第168話 滞空時間が長い疾鷹
ベルケ達攻撃隊は忠弥の率いる飛行船三隻を発見した。
収容に備えているのか、飛行船の真下で併走している飛行機が四機ほど見える。
そのうちの二機が発着艦用アームに向かっている。
「勝った」
着艦態勢に入っているため暫くは動けないだろうし、攻撃隊を収容したため艦内に航空機が満載のはず。
周りを見る。予想通り、周辺に戦闘機の気配はない。
「攻撃準備!」
ベルケはすぐさま編隊に合図を送り上昇。
飛行船の上空へ出て行き攻撃の準備を始めた。
だが、そこへ上昇してくる戦闘機があった。
乗っているパイロットの顔を見てベルケは驚いた。
「忠弥さん! もらったああっ」
空母への着艦は下手な奴が着艦装置を壊したとき、残りの着艦待機中の飛行機が落ちないように、上手い奴から着艦させるようにしている。
ベルケも、試験中に誤って装置に接触し破壊してしまい、着艦に支障を来した事例から同じルールを採用している。
なのに忠弥は外で飛んでいた。
すでに補給を完了して出てきたのか。いや、他の機体の収容状況を考えても早すぎる。
「ずっと空を飛んで待ち構えていたのか」
攻撃終了後、ベルケの攻撃を予測して空中で待機していたのか。
「なら、もう燃料が尽きますね」
ベルケは躊躇無く攻撃を始めた。
いくら忠弥でも燃料切れ寸前の機体で十分に活躍は出来ない。
燃料が切れれば、墜落しかない。
気にせずベルケは爆弾を飛天に落とそうとした。
だが、忠弥は黒煙が出るほどスロットルを全開にして急上昇しベルケへ近づく。
「なっ」
燃費を気にしない急激な機動にベルケは驚いた。
激しい燃料消費であっという間に乏しい燃料が尽きてしまうはずなのに。
「くっ」
たまらずベルケは回避運動を行った。
爆弾を搭載していたが、腕で何とか回避する。
しかしベルケほど腕がなかったもう一機は、ダメだった。
爆弾に振り回され、動きが鈍くなっており、忠弥の攻撃を受けて撃墜された。
「畜生!」
ベルケはなおも攻撃を続行した。しかし、忠弥は加速して執拗に追いかけてくる。
エーペンシュタインが援護しようとするが、燃料を気にしているのか動きに精彩を欠いている。
さらに新たな機体がやってきた。
「ダメか」
攻撃の機会を失ったと判断したベルケは爆弾を投棄して、離脱を命じた。
そのままカルタゴニアへ向かって離脱していく。
だが、忠弥はなおも追撃の手を緩めなかった。
「何故燃料が尽きないのだ! 忠弥さんの機体は無尽蔵なのか! あの機体は化け物なのか!」
たまらずベルケは叫ぶ。
忠弥の追撃をかわしつつ、燃料計とにらめっこしつつ、カルタゴニアへ向かう。
「味方か」
途中で味方のアルバトロス戦闘機四機が見えた。
だが半数は爆弾を搭載していた。
「投棄して離脱せよ」
ベルケが指示すると、爆弾を搭載していた機体は爆弾を投下した。
だが、燃料に余裕があるのか、ベルケを援護するために忠弥に向かっていった。
「よせ! 危険だ!」
忠弥はためらいなく向かってきた戦闘機を迎え撃ち、返り討ちにした。
エンジンを全力発揮し加速を生かした動きであっという間に二機を撃墜していった。
さすがに敵わないとみて離脱に入った。
カルタゴニアに到着すると、再出撃の準備を整えた二機が出てきてさすがに数が不利だと判断したのか忠弥は離脱していった。
「直ちに離脱する」
カルタゴニアに着艦したベルケは直ちに命じた。
予想以上の性能を見せた疾鷹を相手にするのは危険だ。
想像以上に燃料消費が少ないか、燃料搭載量が多い。
遠距離攻撃では不利だ。
敵を引きつけるため、徹底的に生存し攻撃を続けるのがカルタゴニアの任務であり使命のため、生き残るため、離脱させた。
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