第396話 レーダー警戒網
ベルケが襲撃を行った夜、夜明け前。
皇国空軍航空隊が待機する飛行場で、画面を注視している者達がいた。
「電探に反応あり!」
忠弥が持ち込んだ新型の電波探知機、通称電探、のちにレーダーと呼ばれる装置だった。
まだ試作品で大型のものしか作れなかったが、そのうちの一台を大至急空輸させて設置していた。
他国のため防空監視網など構築する事はできそうもない。
出来たとしても、ラテン的な気質のため、通報をしてくれない可能性が高い。
だから、自力で索敵する必要がある。
でないと再び飛行場が襲撃される恐れがある。
「敵機です」
「間違いないか?」
「間違いありません。現在、飛行中の航空機はいません。機数は推定で十数機。これだけの機体はありませんし。高度は五〇〇〇メートル。鳥の群れにしてはおかしいです」
味方機が飛んでいない、なのに反応がある。
簡単な計算だった。
「敵機らしき機影を確認」
「直ちに全力出撃だ! 全機離陸せよ!」
忠弥は命じた。
襲撃を予想して四二機の清風を待機させていたのだ。
駐機場で轟音を立てて清風のエンジンが始動し、一機、また一機と闇夜の中へ離陸していく。
「地上の管制誘導に従い各機所定の空域へ! 急げ! 敵機は待ってくれないぞ!」
空戦は時間の勝負だ。
滞空時間が短いこともあり、敵機の接近に合わせて、離陸させる。
予め上空待機させる手もあるが、やってくるまで上空で待機させていると燃料を消費するし乗員が疲れる。
しかも常に上空待機させるには上空に送る機体の最低三倍は必要になる。
数が限られた中で、三分の一しか上空に送り込めない、戦闘に参加されられないのでは意味がない。
だからこそ、早期警戒網、上空監視要員を配置したり聴音器でエンジン音を探ろうとする。
それらを構築するのは大変な上、気象条件、雲が多いと見つけづらい。
だが、レーダーさえ設置すれば見つけやすくなる。
勿論使用条件もあるし、簡単な装備の為、見つけるには限界がある。
それでも敵機を発見するには、迎撃に使うには十分だった。
「各機、編隊を崩すな。管制官の指示に従え。おい第二中隊の一機! 針路が違うぞ! 星と排気炎を間違うな! 機首を左へ向けろ!」
意外と、航空機はまっすぐに進めない。
コンパスや計器類の信頼性がまだ低いからだ。
そして視界が悪いため、星明かりと僚機のエンジンから漏れる排気炎を見間違えて進路を誤ることも多い。
しかし、レーダーで地上から監視すれば、針路がおかしい事に地上要員が気がつく。
その意味でもレーダーの開発を忠弥は優先していた。
「敵機、川の上空へ向かいます」
「第一中隊、南下中」
「第二中隊も南下中」
「第三中隊、発進中」
管制員がレーダーから送られてくる情報を元に味方機と敵機の位置を示す駒を移動させる。
その様子を見て忠弥は作戦を考える。
「各隊に告ぐ、敵機は河口を目印に襲撃を書けてくる可能性が高い。第一中隊、河口付近へ。第三中隊は飛行場上空で待機。第二中隊は河口と飛行場の中間で待機。第一中隊が先に仕掛けて、その後、第二中隊が襲撃。第三中隊はその後だ。攻撃が終わった中隊は上空へ戻り次の攻撃に備えろ」
手早く命令を下す。
各機は管制官の誘導に従い、所定の位置へ向かう。
まだ昏く視界が悪いが、レーダーを管制官の誘導により所定の位置へ向かう。
「第一中隊を河口の東側へ、向かわせろ。太陽の光で敵に見つかりにくいはずだ。第二中隊も同じように、第三は予備として敵編隊の上空一〇〇〇メートルに待機。敵機が下がったら合わせて下げろ」
細かい指示を出していると水平線が光り始めた時、第一中隊の相原が叫ぶ。
『敵編隊捕捉!』
夜明けと同時に敵機を発見出来た。
「攻撃を開始せよ。戦闘指揮は任せる」
『了解! 第一中隊続け!』
相原の部隊は喜々として突入していく。
優位な状況で戦闘に入れたため、歓声を上げている。
『敵機がばらけたが編隊を組んで突入!』
敵が散開したようだが、相原は冷静に部隊を纏めて攻撃する。
乱戦で変改を崩したら撃墜されるからだ。
「敵編隊、飛行場方面へ逃走しています。只今第二中隊の直下」
「まだ、攻撃を諦めないか」
予想以上の闘志に忠弥は驚く。
「第二中隊を突入させてくれ。第三中隊も、これ以上接近するようなら敵の進路の前に出すんだ」
「了解!」
管制官が指示を出す。
各中隊が、移動し攻撃を開始する。
それは丁度、敵編隊を南北から囲む形になった。
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