第322話 ブンカー破壊
プラッツⅣの機銃掃射が行われ堀内の部隊に死傷者が出た。
だが集められた精鋭である彼らは混乱せず、すぐに周りの者が代わり、歩兵砲を操作した。
「隊長。戦闘機隊の数が少なくありませんか」
だがブンカーに突入しようとした隊員が上空にいる味方機の数が少ないことを不審に思って堀内に言う。
「気にするな! 我々は我々の任務を果たすんだ。ブンカーを破壊しなければ同盟国王国は通商路を破壊され陥落してしまう。彼らの為にも破棄するんだ。照準急げ」
「はいっ」
強い口調で堀内は言った。
既に無線機で龍飛の被弾、発着艦不能は聞いていた。
制空権が危ういことも理解している。
だが、ここまで来たらブンカーを破壊しなければ作戦は失敗だ。
短時間で破壊すれば脱出の機会はある。
「撃てっ!」
堀内の命令と共に歩兵砲から砲弾が放たれた。
狙いは誤らず蝶番に命中し扉を開いた。
「突入!」
堀内は手榴弾を投げ、爆発と同時に飛び出す。
部下達も突入。内部にいた帝国軍将兵が反撃しブンカー内で激しい銃撃が響き渡る。
しかし、一方的な攻撃だった。
堀内達の短機関銃と手榴弾が、帝国軍兵士を撃退していき短時間で制圧した。
「爆薬の設置急げ!」
堀内達は歩兵砲をブンカーの中へ持ち込み、太い柱に向かって狙いを付け発砲する。
着弾すると、深い着弾痕が出来上がり、そこへ工兵が持ってきた爆薬を仕掛けた。
「爆導索を繋げ! 一斉点火だ!」
各所に爆薬を仕掛けていく。そしてそれぞれの爆薬に爆導索を繋いで行き、同時に爆発するようにする。
同時に他の班にブンカー内の精密機械、魚雷調整器、エンジンシリンダー校正用の機器、発電機、クレーンなどを壊していく。
ブンカー全体を破壊する予定だが、失敗したり万が一そこだけ無事だったら目も当てられない。
念には念を入れて破壊する。
「爆薬設置完了!」
「爆破するぞ! 総員退避!」
堀内が命じると隊員達はブンカーから逃れて、外に向かった。
「点火!」
物陰に隠れると堀内が命じた。
部下がボタンを押すと、ブンカーの内部でくぐもった爆発音が響く。続いて卯から大量の土煙が活火山のように吹き出し、地面が揺れた。
しかしブンカーはそのままだった。
失敗か。
誰もがそう思った次の瞬間、ブンカーが中央部から崩れ始めた。
2t爆弾に耐える分厚いコンクリート製の天井を支えきれなくなった柱が潰れて、次回を始めた。
ブンカーは内側に向かって崩れて行き内部に停泊していた潜水艦と機材を巻き込んで崩れ去った。
「成功だ」
壊れたブンカーを見て堀内は小さく、だが力強く言い、部下達は喜びの声を上げた。
「任務完了! 撤収だ! 歩兵砲は捨てていく爆破処分!」
堀内は部下達に命じた。
作戦が終わった今、最早ブンカーに用はない。
直ちに離脱しなければならない。
残った爆薬で歩兵砲を破壊したあと、乗ってきた飛行艇に向かって走る。
だが、脱出が厳しいことは堀内にも分かっていた。
「敵機来襲!」
「伏せろ!」
敵の戦闘機が内達に向かって機銃掃射をする。
「大丈夫か!」
「な、なんとか」
部下が無事なのを見て堀内はホッとする。
「戦闘機隊の連中、何をしているんだ!」
敵機を止められない味方に向かって隊員の一人が空に向かって怒鳴り上げる。
「よさんか! 早く撤退しろ!」
部下を叱りつけ走らせるが、空を見て劣勢である事を堀内は主一知らされていた。
敵も奇襲の衝撃から立ち直って、反撃を始めた。
特に空の戦いは劣勢に陥りつつあった。
味方の戦闘機の数が明らかに足りないし、連携が酷くなっている。
疾鷹が多いが、互いへの支援が行われていない。
龍飛が発着艦不能になったため初風の数が少なくなっている。
発信機能を持つ無線機を標準装備しているのは初風だけだ。
他の機体へ指示を出せないため疾鷹のほうが連携が悪い。
徐々に連合軍側が不利になっていた。
「早く乗り込め!」
堀内は飛行艇に部下を乗り込ませる。
航空優勢が確保されている間に離水しないと脱出の機会を失う。
一応、水路沿いに海岸線まで行けば相原大佐の部隊と閉塞船の乗員を回収するためのボート部隊がいる。
しかし、海岸線までは十キロの道のりであり、通常の行軍でも二時間以上、装備を捨てて走っても一時間くらいは掛かるだろう。
しかも敵中で何時、敵と遭遇するか分からない。
そんな賭けはするべきではない。
「敵機!」
「伏せろ!」
乗り込んだ飛行艇に敵機が銃撃を加えた。
州に着弾の音と水柱が立ち上がる。
「大丈夫か!」
「一機やられました!」
水上機の一機が蜂の巣にされて飛べなくなった。
「他の機体に分散搭乗させろ」
爆薬と歩兵砲を捨てたので各機は人員を乗せる余裕が出来ている。
だが、これ以上飛行艇が破壊されると、全員の脱出は不可能だ。
「再び敵機来襲!」
隊員を残った機に分散させていると新たな敵機がやってきて堀内達を狙った。
再び銃撃音が鳴り響いた。
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