第413話 ベルケ急降下爆撃隊
「飛ばせたのは、これだけか」
攻撃隊を指揮する昴は呟いた。
天城が被弾したことにより発着艦不能となり、残った三隻から発艦した各二四機、合計七二機の寿風がメイフラワー合衆国艦隊への攻撃隊だ。
かなり無理をして発艦させたが予想される敵の迎撃隊より少ないが、仕方の無いことだ。
「相原大佐、護衛は任せます。私は、制空隊と共に突っ込み、撃破します」
『了解した。突破口を作ってくれ!』
「任せてください! 制空隊全機! 我に続け!」
昴はそう言って、全速で敵艦隊へ突っ込んでいった。
「敵戦闘機発見!」
空戦の原則は敵を素早く見つけることだ。
昴の目は、遙か先の敵機を捉えていた。
寿風の性能を生かして急上昇し高度をとると、一挙に降下して、フライングバレルに襲いかかる。
昴達の方が少数であったがスピードを生かした一撃離脱戦術によりフライングバレルは翻弄される。
メイフラワー側の防空網に穴が空いた。
「今だ! 突撃するんだ!」
相原の援護の下、攻撃隊が突入していく。
「キチンと護衛しろよ相原」
「そっちこそ爆弾を無駄にするんじゃないぞベルケ」
攻撃隊を指揮するベルケに相原は無線で答えたる。
「しかし、いきなり空母に着艦させるなんて無茶が過ぎますね忠弥さんは」
苦笑しながらもベルケは、楽しそうに言う。
空母艦載機部隊の弱点、対艦攻撃能力が殆ど無いという欠点を忠弥は理解していた。
対艦攻撃装備、特に攻撃機と航空魚雷の開発が遅れており敵艦に打撃を与えられない事は分かっていた。
それでも攻撃方法は模索していた。
その一つが急降下爆撃による攻撃だった。
専用の急降下爆撃機は開発中だったが戦闘機でも爆弾を積めば十分に活用出来ると考えていた。
そのために実験部隊を編成していたが、まだ実戦で活躍出来るほどの能力も研究も進んでいなかった。
そこで忠弥が白羽の矢を立てたのがベルケ達だった。
彼らは元々、急降下爆撃を研究していた上に、既に実戦を経験している。
技量も十分なので活用しない手はなかった。
相原や昴は、先ほどまで敵対していたベルケの起用を反対した。
だが、忠弥の熱意、ベルケへの信頼が上回り反対しきれず押し通されてしまった。
既に作戦は始まっており、昴も相原も腹に一物はあっても文句は言わない。
全力で自分の役目を果たすだけだ。
残ったフライングバレルが、襲撃を仕掛けるが、相原が追い払い、敵艦への道を切り開く。
「行け! ベルケ!」
「分かっている!」
ベルケは敵空母を見つける自分の左側に収まるように旋回し観察する。
「全機! 手はず通り攻撃しろ!」
二四機いる爆撃隊はそれぞれ四機ずつ、六つの編隊に分かれて内四つが攻撃を開始した。
ベルケは上空で指揮と戦果確認、予備として残る。
それぞれの隊が目標へ向けて降下を始める。
「よし、第二小隊は空母を狙っているな」
エーペンシュタイン率いる第二小隊敵の重要戦力である空母を狙うように命じている。
「第三小隊は、もう一隻の空母へ、攻撃、第四小隊右側の航空巡洋艦、第五小隊は左側の航空巡洋艦だ。突撃」
上空から目標を見て予め伝えた通りに攻撃させる。
だが、戦場に予想外は付きものだ。
「! 第三小隊! それは空母じゃないぞ! 航空巡洋艦だ!」
目標識別を見誤り、航空巡洋艦に襲撃を仕掛けた。
見間違いは戦場でも起こりやすい、むしろ生死の境を綱渡りする緊張感の中だけに、余計に感じる事だろう。
先の大戦で活躍しているはずだが、洋上からの初めての攻撃には戸惑いの方が大きいのだろう。
「まあ、仕方ない」
起こったことは仕方ない。むしろ、このような事態に対応するのも指揮官の役目だ。
とりあえず部隊の爆撃の様子を見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます