第422話 メイフラワー合衆国艦隊の防空
「戦闘機隊より報告! 敵機に襲撃されました!」
「やはり、襲撃してきたか」
夜明け、コンスティテューションの艦橋に上がったモフェットは、報告を受けて悔やんだ。
予想通りに相手は攻撃してきたが、上げた戦闘機隊が奇襲されて仕舞った。
「全艦隊に警報! 皇国軍の空襲! 各艦は回避行動をせよ」
モフェットは自身の部隊だけでなく、環礁内の艦艇にも通報を出した。
「上空の戦闘機隊はどうなっている」
「最初の奇襲を受け、支離滅裂です。全力を尽くしていますが、敵機の侵入を阻止出来ません」
「艦隊への攻撃は避けられないか」
機体性能が違うのは承知している。
だが、それでも防ぎたかった。
無理だと分かっていても。
「無事でいてくれよ」
上空の戦闘機隊と、環礁の味方艦隊の無事をモフェットは祈った。
「敵機の襲撃か」
警報を聞いたリチャードソンはワシントンの艦橋に上がった。
「機銃掃射とロケット弾、それに小型爆弾程度では戦艦の装甲を貫くことは出来まい」
「しかし、戦艦の砲弾を改造した爆弾を開発したという情報が入っています」
参謀の一人がリチャードソンに自身の懸念を伝える。
「だが、上空から落とすだけだろう。命中率はどれくらいだ? 一パーセントくらいだろう。それに航空機が積み込めるのは一発、無理をしても二発だ」
見たところ大型の航空機は三〇機にも満たない数だ。
最大で六〇発、旋回が五回斉射を行う程度の数しか用意されていない。
その程度では戦艦一隻に一発命中させる事が出来るかどうか、といったところだ。
「戦況はどうか?」
「はい、我が方の戦闘機隊が追い散らされています」
「そうか」
モフェットが手塩に掛けて作り上げた航空隊の活躍、いやおい回れている姿を見てリチャードソンは肩を落とした。
「期待はしていなかったが、ここまでとは」
航空機の優劣はリチャードソンには分からないが相手より味方が劣っていることに落胆した。
少しでもモフェットを庇おうと思ったが、これでは無理だ。
やがて上空は皇国軍の航空機で埋まり、環礁に接近してくる。
「敵機接近!」
「狼狽えるな。航空機に戦艦を撃破することは出来ない」
戦艦が最強であると信じるリチャードソンは自信を持って言った。
「しかし、五月蠅いことに変わりはないな。対空砲、迎撃開始だ。敵機を撃墜せよ」
舷側に配備された対空砲が火を噴き、敵機を近寄らせまいと弾幕を張る。
現れた弾幕を前に、震煉は編隊を解いて降下していく。
「情けないな、あんなに取り乱して陣形を乱すとは」
バラバラに飛んでいく様を見てリチャードソンはせせら笑う。しかし、それも束の間だった。
九機ほどの機体が、水面スレスレまで降下し、突入してくる。
「低空から侵入するか。迎撃してやれ」
対空砲が水平となり狙うが、水面スレスレの機体は狙いにくい。
しかし、多数の機関銃を配備しており、接近すれば蜂の巣にするつもりだった。
だが、リチャードソンは接近する機体の異常に気がつく。
「うん? あの機体の上に載せているのは何だ?」
モフェットの報告では、皇国の新型爆撃機は複葉だ。
なのに機体の上に翼が、いや胴体があるように見える。
「まあいい。やって来たところで蜂の巣だ」
リチャードソンは、とるに足らないと思って捨て置いた。
だが、次の瞬間、震煉は予想外の動きをする。
機体の上にあった胴体が、分離して上昇した。
「分離しただと!」
二つに分かれた機体の内、上に乗っていた小型の機体は前進すると徐々に高度を下げて行く。しかし、海面近く、高度一メートル程度に降りると上昇し、再び降下してもまた上昇する事を繰り返した。
「なんだあの機体は」
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