第294話 空中接触
「空中空母上空を制圧する。全機突撃!」
一隻しか残っていないカルタゴニアを撃破するため、忠弥はロケット弾を装備していない戦闘機隊一四機を全て制空隊としてカルタゴニアに向けて放った。
カルタゴニアの上空を完全に掌握し、攻撃隊が易々と攻撃できるようにするためだ。
一隻撃墜され残りカルタゴニア一隻となったベルケが迎撃に出せる機体は一四機のみ。
数では互角だ。
そのためベルケは、全ての機体を忠弥が放った戦闘機隊に対応する羽目になった。
激しい空中戦が繰り広げられるが、撃墜された機体はいない。
後続の攻撃隊を狙おうとして離脱しようとすると、忠弥の制空隊に食いつかれる。反撃すると他の機体に狙われる。
その繰り返しだった。
撃墜される、撃墜した機体は双方共に出ていない。
だが、ベルケ達帝国軍は空戦域から抜け出せず、忠弥が放った攻撃隊へ向かうことが出来ない
「くそっ、敵機が!」
忠弥の放った攻撃隊一二機がカルタゴニアに向かって迫ってきた。
ベルケ達は空中戦から抜け出せず、カルタゴニアに向かうところを、忠弥達から逃げ回りながら、見送るしかなった。
だが、次の瞬間、攻撃隊に火の手が上がった。
「なにっ!」
忠弥のみならずベルケも驚いた。
新たなアルバトロス戦闘機が攻撃隊を襲撃していた。
たった数機のアルバトロス戦闘機だったが、完全な奇襲となり、二機の疾鷹改を仕留めた。
「ロストクか!」
新たなアルバトロスが現れた先、雲の間から新たな飛行船が見えた。
ベルケからの連絡を受け、合流を急いでいた帝国空中空母ロストクが駆けつけ、放った戦闘機隊がカルタゴニアを狙っていた攻撃隊を攻撃したのだ。
「索敵機が見落としたのか」
新たな空中空母に忠弥は驚く。
索敵機が手抜きをしたと思ったが、事実は違う。後に分かったことだが、索敵機はキチンと飛んでいた。
だが、直後にロストクが帰投する索敵機の後を付けるように航行していたのだ。
しかも艦船と違い飛行船は三倍近い一〇〇キロの速力で飛行できる。
飛行機よりも遅いが、戦場へ乱入するには十分な速力だ。
航空戦の歴史に詳しく空母同士の戦いの記録も読んでいた忠弥だったが、海上の空母と空中の空母の速力差を考慮しておらず完全な奇襲される形となった。
「拙い!」
敵の空母は一隻だけと考えていた忠弥は慌てて機首を翻し、味方の攻撃隊を救うべく、空戦から離脱した。
「させません!」
だがベルケも決して諦めない。
自分の赤い機体を操り、忠弥の青い機体を狙う。
「くっ」
ベルケの突進に忠弥は慌てて回避する。
回避して安全を確保すると反撃しようとする。
だがベルケも腕を上げており、簡単には忠弥の後ろを取らせない。
「こなくそ!」
忠弥はベルケの攻撃を防御するので精一杯だった。紅いベルケの機体の動きに注目し一挙手一投足に注意を向ける。
それがいけなかった。
「なっ」
突如、新たなアルバトロス戦闘機がベルケを援護するべく忠弥の目の前に現れた。
まだ乗っていたパイロットは新入りのレベルで戦闘機動も拙い。だが無我夢中で忠弥に接近しビギナーズラックで至近距離まで接近した。
そして、アルバトロスのパイロットは上官から言われたとおり体当たりするつもりで接近して撃て、を生真面目に実行した。
寸前で忠弥が左旋回して避けたが、躱しきれず接触。
アルバトロスは下翼を失うのと引き換えに、忠弥の右翼三分の一をもぎ取っていった。
「忠弥!」
「忠弥さん!」
翼の一部を失ってバランスを崩し、回転しながら落下していく青い忠弥の機体を見て昴は勿論、ベルケも叫んだ。
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