第395話 ラプラタ黎明奇襲攻撃
エーペンシュタインは早速幹部に声を掛け、会議室に集めた。
既にベルケは計画を立てており説明を始める。
「もう一度、敵の飛行場を攻撃する。一度、奇襲を受けているため敵は警戒を強めているだろう。そこで、敵が警戒しにくい早朝、夜明け頃に奇襲を掛ける」
ベルケの方針は見つかりにくい夜間に接近。
夜明けとともに飛行場上空に達し、目標を視認して攻撃を仕掛けるというものだ。
「夜明けの二時間前に出撃。見つからないよう高高度、高度四〇〇〇から五〇〇〇を進撃し、敵の基地上空へ到達。夜明けで太陽に照らされ、飛行場を視認次第、ウーデット率いる急降下爆撃隊は高高度から急降下爆撃で目標、格納庫や燃料タンクを破壊してくれ」
「了解しました」
先の戦争では戦闘機のパイロットだったが戦後、各国の航空機情報を収集する中、急降下爆撃の威力を目の当たりにして、急降下爆撃にのめりこんだ。
以後研究を続け、アルヘンティーナで実戦投入出来るまでに至った。
「エーペンシュタインは戦闘機隊で援護。敵の迎撃が予想される。だが、敵機が来なかった場合、飛行場で待機している航空機に機銃掃射を与えて離脱せよ」
「了解!」
ようやく戦闘機隊の出番となりエーペンシュタインは喜んでいた。
「作戦は今夜、日付が変わり次第、発動する。皆出撃準備を整えてくれ」
「了解!」
その日の夕方、各地の飛行場に分散していた航空部隊が、首都に一番近い野戦飛行場に集められた。
戦闘機は、グライダーにエンジンを載せて改造したが引込脚が付いた最新鋭の機体だ。
一方、急降下爆撃機も複葉機だが技術試験として全金属製で作られた機体でありいずれも高性能だ。
パイロットも民間人となっているが、前の戦争で実戦経験、それもエース級のパイロットばかりを揃えている。
夜間飛行も十分にこなせるだけの技量を持っている連中だ。
彼らは夕暮れ時、薄暗い中、集結予定の飛行場に着陸すると早速休憩を始める。
整備士達は出撃に備えて全機の整備にあたった。
そして、日付が変わった御前二時頃、パイロット達は起き出して、食事を取り準備を始める。
ブリーフィングで最終確認を行い、整備の終わった機体へ行き、機体を確認した後、報告し命令を受けた。
「作戦を実行する! 全機発動!」
ベルケの命令で、全機が一斉にエンジンを始動させる。
偽装の小屋がどけられ、滑走路を確保。
飛行場の管制員が安全を確認し離陸許可を与えた。
始めに爆弾を積んだ急降下爆撃機が発進する。
爆弾を積んでいるため、鈍足で遅い。
離陸して先行させる。
急降下爆撃機が全機離陸すると、戦闘機隊が離陸した。
スピードが速いこともあるが、燃料が少なく航続距離が短いため、目標上空での滞空時間を長くするため、後から向かう。
攻撃隊は上空で編隊を組み、高度を五〇〇〇まで上げると、進撃していく。
高度五〇〇〇メートルは地上からの視認が難しく、エンジン音も殆ど聞こえない。
進撃には最適な高度だとされていた。
発進に成功した奇襲は成功するとベルケは確信していた。
全員夜間飛行は慣れている。
僅かに灯る尾翼灯を目印に闇夜を進んでいくが、やがて目の前に光の線が現れる。
「夜が明けるな」
地平線から光が差した。
日の出がベルケ達を包み込む。
上空は高度がある分日の出が早い。
太陽光で光り輝く雲に照らされた地上を見る。
下方には大河があり、河口が見える。
飛行場の位置は、河口の近くだ。
現在位置を確認し襲撃コースへ向かおうとした時、東の空の上方に何かが見えた。
「! 全機散開! 上空より敵襲!」
ベルケの指示で全機が一斉に編隊を崩し、離脱していく。
そこへ銃火が通り過ぎ、敵機、清風一四機が降下して行く。
「各隊! 戦闘に入れ!」
見たところ少数のようだった。奇襲を警戒して上空に配置した戦闘機部隊に接触してしまったようだ。
ならば、少数の敵機ならたやすく撃退出来る。
とベルケは考えていた。
『隊長! 新手の敵機です! 更に一四機が南上空から来ています!』
『北の上空にも別の編隊を確認! 囲まれています』
「馬鹿な!」
駐在武官が報告した敵の全戦力だ。
それが待ち伏せしていたのが信じられない。
ベルケの作戦計画が漏れていたとしても、正しい位置まで分からないはず。
自分たちだって正確な位置が判明したのは夜明けと共に河口を確認したからだ。
なのにどうして、皇国は自分たちの位置を把握したのかベルケには理解出来なかった。
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