第166話 忠弥の反撃
数日後忠弥の反撃はハイデルベルク帝国領東カルタゴニアで始まった。
帝国植民地軍は、飛行場を確保し、連合軍との戦いに備えていた。
しかし、夜明けと共に、航空機による奇襲攻撃を受けた。
十四機の攻撃だったが、連合軍の基地の方向と逆方向から接近してきたため警戒がおろそかで奇襲を許した。
連合軍への攻撃に備えて出撃準備中だった帝国のアルバトロス戦闘機は、機銃掃射と爆弾投下を受けて、全滅した。
さらに、滑走路脇に隠匿していた物資備蓄場所を攻撃された。
大量のガソリン、弾薬を備蓄していたこともあり大爆発を起こし甚大な被害が出る。
それ以上に問題だったのは、航空機を失い備蓄も無くなったことだった。
予備の航空機が隠してあったが、燃料弾薬を失った現状では有効な攻撃は不可能だった。
飛行船所属航空部隊の攻撃は成功した。
予め偵察を行い、基地運営の観点から備蓄倉庫の位置を推測、的確な攻撃を仕掛けたのだ。
その後は連合軍の基地航空部隊が帝国軍への攻撃を行い完全に行動を封じた。
続いて行動を起こしたのは、西領だった。
派遣された昴率いる越天の航空隊は西領の植民地軍へ同様の攻撃を行った。
ここは最大の成果を上げた。
偶然にも帝国の補給用飛行船が着陸し物資を下ろしている最中だったのだ。
昴はすぐさま目標を変更、飛行船に爆弾を落とし炎上させた。
周囲が明るくなると、隠してあった備蓄所や飛行機も見つかり攻撃を続行。
行動不能にした。
更に周辺を哨戒し、接近中の補給用飛行船を発見。これを攻撃し撃墜した。
「手早いですね忠弥さん」
カルタゴニア大陸南西の大洋上空を飛行中、各地からもたらされる被害報告を受け取ったベルケは意気消沈した。
このところ反撃が成功していい気になっていたようだ。
優勢な敵にゲリラ攻撃を仕掛けていたつもりだったが、いつの間にか優勢になり傲慢になり狙われる立場になってしまったことに気が付いていなかった。
空中発進が可能となったことで部下を分散させて警戒の薄い連合軍基地への奇襲攻撃を行わせている。
いずれも成功させ、現状で損害は無かった。
「痛いところを突いてきましたね」
空中空母となったカルタゴニア級の損害は無かったが、補給用の飛行船が二隻も撃墜されたのは痛かった。
カルタゴニア級は航空機を運用できるが、元々全力出撃三回分しか搭載機への補給物資がない。
空中発進できるようにするためのスペースと重量の余裕を確保するため燃料タンクの一部を外したため、更に少なくなっている。
カルタゴニア級も航行に大量のガソリンを必要としているため、補給用飛行船からの燃料補給が頻繁に必要だった。
補給用飛行船は本国からの確実な輸送手段でもあり、それを二隻も失うのは痛い。
「隊長、哨戒機から商船を発見したとの報告が入りました」
部下が報告してきた。
現在ベルケはカルタゴニア大陸南西の洋上に出て通商破壊支援、航空機を飛ばして商船を探し出し、味方の通商破壊簡易しらせる役目を負っている。
「味方艦に知らせるんだ。拿捕して捕らえろ」
「商船から飛行機との接触報告が入りました!」
大洋上を航行していた飛天のブリッジに通信員の報告が入る。
「敵電波を受信しました!」
更に続けて飛天の通信員が報告し直ちに方位を知らせる。
地上の施設からも電波情報が入り、地図上で方位を記入し直線を記入し三角で囲まれた海域が出来る。
商船が接触した海域に近かった。
「ベルケの居る場所はここだね」
通商破壊艦と連携して襲撃している飛行船がいる事は把握していた。
相互に連絡を取り合っていることを利用して電波を受信、発信位置を特定して急行することにした。
「索敵機発進用意! 扇状に広げて見つけ出すんだ」
推定空域に近づくと索敵機を六機出した。
飛行船を中心に少しずつ進路を変えて遠くへ飛び去り、扇のように広がって広範囲を索敵してくれる。
「報告! 三号機が敵機と接触しました」
報告に忠弥は心を躍らせた。
自分たち以外にこの空域に居るのはベルケのみだ。
「攻撃隊、発進準備!」
見つけるのは近いと確信し命じた。
そして待ちに待った朗報が入ってきた。
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