第412話 多段空母の弱点 着艦
「放った攻撃隊の内、半数が撃墜されたか」
報告を聞いたモフェットは、しかめっ面をした。
手塩に育てた航空隊、それも着艦出来る精鋭が撃墜された。
航空隊立ち上げから関わってきた者も多く、少ない海軍航空隊で共に部隊を作り上げてきただけに上官、部下の関係以上の絆で結ばれていた。
彼らが失われたのは悲しい。
だが、悲嘆に暮れている暇はなかった。
「再度、攻撃隊を編成することは可能か」
「整備しなければ分かりません。現在は着艦中です」
「分かった。第三次攻撃隊の準備を。それと、上空援護の部隊も準備するんだ」
艦載機の数が減少してしまった以上、敵からの攻撃を受ける可能性が非常に高い。
モフェットは防御を固めると同時に、もう一度敵から制空権を奪うための攻撃隊の準備を始めた。
しかし、それ以前に着艦作業で非常に時間がかかってしまいました。
「着艦作業がどうして進まない。
「機体をエレベーターで下ろさなければなりませんので、時間がかかっています」
「着艦用の甲板が短すぎるか」
三段式甲板の弱点の一つが、着艦用の甲板が非常に短くなってしまうことだ。
実際、日本海軍の赤城は鳳翔よりも四倍近い大型の船体を持っていた。だが着艦用の上部甲板、一番上の甲板は鳳翔の倍にも満たない程度の広さしかなかった。
着艦作業では、後ろの半分を着艦エリアにして、機体を降ろし、前半分を降りてきた機体の待機場所にする。
もちろん、エレベーターで下の格納庫に直接運ぶ方が良い。
だが、エレベーターの昇降、初めての空母ためエレベーターのスピードが天城より遅かった。
ほかにもエレベーターに機体を乗せたり下ろしたりする時間がかかるため、次々降りてくる着艦機で飛行甲板に機体を置かざるをえない。
飛行甲板が空くまで、エレベーターで機体が降ろされるまで、上空待機する時間が長くなり、着艦作業は遅れ気味だ。
忠弥はこの欠点を知っていたため、初めから三段甲板などやらなかった。
天城型航空巡洋戦艦でも飛行甲板をY字型にしても、それぞれの端を誘導路で結んでいた。
反対側の飛行甲板へ移動させることを可能にして、先端部に飛行機が留まらないように、甲板がすぐに開けられるように工夫していた。
モフェットもメイフラワー合衆国海軍もコンスティテューションを運用していて気がついて改造を計画したが、その前に戦いが始まった。
事が起こっては手持ちの装備で何とかしなければならない。
モフェットは不完全な空母で戦いに臨むことになった。
「他の艦はどうだ?」
「飛行甲板が短くて収容作業に遅れが出ています」
「やはりそうか」
飛行甲板の全長が一〇〇メートル程度しかない随伴の航空巡洋艦も似たような弱点を持っていた。
隻数が多いので着艦出来る機数は多いが、手狭なために効率はやはり悪い。
「間もなく敵機がやってくる。準備が終わった機体から直ちに発艦させろ」
「了解」
閉鎖中の下段で整備し、中段で発艦させるの運用を行っていた。
発艦用の甲板と着艦用の甲板を分けて発着艦を同時に行えるが、絶対的な機数、発艦出来る機数と着艦出来る機数が少なすぎる。
これなら一枚甲板にして発艦と着艦の作業を時間で区切って行った方が全体的な効率が良い。
中々進まない作業にモフェットは苛立つ。
その時、緊急通信が入ってきた。
「先行する軽巡トレントより入電! 我が方へ接近する敵編隊を発見!」
「やはり来たか」
モフェットは、奥歯をかみしめる。
上空には燃料切れ寸前の航空隊と敵機が迫っている。
「これから飛ばせる機体と、今飛んでいる、いや上空援護が出来る機体の数は?」
「防空に使えるのは合計で六〇機ほどです」
搭載機の三分の一が攻撃に使える機数とされている。
二波におよぶ機体を出撃させ、さらに故障している機体を除いた数だった。
しかも、航空巡洋艦は着艦作業に専念しており、飛ばせる機体はない。
「出来るだけ着艦させろ。上空の援護機は直ちに敵編隊へ行け」
「了解」
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