第6話 いちごミルクキャンデー
教室の中で雨のにおいがした。
多分「このクラスの中の誰か」ということまではわかった。
最近少しずつこの「雨がわかるチカラ」の精度がよくなってきたような気がする。ピンポイントではないけど人数がある程度絞れるようになってきた。
多分、今回の「雨」は私の席の近くの誰かなんじゃないな?
って思うんだけど……やはりまだ確証がない。少ない証拠から誰かを当てるのってなんだか探偵になった気分。(推理小説とかサスペンスドラマあんまりみないから「探偵」っていうのはイメージだけど)
そういえば、「雨」ってにおいのあるものだと思っていたのは私ぐらいだったららしい。昔から雨が降っていると、嗅覚っていうのか味覚っていうのかなんと説明したらいいのかわからないけど五感っぽいけどそうじゃないなにかが「雨」と私の中で認識していた。
例えば春先の雨は「やわらかい」におい。梅雨の雨はなんか「しょっぱい?」。秋の雨はときどき「おいしそう」なにおいがするような気がするのだ。夏とかに急に降ってきた雨のときは、梅干しを食べたときのような「すっぱくて」びっくりしたときみないなときもあった。実際に雨の味が酸っぱかったわけじゃなかったからまた不思議な話である。雨水自体には「味みたいな香り」?はないのだ。
そしてそれは最近になって感じるココロの雨の感覚とどこか似ているようなする。
まだ「雨」のチカラが使えなかった小学生の頃は、この話しても冗談だと笑って流されてしまった。唯一、そんなわたしの不思議な話を最後まで聞いてくれたのがきーちゃんだった。そしてきーちゃんが今私の通っている地元の近くの高校「穂高校(みのるこうこう)」を勧めてくれた。ここならくーちゃんに向いてる気がするの、と中3の頃学校見学に行ってみたところ自分の中のなにかが「ここに行きたい」と決めたのだ。
穂高校の制服はブレザーだ。公立だけれどそこそこ制服が可愛いからか、もともと私立の学校の建物だったからか(多分後者であるとは思うが)「学園」と呼んでいる人もいる。あと購買の菓子パンや学食のメニューがかなり充実しているっていうのもポイントだ。
――キーン、コーン、カーン、――
そんなことを考えているうちに授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。
朝、忙しくて弁当を作っている時間がなかったので今日の昼食は購買で買うことにした。品揃えは充実しているとはいえ、「人気のものはすぐ売り切れてしまう」というのが購買である。
私が今日狙っているのは「たまご蒸しパン」と「
混み合う廊下を進みながら、早足で購買を目指す。教室からそんなに遠い場所にあるわけではないので3分もあればすぐ着いた。
年功序列って言葉はあるけど購買はまた別の話。学年関係なく早く列に並んだもん勝ち。以前は列なんか関係無くて、すごく混み合ってる上に「上級生がきたら譲らないといけない」的な伝統もあって下級生が全く好きなものが食べられないなんて時代もあったらしい。それを見かねた購買のおばちゃんたちが工夫して今の「早く列に並んだもん勝ち」というシステムを作り上げた。割り込みをしようとしたり、「先輩」という権力を後輩に振りかざすようなことをしようものなら、ものすごい剣幕で叱られるので今はあまりそういうことをする生徒はいない。
どうやら今日は運が良かったようだ。まだいくつか「
教室につくと、近くの席で茶色に染めた髪を巻いたいかにも女子って感じの生徒が嬉し涙を流していた。どうやらゲームのガチャで良いのが出たらしい。(ゲームで泣けるって……。さっきのいちごみるくキャンディーの香りの雨ってこの人のことだったんだ。)
自分の席に戻ってきて椅子に座わり今から食べようとしたその直前、
え…………?!。
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