私はーー」
「やり直さなくていいから!!」
クリスに背を向けてぐだぐだ話すイヴと俺、痺れを切らした彼女の声が聞こえてくる。
「あのーーー、早めに説明していただけると幸いです」
「…………えと……その……あの……」
「あーー、あれだ!!テイマーの弱点を克服した究極がドラゴンテイマーなんだよ!!!」
「………というと?」
「普通テイマーって使役してるモンスターのサポートをするだろ?……だけど最強職のドラゴンテイマーはそんな面倒くさい真似はしない!!、自身で戦う!」
「え?、で、でもそれは後衛職のテイマーの仕事でしょうか?」
「…………モンスター達を前に出して後方から指示を出す、役割がしっかりしてると言えるかもしれないが逆に言えば辛いことはモンスターに任せきりということだ!!、だからその事を気に病んだイヴは自分も前に出るドラゴンテイマーになったんだ!!」
「イ、イヴさんはそんな優しい事を考えて………?」
「な!!イヴ!!?」
口八丁でクリスを騙し、目で肯定しろと威圧しながらイヴの方を見る俺。
「…………えと……まぁ……そんな感じ………」
曖昧ながらも頷く彼女、一息つく俺。
「………………」
(さ、流石に無理矢理すぎーー)
「なんて素晴らしい考えなんでしょう!!確かに魔物といえど仲間!!仲間を大切にするその考え、痛く感服しました!」
涙を流しながら感動してるクリス、ひとまず急場は凌いだ。
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