第5話 朝からなんか恥ずかしいね。
木々が黄色やオレンジに色づく頃、俺はS市に出張することになった。ナオさんとは違うチーフとの出張は1年ぶりくらいだ。鈴木先輩はナオさんの先輩にあたる人で、ナオさんがチーフになる前から何度も一緒に仕事をしたことがある大先輩だ。お見合いで社外の男性と結婚し、子供はいないが夫婦二馬力でゆとりある生活を送っておられる。
「半田さんとの仕事はどう?うまく行ってる?」S市への移動中、鈴木先輩が話しかけてくれた。
「あの子、我儘で、頑固で、好き嫌いがはっきりしているから、そりが合わないとペア組んでいるの辛いかと思って。」
「いつも優しく、厳しく、ご指導いただいております。」と大袈裟に言ってみた。
「フフフ、よかった。半田さんと私は付き合いが長いのよ。あの子の好き嫌いの判断基準が今もさっぱり分からないけど、上手くいっているなら刈谷君も気に入られたようね。」この先輩も“いい人”だというのが、柔らかい笑顔で分かった。
平社員の頃のナオさんは、鈴木先輩とよく仕事をしていたらしい。会社も今よりずっと小さく、何とか一つでも仕事を受託して業務を拡大していきたい時だった。鈴木先輩とナオさんは、ペアでいろんな案件に対応し、数百万の案件から徐々に大きな案件も取れるようになっていった。ナオさんが3年目になる頃には、チーフの鈴木先輩のプレゼンの一部を自分で説明するようになり、お二人は案件あたり2,000万円を超えるくらいまでコンペで無敗だったらしい。案件が大きくなっていくと大手との競合もあるので、さすがに無敗とは行かないが、それでも我が社の他のペアと比べて、勝率は段違いに高かった。一時期「あの二人は“枕”でもしているんじゃないか?」と社内で疑われたが、もちろんそんな事は無く、ついにナオさん自身が20代でチーフに昇進した。これは我が社の最速、最年少の記録で、ナオさんは『美声のプレゼン女王』と呼ばれるようになった。
今回の鈴木先輩との出張は、比較的案件が小さく、3営業日くらいで片が付くものだった。先輩とは別々にホテルを取り、自分の部屋やファミレスで、先輩からのメールや電話での指示に基づき仕事をしたが、ランチや晩御飯に誘ってくれた。和やかな雰囲気のまま出張を終えることができた。
「鈴木先輩も、半田先輩も、フレンドリーに接してくれたり、食事をおごってくれたり、すごく嬉しいです。いいチーフに当たって俺はラッキーだ。」
「身も蓋もないことを言うけど、実は「チーフは後輩に食事をおごれ」ってのが社の不文律なの。誰が言い出したのか分からないし、誰も止めないから続いているだけだけどね。だからどのチーフでも食事は基本同じはずよ。」
「へえ、そうだったんですか。うちの会社、なぞのルールが時々ありますよね。男女ペアのチームを組むことが多いのに、社内恋愛禁止とか。」
「うーん、そのルールは聞いたこと無いなあ。部長以下は独身ばかりだし、今まで例が無いだけじゃない?私だって親が持ってきたお見合いで、偶然社外のいい人を引き当てただけだよ。」
この頃には俺は、ナオさんのことを仕事だけではない、身体だけでもない、特別な女性として想うようになっていた。
S市から東京へ戻ると、次の日からはナオさんとM市への出張だ。「無茶なスケジュール組んでゴメンね。」とナオさんは言ってくれたが、むしろ俺はワクワクした。M市観光協会のサイト構築と3年間の保守。コンペで受託できれば初年度だけで5,000万の売上で、その後もメンテナンスで小銭を稼げる案件だ。プレゼンは20日後だが、早めに現地入りして、協会の役員さんとのヒアリングや現地を歩いて見学したいというのがナオさんの考えだ。
観光分野が好きで、かつ得意分野のナオさんは、現地入り1週目から飛ばし気味で、早くも俺はナオさんの部屋で仕事をすることになった。ナオさんに気合が入っているのは、ホテルの部屋をジュニアスイートにしていることからも窺える。リビングと寝室と2区画ある部屋だ。
