第313話 疾鷹改VSプラッツⅣ
「させるか!」
味方の疾鷹改が撃墜されそうになった時、赤松が追いつき、エーペンシュタインへ銃撃を加える。
さすがに後ろを取られたエーペンシュタインは離脱し、低空へ引き上げた。
赤松は追いかけたが飛行場の防空部隊が気が付き、赤松に向かって対空砲火を浴びせる。
「ちっ」
赤松は、銃撃から逃れるために上昇した。
「拙いな。統制がとれていない」
皇国側は機数が多くても、指示がなく、手近な敵機に攻撃を行っているだけだった。
いつもなら問題ないし、忠弥が無線機を使って指示をする。
だが重量の関係で疾鷹改は受信機だけで送信が出来ない。
適切な、指示を与えられる人間がいない。
「しかも新たな敵機かっ」
敵機を追いかけて集まったために、空域に穴がいてしまった。
敵の離陸を見逃してしまい、高度を上げつつある。
このままだと、頭を取られてしまう。
「お前ら! 付いてこい!」
赤松は周囲の味方を集めて上昇し迎えうとうとする。
だが、それに気が付いた帝国側も赤松達を迎え撃つべく、攻撃してくる。
「ちっ」
四機程が攻撃を仕掛けてきた。
赤松は簡単に避け、反撃しようとするが、新手がやってきて攻撃を仕掛けてくる。
「畜生! こいつら全く違うぞ!」
一機一機の練度も高い。少数の機体でも徹底した一撃離脱で機先を制して赤松達の動きを封じ主導権を握っている。
その上、連携が凄い。
赤松達が反撃しようとしたら別のチームが攻撃してくる。
常に回避を強いられ赤松達は反撃できない。
しかも周りの帝国軍機の動きが良くなっている。
「何でこんなに動ける」
「ガーランド、四機率いて突入せよ。リヒトホーフェン、味方を率いて上空へ戻れ。カムフーバー、いつでも突っ込めるように右前方へで待機だ」
赤い専用機に乗って飛び立ったベルケは味方に指示を出し続けていた。
ようやく完成した無線機の試作品を搭載しており、味方へ指示を出せる。
ベルケからの一方的な指示のみの上に、至近距離でしか交信出来ない。
だが、十分だった。
手信号で話をするより遠くからしかも音声で伝えられるので詳細な指示が可能。
それにベルケの機体が赤く塗られているため、青い空では非常に目立つ。
帝国軍機がすぐにベルケの元へ駆けつけ指示を受けるようにしていたため、ベルケの元には常に豊富な予備兵力、すぐに皇国軍に襲い掛かる事が出来る機体が手元にいた。
しかも、ベルケは空中指揮官として優秀で、的確に要所要所へ戦闘機を派遣していた。
だが、ベルケの赤い機体は戦場で目立っていた。
敵である皇国空軍の機体が襲い掛かってきた。
「!」
ベルケはすぐに気が付き、機体を翻して迎え撃つ。
銃撃を浴びた疾鷹改は、攻撃を受けて撃墜された。
戦闘機パイロットとしても優秀な上、周囲を見張っているため状況把握が優れており、接近してもすぐに返り討ちにしている。
「敵機を基地の上から掃討しろ!」
ベルケの命令に帝国軍旗は勢いを取り戻しつつあった。
奇襲を受けたが、周辺の飛行場から次々と戦闘機が上がり、制空権を取り戻しつつあった。
「さすがプラッツⅣだ」
機体の動きがよく思い通りに動いてくれる。味方も敵の疾鷹改を撃破している。
しかしそれはベルケの周りの機体だけだ。
残りのプラッツⅣは動きが鈍い
「あまり、上手くないか」
大半が機種転換訓練の為に訪れていたこともあり、操るパイロットの練度がイマイチだ。
機体性能は上がっているが生かし切れていない。
それに指揮官クラスはともかく各機の経験が不足しているのか、単機での判断力がイマイチだ。
指揮官が百戦錬磨で、編隊を見事に導いているおかげで何とか戦えている。
だが、勝ちきれない。
一方皇国軍は、最初こそ乱れていたが、練度が高いのか、孤立しても手近な味方と合流し反撃している。
「基礎が出来ているか」
ベルケは皇国空軍の層の厚さに感嘆した。
指揮統率は劣っているが、パイロット一人一人の練度は高い。
封鎖で燃料を大量輸入できない帝国は、割り当てられているガソリンを細々と使うしかない。
制空権のために前線で大量使用する必要があり、訓練用、新たなパイロットを教育するための燃料を確保する事が難しい。
本来なら二百時間ほど訓練してから新米パイロットを前線に投入したいのだが、燃料不足で数十時間に短縮せざるをえない。
そのため、練度が少し落ちる。
かくして帝国軍航空隊は一部の熟練パイロット、幾多もの激戦を生き残った凄腕の連中と飛ぶのがやっとの新米パイロットで構成されてしまった。
一方の皇国空軍は海外から潤沢に石油を輸入できるため、新米でも十分な訓練が行われ、帝国の熟練パイロットには敵わないが、帝国の新米パイロットより遙かに動きが良い。
数で劣勢になったら終わりだ。
「ですが、艦載機など負けませんし数でも上です」
空中空母搭載機が飛行船に搭載するという無茶――飛行船の積載量に納めるため機体のサイズ、強度などで無理しているのに対しそういうことが不要な陸上機は、制限が無く最大限に性能を発揮できる。
しかも搭載機数が制限される空母より配備できる機体も多いし、後方から増援を求めることも出来る。
「やっつけますよ」
ベルケは意気込んでいたが、すぐに絶望を見せつけられた。
疾鷹改とは明らかに違う、シルエットを持った機体が、襲来したのだ。
しかも、ベルケ達の乗るプラッツⅣに匹敵する大きさを持つ機体だ。
飛行船に乗せられるような大きさではなかった。
大鳳クラスなら乗せられるが、搭載機数を考えてもあり得ない。
そして、その機体は鮮烈な青い塗装で塗られていた。
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