第312話 ブルッヘ襲撃作戦開始

「全機発進だ!」


 大鳳の甲板で疾鷹改に乗った赤松大尉は、命じた。

 大鳳の二八機の戦闘機隊と同型艦の祥鳳から同数の戦闘機隊が出撃する。

 他にも飛天級の空中空母が四隻いて彼らからも戦闘機隊が発進する。

 目的はブルッヘ上空の制圧だ。

 ブルッヘ襲撃を決意した忠弥は動員可能な全戦力を投入する事にした。

 勿論手持ちだけでは足りないので、王国からも戦力を借りている。

 王国の予算で皇国で建造した飛天級クラスの空中空母二隻で空中空母部隊周辺の上空警戒にあたらせている。

 他にも目的があるが彼らの出番は後だ。

 今は赤松大尉率いる制空隊がブルッヘ上空を制圧できるかどうかにかかっていた。

 夜がようやく明けようとする頃、まだ周囲が暗闇の中、母艦を出撃し、目標へ一直線に向かう。

 速度を落として後続が編隊を組めるようにするが、黎明時に奇襲したいので、旋回せず集合しないで飛びながら編隊を組ませ真っ直ぐ、目標へ向かう。

 選抜した精鋭メンバーの技量と大鳳の発艦能力のおかげで五〇機以上の編隊がブルッヘ上空に現れた。

 数の力で敵を圧倒して制空権を確保する。

 そのためにありったけの空中空母を投入したのだ。


「攻撃開始!」


 飛び立ったばかりのプラッツⅣの一四機編隊は直ちに迎撃に向かう。

 しかし、地上から飛び立ったばかりで、彼らは低空飛行なのに対して、赤松達は上空の飛行船から飛び立ったため高い位置にいて優位だった。


「貰った!」


 赤松は早速自分の手下の四機を率いてプラッツⅣに襲い掛かる。

 いくら最新鋭機であっても高所から襲撃されたら逃げるしかなかった。


「逃すか!」


 不用意に腹を見せたプラッツⅣに赤松は銃撃を加え撃墜した。

 僚機の一機も敵機を一機撃墜してスコアに加える。

 しかし、敵もやられぱなしではなかった。

 最新鋭機だけあってすぐに立て直し赤松を追撃しようとした。

 だが、上空から新たな疾鷹界の編隊が襲撃してきたため、逃げるしかなかった。


「良いぞ! その調子だ!」


 最初に少数の機体で斬り込み、編隊を乱したあと、数の優位を生かして各個撃破。

 赤松の作戦が成功した。


「って、おい! 何、全機で追いかける!」


 だが、少数の戦闘機を見て撃墜スコアを稼げると考えた疾鷹改の群れは一二機のプラッツⅣに殺到した。

 二機で一機を追い回せば十分なところを四〇機近い味方が追い回している。


「そんなにスコアが欲しいか」


 撃墜数が五機以上でエースの称号を与え顕彰する制度を皇国空軍は採用している。

 出来たばかりの空軍は認知度を上げるため、派手に宣伝している。

 空軍内部にも戦闘機操縦者の技量向上という目的があり、一定の成果を上げている。

 だが、デメリットとして戦闘機への偏重が激しく他の支援組織への軽視がある。

 そして空戦の時、個人のスコアを求めて猪突猛進する戦闘機パイロットが出てくる。

 このときは最悪の形で出ていた。


「戻れ! 上空へ戻って味方を援護しろ!」


 赤松は手近な機体を集めて上昇する。だが、遅かった。


「逃がさないぞ!」


 空中空母からアルバトロス戦闘機で乗り込んできたエーペンシュタインが赤松に襲い掛かる。

 高高度迎撃用の他に、通常の単座型も八機搭載しており、最低限の編隊による空戦は可能だ。


「くっ」


 頭を抑えられた赤松は回避する。

 エーペンシュタインは避けられても気にはしない、織り込み済みだった。

 目的は、下で戦闘中の疾鷹改の群れだ。


「しまった!」


 赤松が気が付いた時にはもう遅かった。

 エーペンシュタインは、味方一機を追いかけている疾鷹改四機を見つけ、銃撃した。

 警戒が疎かになっていたため、後方の二機が重なった瞬間に銃撃を加え落とした。

 撃墜に夢中で味方が撃墜されたことに気が付いていない、前の二機の背後にエーペンシュタインは近づき、銃撃を加える。

 数発撃ち込んだだけで機体はガソリンタンクを打ち抜いたのか、火達磨になって落ちていった。

 一機撃墜し、エーペンシュタインは更にもう一機、疾鷹を撃墜しようとした。


 

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