「昨日と今日ヒアリングした記録を“すぐに”まとめてくれる?」
「承知しました。」俺は10人近いヒアリング、延べ7時間の内容を記録としてまとめる。ナオさんの言う“すぐに”というのは、「終わるまで寝るな」という意味だ。俺は聞き取った発言やいただいた参考資料を時系列と内容別に分類し、印象に残ったコメントは文字起こしとして抜粋したりして、資料をまとめていった。
この間、ナオさんも市内を歩いて撮った画像を整理したり、観光庁のプレスリリースや審議会等の資料を漁って、目ぼしいもののプリントアウトを机に積み上げていた。俺の資料まとめが出来たのは、日付が変わり、日が昇り始めた頃だった。
「先輩、終わりました。こんな感じでいいですか?」リビング区画の自分のパソコンからメールで資料を送った後、寝室区画のデスクで仕事をしているナオさん横に立つ。
「お疲れ様。すぐ目を通すね。」ナオさんは、資料に1ページずつ目を通しながら
「結構な分量になったね。大変だったでしょ。」と労ってくれた。
「頑張りましたよー。ご飯とトイレ以外はぶっ通しで9時間ですからね。」
「確かに、私も疲れたぁ。休憩しようか。」ナオさんも席の背もたれにもたれて身体を上に伸ばす。おわん型の美乳が強調された。
「先輩、ご褒美をくださいよ。」ムラムラして少し甘えて言ってみたが、
「私達、前日の深夜から20時間以上起きたままで、お風呂入っていないよ。」と自分の右腕を上に上げ、脇の方に顔を向けた。匂いを嗅いでいる。真顔で「うん」と言って、自分でもヤバイと思ったのか、早々に席を立ち入浴の準備を始めた。
「それぞれ自分のホテルでお風呂入って仮眠して、5時間後くらいにいつものカフェで朝ご飯食べよう。」というナオさんの指示だった。
俺は財布と携帯、自分のホテルのルームキーだけ上着のポケットに入れて、眠気でボーっとしながら自分のホテルに戻った。
俺もまずシャワーを浴びて着替えたかった。サッパリした後ベッドに横になるが、朝で明るいからか、ムラムラが続いているからか、疲れているのに身体の力が抜けない。仕方なく一旦被っていた布団をめくり、トランクスから下半身を出して、自分で処理して眠りについた。
携帯の音で目が覚めた。ナオさんからのメールで「今日はお客様と会うアポが無いからスーツ不要」とのことだった。時計を見ると9時過ぎで、確かに身支度を始めなきゃいけない時間だった。
備え付けの電気ケトルでお湯を沸かし、湯飲みと一緒に置いてあったほうじ茶を作った。歯磨きと髭剃りをして、少しぬるくなったお茶を飲み干して部屋を出た。
待ち合わせのカフェには俺の方が先に着いたようで、ナオさんの姿はまだない。禁煙席に案内してもらい、ホットのカフェオレをオーダーした。
オーダーのカフェオレがサーブされる頃、ナオさんも「遅くなっちゃった」と言いながらボックス席に座り、「私も同じものをお願いします」と言いながら向かい合う形で座った。ナオさんは、デニムに薄手のニット。肩にはショールを巻いていた。
俺達は遅い朝食を取り、ナオさんの部屋に向かった。まだまだプレゼンに向けた資料作りは中盤なのだ。
部屋の入口の扉を閉めてすぐ、急にナオさんが俺の周りの匂いをクンクン嗅ぎだし、最後に俺の右手を取って掌の匂いを嗅ぎ「イカ臭くない?」と言った。
「マジですか、そんなはずないですよ。」俺は狼狽し、ナオさんの手を振りほどいて自分でも右手の掌を嗅いでみる。
「冗談でーす。鎌をかけてみました。ビックリした?」ナオさんは、からかうように笑いながらリビング区画に入り、ソファーに座った。
「冗談きついですよー。」俺もナオさんに続いてリビングに入り、答えた。
「ごめん、ごめん。ユウジ君が「ご褒美ください」とかエロ動画みたいなことを言うから、溜まってるのかと思って。」
「でも、そんだけ慌てるってことは、自分でしちゃったの?」俺は恥ずかしくて頷くことしかできなかった。
「え、マジで。うわー当たっちゃった。何か意地悪したみたいで、ゴメンね。」
「大丈夫です。」自然と小さな声しか出ない。
「ちょっと恥ずかしいお願いするつもりだったけど、いいや。」少し残念そうな顔をしたナオさんは立ち上がり、寝室区画へ歩き出した。
「何するか分からないけど、俺手伝いたいです。」と俺が言うと、
「ホントに?無理しなくていいんだよ。」ナオさんはイタズラするように俺の股間を触れると、俺のモノはすぐに反応した。
「ちょっと待っててね。」寝室区画と繋がっているバスルームからバスタオルを取って来たナオさんは、それを一旦広げて二つ折りし、リビング区画にあるソファーへ敷いた。「こちらへどうぞ」と身振りを交えて俺に座るように言った。もちろん服を脱いで。
俺が指示通り服を脱いでいると、ナオさんはまた寝室区画へ行き、こちらからは見えない所でしばらくゴソゴソ音をさせた後、リビング区画に戻ってきた。ナオさんが全裸でこちらにゆっくり歩いてくる。薄手のカーテンしか閉めていない窓からは明るい陽射しが入り、ナオさんの身体の凹凸に影を作りながら照らす。ナオさんのツンと上向きの胸がとても綺麗だった。
「なんか朝から恥ずかしいね。」ナオさんは俺の膝の上に遠慮がちに座り、
「重くない?」と気遣ってくれた後、両膝を立てて俺に真正面で向き合う様に座りなおした。ナオさんは、俺のモノにゴムを着けて、親指と人差し指で摘み、少し前屈みになって摘まんでいた俺のモノを自分の身体に差し込んでくれた。ナオさんは照れ隠しなのか、ハニカミながら自分の髪の毛先を持って、俺の顔をくすぐり、「見ちゃダメ」と言った。見ちゃダメと言われた結合部はエロく、顔の少しあどけない表情とのギャップが興奮をかきたてた。
俺のモノを入れたまま「へへ、ちゃんと固い。」と笑顔で言いながら、ナオさんは自分で気持ちが良いように腰を動かしている。結合部の感触を確かめるように、上下させてみたり、前後左右にゆっくり長く動かしていた。
俺もナオさんの腰に手を添えたり、髪を撫でたりして、フワフワとした柔らかい感触を楽しんでいたが、ナオさんは「あっ、ココが一番気持ちいい」と言った後、立てていた膝を寝かせ、ペタンコ座りに近い形でクイクイと小刻みに腰を前後させてきた。モノへの刺激が強くなって俺も絶頂が近づき、自然とナオさんを下から突き上げるように腰を浮かせた。
「もうちょっと待って。一緒にいこ。」呼吸も早くなったナオさんが、俺の肩に手を添えて、背筋を伸ばしたまま言ってくれた。細かい前後運動がもう少しだけ続き、最後にナオさんの腰が思いっきり俺の股間へ擦り付けられた時、ナオさんも俺も逝った。
美声の女王が二人きりの時にどんな声で啼くのか、俺だけしか知らない。
「やっばー、1時間近く使っちゃった。」ナオさんはフラフラしながら、ゆっくり俺から立ち上がり、俺の左隣に座りなおした。俺はナオさんに口づけをして、ガラスのテーブルに置いてあるティッシュボックスに手を伸ばす。
「ありがとう。ストレスたまってたから自分で動いて、100%いきたかったんだぁ。ユウジ君は嫌じゃなかった?」
「俺も気持ちよかったです。」外したゴムにたまっていた恥ずかしい液体の量もそれを物語っている。
「男の人って、一日一回なんだと勝手に思っていたよ。」
「何なんですか、お薬は一日一回食後に服用みたいなの。」自然と笑ってしまった。
「またお願いするかも。」ナオさんは髪を整えながら言った。
「いつでも喜んで。」と応えると、「エッチ」と肩を軽く指で押された。
「最高のリフレッシュになったから、頑張って1時間ぐらいすぐ取り戻してみせますよ。」俺は立ち上がり、ナオさんへ手を差し出して、立ち上がるように促す。ナオさんは俺の手を取って立ち上がり、「頼もしいねぇ。」と笑って応えてくれた。
少しだけ余韻を楽しむ“まったり”した時間を過ごしたが、二人ともシャワーを浴びた後は、戦闘モードに戻っていた。
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