五女の秋桜ちゃん。
「ねーさまは、少年漫画のような熱い物語は描かないのですか?」
唐突にそう訊いてきたのは、五女の
小学六年生で、少女漫画のような恋愛モノよりも少年漫画のようなバトルモノが好きなぼくっ
私は「
「読むのは好きだけど、描くとなるとねー。世界観考えるの難しそうだし」
私は成人向けの漫画を描く漫画家さんです。
成人向け漫画にもファンタジー要素を織り交ぜた作品はあるにはあるけど、私が描くものはどれも日常的なものというか、不思議設定が一切ないナチュラルなエロ漫画なんだよねぇ。
言えないけど。清く可愛い妹たちには教えてないけど。
秋桜ちゃんたちには、私は恋愛漫画家ということになっています。
「ねーさまが描いたバトル漫画、読んでみたいな……」
「えぇ……?」
なんだかつい最近も似たようなことを言われたような気がしないでもないですが……。
「だ、ダメなら……いいんですけど……」
「ダメっていうか……」
バトル漫画というより、バトル描写を見てみたいってことなんだろうけど……バトル……バトルかぁ……。
ファンタジーの有り無しは別にしても、漫画家になる以前からもそういった漫画は描いたことがないんだよね。
元々可愛い女の子を描くのが好きで、気づいた頃にはエロ方面に手を出していたというか……。
「その、ねーさまが迷惑っていうなら、無理してまで、描いてくれなくてもいいんですけど……締め切りとか、お仕事の都合もあるでしょうし……」
「うーん……」
ジャ●プ系統じゃなければギリ描けそうな気はする。可愛い系の既存キャラで、戦う女の子。
なんだろ……魔法少女とか?
「男の子のキャラクターじゃなくてもいいの?」
「は、はい、その……ねーさまが描いたモノなら、女の子でも……」
男性キャラを描けないわけじゃないけど、私が描くとカッコいいより可愛い系の男の子になってしまう。
「うん」
私は頷き、秋桜ちゃんに笑いかけます。
「それなら描けそうかな」
「ほんとですか!?」
秋桜ちゃんは表情をぱぁっと明るくして、
「ありがとうねーさま!」
私の胸に飛びついてきました。
愛しの妹に抱きつかれることほど嬉しいことはありません。
「ねーさん。少しよろしいですか?」
戸の向こうから声をかけられました。メガネっ
「どうぞー」
「失礼します」
部屋に入るなり、私の胸に顔を寄せる秋桜ちゃんを視界に捉える牡丹ちゃん。
「…………(じーっ)」
牡丹ちゃんはしばらく、秋桜ちゃんを羨ましそうに見つめていました。
「えっと、牡丹ちゃんもぎゅーする?」
「え、はっ――し、しません。するわけないじゃないですか。もう子どもじゃないんですから」
小学生の
「…………(じーっ)」
再び秋桜ちゃんを見つめる牡丹ちゃん。一体なにをしに来たのやら。
私は助け船を出すことにしました。
「牡丹ちゃん、なにか用事があったんじゃないの?」
「牡丹ねーさま」
私の声に、しかし反応したのは秋桜ちゃんでした。
「ぼく、用事思い出したからもぅ行くね」
秋桜ちゃんは私から離れてからそう言って、とてとてと部屋から出ていってしまいます。
「…………」
秋桜ちゃんが出ていった部屋の外を見つめていた牡丹ちゃんの顔が、少しして赤くなりました。
牡丹ちゃんの羨むような視線に気づいた秋桜ちゃんが、空気を読んで出ていった――そして牡丹ちゃんは、妹に気を遣われたことに恥ずかしさを覚えた――といったところでしょうか。
「し、失礼しましたっ」
用事があったはずなのに、牡丹ちゃんは顔を赤くしたまま部屋を出ていってしまいます。
おねえちゃんとしては、いつでも甘えてきてくれていいんだけどなぁ……。
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