第406話 飛行船の急所
「第一小隊! 僕が命中させた箇所を狙って撃つんだ」
忠弥は四機のロケット弾装備機を率いて敵飛行船へ向かって行く。
目標は一際大きい飛行船、双胴の空中空母だ。
忠弥は自らの機体を飛行船と同高度で飛ばし、船体の下部を狙う。
「発射!」
先頭を行く忠弥はロケット弾を放った。
命中すると僚機が、続けてロケット弾を発射。
日頃の訓練の成果を発揮し同じ箇所へ命中させる。
直後、命中箇所で爆発が起きた。
「よし、燃料タンクを破壊したな」
艦載機用あるいは空母用として大量のガソリンを搭載している。
可燃性の燃料を積み込んだ重たいタンクがありそうな箇所、船体の下側を狙って放った。
予想通りの場所に燃料タンクがありロケット弾で破壊された。
幾ら不燃性のヘリウムガスを充填していても、可燃性の液体、燃料までは不燃に出来ない。
激しい火災が起こり飛行船は炎に包まれる。
だが、飛行船の乗員は直ちに、ダメージコントロールに入り、燃料の投棄を行った。
破壊されたタンクとその周辺、飛行船の燃料の半数を投棄したお陰でどうにか火災は一時的に小さくなった。
しかし、忠弥の攻撃に効果ありと見た攻撃隊が真似をして次々と弱点に対してロケット弾を発射。
燃料だけでなく、弾薬庫にも直撃した。
危険物を保管するため最大限の防御を施していたが、空に浮かぶため軽量化せざるを得ず、最小限の防御しか施されていない。
ロケット弾は容易に防御を食い破り内部で炸裂。搭載した弾薬に引火して爆発した。
爆発の圧力は近くにあったキールを容易にへし折り、切断。
近隣の気嚢が破壊されたことで浮力を失ったこともあり、急激に力が掛かったため飛行船は中央部で折れてしまった。
かろうじて浮力の残った前部と後部の気嚢で浮いていたが、航行不能、戦闘不能なのは明らかだ。
「各隊! 攻撃開始だ! 船体の下部を狙え!」
忠弥の命令で続行する攻撃隊が続々と他の飛行船に対して攻撃を開始する。
ミッチェルは回避を命じるが、図体のデカい飛行船は機敏に動けない。
次々と放たれるロケット弾に串刺しにされた。
ミッチェルの乗る、シェナンドーは回避に成功したが、遅れた一隻が新たな犠牲となった。
「反転、撤退する」
もう一隻が炎に包まれたのを見てミッチェルは、すぐに命じた。
妥当な判断だった。
戦力が半減しては部隊としての行動は困難だ。
こうしてメイフラワー合衆国の空中空母は撤退していったが、数隻の空中巡洋艦が進撃を続けていた。
「一体何をするつもりだ」
一部の飛行船が進撃を続行する様子を見て忠弥は嫌な予感が漂った。
しかし、既にロケット弾を発射し終わっており、弾切れだ。
機銃を使おうに敵の防御火力の前に近づけず、遠くから見ていることしか出来なかった。
一方、皇国機動部隊はメイフラワー合衆国部隊が放った攻撃隊の襲撃を受けていた。
「敵機発見!」
忠弥の接触報告を受けてすぐに上空援護の機体を発艦させたお陰で、百機近い戦闘機が艦隊上空へ飛んでいた。
しかも、ただ数を上げただけではない。
「右、六十度の方角より接近中」
旗艦天城に搭載した試作のレーダーがメイフラワー合衆国の攻撃隊を捉えていた。
レーダーで捉えた情報は直ちに艦の奥深くに設けられた戦闘管制室――のちのCICに送られ、記録係が透明なアクリル板に水性蛍光ペンで位置を記し、古い情報を消していく。
ただ、彼らが記すのは鏡文字だ。
同じ方向から見ていては彼らの身体が邪魔となって指示板が見えない。
そこで、ガラス板の反対側から管制官が、正しい形の文字を見てそこから情勢を判断する。
管制官の前には視界を阻む者は何もなく、蛍光塗料で敵味方の位置が浮かび上がり、誘導を容易にしていた。
「各編隊。直ちに敵機へ向かうんだ」
管制官がレーダー情報と敵味方表示板で記された位置を見ながら誘導する。
「おい、第四中隊! 進路がずれているぞ! 右に進路を修正し、上昇しろ。そうだ。間もなく左下方に敵機が見えるはずだ。発見次第攻撃しろ」
途中進路を外れた味方戦闘機に指示を出し補正しつつほぼ全ての戦闘機をメイフラワー合衆国の攻撃隊に向かわせた。
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