第8話 ウワサのあいつ
放課後、とりあえず私は教室でその人を待つことにした。
あっという間の出来事だったからびっくりしたけどよく考えてみると、こんなことができる能力って直接的には「紙」とか「文字」を使うようなものか、間接的に「空間」とか「時間」系統のものなんじゃないかなって考えてみた。
正直このクラスになってから私の思考回路がどんどんと厨ニ感を増してきている気がする。困ったなぁ。そんなキャラはちょっと嫌かも。気をつけないと……。
……、来ない。
確かに「放課後」とは書かれてたけど詳しい時間まではなかった。でも、相手呼出しておいて待たせるとか、と考えていると教室の外から足音が聞こえた。
ガラガラ――
教室に入ってきたのは、アヤノくんだった。
そして、私の目の前にきていきなり
「ほっっっっっんとうにゴメン!!待たせちゃって。お詫びにこれ。」
と何かを差し出した。
それは昼に私が買ったはずのくまさんシリーズのグミだった。
しかも復刻版パッケージのやつ。
「言い訳に聞こえるかもしれないんだけど、これ探すのに時間がかかっちゃって」
よっこいしょ、と近くにあった椅子に座った。
わざわざそんなことしてくれてたんだ。
「ありが……、って私の昼ごはん消したの喜久地くんなの?」
危うくありがとうって言うところだったけどさ、事の発端は……そもそもそっちな気がする。
じーっとアヤノくんを見つめた。
「うん、そうなるね。実はさ、僕『3分だけ過去に戻る能力』なんだけど昼休みに友達と遊んでて気が付かないうちに能力使っちゃってたらしくて……。」
物言いたそうな私の顔を見てまた
要するに私がちょうど会計をしていたタイミングにその『3分』が重なってしまっていたようだ。
「過去に干渉すると今とか未来が変わっちゃうって話聞いたことある?ほら青いタヌキが出てくるアニメのタイムマシーンみたいな。それでえっと……。」
ん?
僅かな沈黙のあとアヤノくんはばつの悪そうに
「……、名前なんだったっけ?」
「
……ちょっとさっきから微妙に行動が失礼じゃないの?同じクラスで2ヶ月一緒なのに。まぁ私も人のことあんまり言えないけど。
「ごめん、ごめん。えっと、それで月島さんがお昼ごはんを買ったっていう事実が少し変わっちゃったんだ。それでお詫びになにか月島さんにしてあげたいんだけど何がいい?」
「なにかって?たとえば?」
もしこれが私じゃなくて他の女子だったら喜びそうなうまい話な気がするけど、あいにくそういったことにあまり興味がないから
「うーん。どうしようかなぁ……。」
どうやらその内容までは考えていなかったようだだった。
……アヤノくんって、学年でもそこそこ成績がいいって噂は聞いてたけどちょこっと抜けてるところもあるんだな、って思ってみたり。
「じゃあ、別に何かするとかじゃなくてもいいからさ、アヤ…き、キクチくんの能力についてもっと詳しく教えてほしいな。」
能力者の間の認識としてアニメとか漫画の魔法みたいな水とか炎の能力とかはそれほど重要ではないが、他に同じ能力を持つ人が少ない(いわゆる希少性ってやつの)能力に関してはいわば個人情報とかになりかねないせいか、その能力者の詳しい情報が第三者に知られるということは「弱みを握られる」に近い感覚なのだ。
べ、別に私の場合はアヤノくんの弱みを握りたいとかそんな悪意はまったく無くって、ただ単に他の能力者に興味があったのだ。
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