第414話 急降下爆撃
「ウーデットは流石だな」
ベルケの部下で急降下爆撃の腕が確かな人間だ。初めての着艦に緊張していたが技量はあるのですぐに難なくこなせるようになった。
ウーデットは綺麗な降下角度を付けて敵空母へ向かっている。
後続機もウーデットに付いて行く。
急角度から放たれた爆弾は緩やかな放物線を描き、吸い込まれるように敵空母の飛行甲板に命中した。
「先ずは一隻」
目標の空母を撃破出来てベルケは満足した。
だが他の目標は良くない。
二つの編隊が航空巡洋艦の回避行動のため目標を外してしまい、一隻は飛行甲板に命中して発艦不能にしたが、もう一隻は艦前方に命中し、発艦機能に支障は無かった。
目標選定を誤った編隊は命中弾を得ることなく、退避していった。
「さて、どうするべきか」
ベルケともう一個小隊が残ったのは、打ち漏らした目標へ攻撃を仕掛ける予備としての役割だ。
撃破するべき優先順位を決める。
「第一小隊、我に続き、敵空母を撃破する。第六小隊は、健在な航空巡洋艦を狙え」
敵の主力である空母を撃破し、無力化する事を優先した。
航空機が二度と上がれないようにすることで制空権を確保する。
それが一番だ。
ベルケは健在な空母に向かい狙いを定める。
敵艦と翼の位置、敵艦が主翼の中央部分にかかるのを見てから降下角度を四五度と割り出してベルケは命じる。
「降下! 我に続け!」
フラップとエアブレーキを展開して速度が一定になるよう調整して狙いを定める。
ベルケがキャノピーの上に付いた鏡を見ると後方に三機が付いてくる。
一艦毎に一個小隊四機が襲撃する手はずだ。
ベルケの突入に合わせて後続が来る。
忠弥にしごかれ、選抜されただけに彼らの技量は素晴らしく、ベルケにピッタリと付いてきている。
特に最後尾の副長、江草というパイロットは技量が高く安定している。
「下手に外せないな」
ベルケは気合いを入れ直し敵空母に狙いを付ける。
照準器で敵の船体を捉えつつ、狙った位置から照準を上の方へ修正する。
急降下でも、爆弾は重力の影響で落下し、狙いより下にズレる。
投下前にそのズレの分だけ修正しておく。
敵艦が発砲してきた。
だが、皇国側に比べて対空砲火はまばらであり、狙いも甘い。
ベルケは気にせず敵艦へ突っ込んでいく。
高度計は二〇〇〇を切り一〇〇〇を切った。
皇国側が決めた爆撃高度だが、機体性能からしてまだ行ける。
高度八〇〇
敵艦は回避行動を始めたがもう遅い。
高度は六〇〇を切った。
「投下!」
最高のタイミングでベルケは投弾ボタンを押した。
爆弾が離れ、ベルケは操縦桿を目一杯引き、急上昇する。
風圧で水平尾翼が重いが、全身の力を使い機首を引き上げる。
引き上げなければ海面に激突だ。
濃い青の海が目の前に広がっていく。だが徐々に澄み切った青い空が視界の上の方に見えてきた。
徐々に操縦桿を戻し、急上昇しないよう注意しつつ海面すれすれを水平飛行する。
下手に上昇すると敵の対空砲の的になる。
攻撃し終わった敵機など放置するものだが、必死に追いかけるガンナーもいるので決して油断出来ない。
機体を水平に戻したところで、キャノピーの上の鏡を見て、命中箇所を確認する。
「不発か」
木片が空を飛んでいるところからして命中したが、爆発しなかった。
砲弾や爆弾によくある信管不良だ。
だが、命中させたことは確かだし、ベルケの腕前を証明するものだ。
しかし、爆発しなかったのが悔しい。
と思っていると、敵空母の反対側に水柱が上がった。
「二番機は外したか」
ベルケの後に続いて一直線に並んで突撃させた。
これは先頭の投弾状況、爆弾のコースを見て、後続が狙いを修正して命中率を上げるために使った攻撃法だ。
ベルケが外した時を考えて狙いを深く修正して投下したようだが、外したようだ。
三番機は逆に浅くし過ぎてしまい、船体の手前側に水柱が立ち上がる。
「やはり、命中は難しいか」
実験と練習を繰り広げ八割近い命中率を出していると言っていたが、実戦だとこんな者だろう。
自分の隊の戦果がないことに溜息を吐いた時、空母から火柱が上がった。
「四番機がやったか!」
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