第八部 皇帝の戦い
第326話 決戦前の演説
「これは帝国の存亡を賭けた決戦である!」
帝国軍大参謀本部のホールで参謀総長は大声で終結した幕僚達に向かって叫んだ。
マイクからスピーカーを通じて流れると共にラジオで帝国中、連合国にも放送されていた。
「帝国を滅ぼそうとする連合の前に屈してはならない! 連合に屈する事は帝国の崩壊である。連合は我らに対し領土の割譲、軍備の宣言を突き付けており到底飲むことは出来ない! 強欲なる連合はかつての小国のごとく、我が帝国を切り分け奪おうとしている。そのような事は断じて許されん! 今こそ帝国は一丸となって戦わなければならない!」
参謀総長の声は更にヒートアップする。
だが、同時に人々の不安をかき立てる。
既に一年以上も戦っているのに、戦争は終わらずに続いていた。
帝国は勝てるのだろうかと。
その声に応えるように参謀総長は言った。
「恐れるな! 我ら帝国は強力で無敵であるっ! 現に大公国を下し、東部戦線を勝利で終わらせた!」
事実だった。
東部戦線は帝国の連戦連勝が続きついに先日、大公国内で革命が勃発。政権を取った共産主義革命政権が連合国の反対を押し切り単独講和を帝国と締結。
大公国との戦争は終結した。
「今や消滅した東部戦線から大公国を下した精鋭が西武戦線へ続々と転戦しており、彼らが加われば勝利は確実である! この一戦に全てを賭けよ! 帝国の未来は諸君らの双肩にかかっている! 勝利を手にし、栄光を得よっ! ジークライヒ! マインライヒ・ユーバーアーレス」
『ジークライヒ! マインライヒ・ユーバーアーレス!』
帝国万歳、我が帝国に栄光あれ、の唱和で演説は終わった。
この演説を聞いた人々はラジオの前で同じように唱和し、戦意を高めた。
「来てしまったか」
その様子をしらけた気分で見ていた軍務大臣は呟いた。
そして、先ほどまで行われていた会議を思い出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます