第389話 戦略的空中輸送能力

「空中移動歩兵連隊第四中隊! 下船せよ!」


 飛行場に降りたばかりの飛行船から完全武装の兵士が次々と降りてくる。

 その数一隻あたり二〇〇名。

 木星号クラスの大きさ、皇国空軍輸送飛行船なら、完全武装の一個中隊を積み込み運ぶ事は簡単なのだ。

 降り立った彼らはすぐさま飛行場の周辺に展開し防備に付く。

 その数総数三〇〇〇名。

 更に先の大戦で活躍した大鳳型も輸送に関わっている。

 こちらは搭載力を生かし物資輸送や、重量物輸送、大砲などの重火器輸送に関わっている。

 陸上装備だけではなく、皇国の最新鋭戦闘機清風五〇機を分解せずに輸送し下ろしている。

 下ろされた戦闘機は直ちに離陸し、飛行場周辺の警戒にあたっていた。


「いや、凄い」


 ペロンは次々降り立つ飛行船とそこから吐き出される兵士を見て驚いた。


「皇国にこれほどの力があるとは」

「空軍の成果です」


 忠弥は胸を張って答えた。

 降り立ったのは空軍が作り上げた空中移動歩兵だ。

 大戦で軍縮となり溢れた兵士を集めて作り出した部隊で、飛行船へ乗り込む訓練を行い、迅速に空輸して派遣先に展開する緊急展開部隊にした。

 陸軍との共同部隊だが、空軍の威力、戦略的輸送能力を見せつけるのに最適だった。

 千名単位の軍隊を数千キロ彼方へ三日間で送り込める能力など、皇国以外にない。

 空軍の威力を見せつけるお披露目としては十分な晴れ舞台での登場だ。


「ですが、人数が非常に少ないのでは」


 三〇〇〇名という数はありがたいが、飛行場を守るアルヘンティーナの部隊を合わせても四〇〇〇名とクーデター側一万名より少ない。

 何とか守れるが攻撃に出るのは無謀だ。

 しかし忠弥は気楽だった。


「大丈夫です。数日以内にこちらから攻撃に出ることが出来るだけの兵力が揃いますよ」




「まさか、こんなに早く皇国が介入するとは思わなかった」


 報告を受けたメイグスは焦り始める。

 三日ほどで三〇〇〇名を投入出来た。

 往復で六日かかる計算だから来週には更に三〇〇〇名。

 元から飛行場を守る部隊と併せて合計七〇〇〇名になって仕舞う。

 いや、その時には船で運ばれる部隊も来るかもしれない。

 これ以上、時間を掛けるわけにはいかない。


「すぐにクーデター部隊の全力を以て、飛行場を奪回するんです。ここ数日の内に撃滅しないと大変な事になる」

「分かった、可能な限り集めて明後日には攻撃を仕掛けよう」


 ビデラは請負早速準備を始める。

 命令を下した後、協力する警察部隊に首都の治安維持と制圧を任せ軍隊を飛行場へ移動させる。

 翌日には攻撃部隊一万名が飛行場周辺集結し、丸一日掛けて準備を整え翌々日には攻撃する予定だった。

 相手は四千名ほどだが、攻撃には三倍の兵力が必要であり、足りない。

 短期間で攻め落とすには慎重に計画を立てて迅速に攻撃を加える必要があった。

 そして攻撃開始の前夜、攻撃位置へクーデター側部隊が移動し待機していた。

 夜明けと共に攻撃が開始される予定だったが、夜明け直前、まだ真夜中の時間帯に大声が響いた。


「攻撃開始!」


 クーデター部隊が待機していた場所へ、忠弥側が攻撃を行った。

 完全な奇襲となり、攻撃を予定していた部隊はあっという間に潰走し敗走した。


「まさか向こうから攻撃を仕掛けてくるとは」


 ビデラは、増援を受けたとはいえ数的に劣勢でてっきり防備を固めているかと考え攻撃はないと思い込み、油断していた。

 部下達も同じで奇襲を許すことになった。


「だが、これで連中は防御が手薄になったはずだ。一箇所に部隊を集中させ、撃破すれば片が付く」


 だが、ビデラの期待とは裏腹に飛行場側の攻撃が激しくなっている。


「どういうことだ。連中の数が明らかに予想より多いぞ」


 疑念に思っていると部下が飛び込んで来て報告した。


「敵にはサンファン師団、メンドーサ師団、ラ・リオハ師団が合流しています」

「馬鹿な! 船は全てこちらで差し押させているぞ。大河を渡れるはずがない。見間違いだろう」

「いいえ、部隊章や軍旗を見て確認が取れました間違いありません」

「だとしてもどうやって渡ったんだ。渡ってきたという報告は聞いていないぞ」

「連中は飛行船を使ったようです。飛行船で渡ってきたようです」

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