第167話 空中機動戦

「航空機接近!」


 カルタゴニアのブリッジに見張り員の報告が入った。

 味方以外に飛んでいる機体は無いはずなので特に警戒してはいなかった。

 それより補給用飛行船との合流予定が、補給用飛行船が撃破されたことによって無くなり、食料や水、航空機の燃料が制限される事の方が重大だった。

 どうやってやりくりしようか、と全体の指揮官として考えていた。

 だが、ベルケはすぐに見つけた機体の形状が違うことに気が付いた。


「敵機だ!」


 アルバトロスとは違う形、敵機と認識して叫んだ。


「直ちに警戒機を発進させろ! 上空援護機を出すんだ!」


 命令を下すとベルケも格納庫に向かった。

 機体に乗り込むと即座にエンジンを点火させアームに機体を取り付けると下方へ伸びて行き、切り離された。

 発艦直後、遠くから八機の編隊が飛行船に迫っているのを発見した。


「カルタゴニアを守れ!」


 ベルケは戦闘機を駆って飛行機の集団――疾鷹八機からなる編隊に向かう。

 四機ずつの編隊で後方の四機は予想通り、ロケット弾を装備している。

 カルタゴニアを攻撃しようという意図は見え見えだった。

 ベルケは立ち塞がるように、連合軍航空機の前に向かう。

 無理矢理、進路を変更させたが、機数で劣勢のため、不利な状況に追い込まれる。


「機数が足りない」


 カルタゴニア級は空中発進が可能になったとはいえ新たに取り付けたので 一機ずつしか発進もしくは着艦させることしか出来ない。

 一方、忠弥達は二機ずつ発進させる事が出来た。

 発進速度の差が、上空に送り出せる機数の差になりベルケ達は劣勢になった。


「それでも守り切る!」


 ベルケはアルバトロス戦闘機を操り、攻撃機の進路を妨害する。

 しかし、忠弥も護衛機として飛び回り、ベルケを抑える。


「くっ、さすが忠弥さん。見事な機動です」


 度々後ろを取られてしまい、回避するだけで精一杯だ。

 空中発進を可能とするためにフックを後付けしたため抵抗が増して速度が低下している。

 初めからフックを装着し、収納することも考えている疾鷹に比べてベルケのアルバトロスは不利だった。

 空戦に巻き込まれて攻撃機の進出を許してしまった。


「しまった!」


 カルタゴニアへ向けて攻撃機が向かっていく。カルタゴニアから対空砲火が上げられるがそれを縫うように機体を滑らせ、接近し射程に捕らえた。


「うおおおっっっ」


 だが発車直前、緊急発艦したエーペンシュタインの戦闘機が横合いから飛び込み銃撃する。

 突然の横合いからの攻撃に攻撃機はタイミングがズレてロケット弾を発射。

 照準のズレたロケット弾は、カルタゴニアの下を通って逸れていった。


「助かった……」


 カルタゴニアが無事なのを見てベルケは安心した。

 忠弥は攻撃が失敗したのを確認すると、すぐに機体を引き返させ、戻っていった。


「すぐに追いかけろ!」


 ベルケはエーペンシュタインに命じて追わせると、自分はカルタゴニアへ引き返した。

 そして戦闘機を出して空になったアームへ無理矢理着艦し、収容させると叫んだ。


「予備の機体に爆弾を搭載しろ!」

「何故です」


 突然の命令に整備員は戸惑った。


「今がチャンスだ。連合軍の空中空母を攻撃できる。攻撃機を発進させて今収容しているから上空援護機は居ないはず! 再発進には燃料の給油が必要だから暫くかかる。今攻撃すれば勝てる」

「分かりました。ですが二機しかありませんが」

「構わない! 一発命中させれば俺たちの勝ちだ! 二機もあれば十分だ!」


 一機だけだとしてもベルケ自ら向かうつもりだった。

 二機もあれば攻撃は成功したも同然だ。

 直ちに爆弾が搭載されると、ベルケはすぐに発進していった。

 途中、エーペンシュタインの戦闘機が引き返してきて、敵飛行船までの案内役を買ってくれた。

 エーペンシュタインの後に続いて向かう。


「見えた」


 ベルケの前に忠弥が率いる飛天型飛行船が見えてきた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る