第3話 天使(オタク)ラーメンを食べる
「今日は日曜日だし、お母さんたちは夜まで帰ってこないよ。お昼ごはんどうしよう?」
僕事、志場智樹は悩んでいた。
「今日は学校無いの?」
リサはベットに寝転んでサンデーを読みながら聞いてくる。だらけてるなぁ。
「日曜日だよ。他の人は部活で学校に行ってるけど、僕は部活してないから行かなくていいの」
「ふーーん」
リサは興味なさそうに答える。僕は考えある提案をリサに言った。
「昼ご飯なんだけど、ユニーのフードコートにラーメンを食べに行かない?」
「ラーメンって何?」
「暖かいスープの中に麺が入ってて、その上にネギやチャーシューがのってる食べ物だよ」
リサは僕の言ったものを想像して、ある一つの物にたどり着く。
「それって、オバケのQ太郎に出てくるラーメン大好き小池さんが食べてるやつ?」
「何でそんな古い作品を。そうだよ。小池さんが食べてる、あれ」
「おぉ。あれか。小池さん、いつもおいしそうに食べてるもんね」
リサは嬉しそうだった。
リサの了承の得た事なので近くのドンキのフードコート行く事にした。フードコートのお昼時、利用する家族連れ、カップルでいっぱいだったが席を確保することは出来た。僕たちはスガキヤのラーメンセットの食券を買い店の人に渡し、ブザーを貰う。このブザーが鳴ると注文の物が出来た合図になる。
僕たちは確保した席に戻り、ブザーが鳴るのを待った。
10分後、「ビィィィィィ」
僕たちのブザーが鳴る。料理が出来た合図。僕たちはお店に向かい料理を貰いに行く事に。リサはわくわくしていた。お店に着き僕たちは店員から料理を受け取る。
「おぉ。これがラーメン。マンガで見たのと一緒」
リサは興奮していた。そこに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ、友樹じゃん」
「あぁ、飯田か。ここで何してるの?」
「見て分からないか?バイトだよ。うちの学校はバイトに寛容だからな」
「そっか。凄いね」
確かに飯田の姿はお店の人と同じ格好していた。
「何だ、今日はリサさんと来てるのか?リサさんお疲れ様です」
飯田はリサに一礼していた。
「別に疲れて無いよ。それよりラーメン、食べよう」
とリサはあっけらかんに返す。飯田はリサの言葉に少し悲しげだった。
「飯田。じゃぁ、ごめん。ラーメン食べるわ」
「あぁ、そうか」
僕たちは飯田を後にして、自分たちの席に戻り、リサはラーメンを一口食べる。
「初めて食べたけど、スガキヤのラーメンって、美味しいね」
リサは意外に喜んで食べていた。僕も同じく、久しぶりのスガキヤのラーメンを
すする。この魚粉のスープがあっさり味で自分的には好きなラーメンだ。
そんなこんなで、僕たち二人がラーメンを食べ終わると4人の人物が近づいてきて、後ろから声をかけられた。
「あのぉ、すいません」
「はい?」と僕とリサが振り向く。
「ラーメンお好きですか?」
いきなりの質問、これは変な勧誘の流れに違いない。やだなぁと思っていると相手が名刺を渡してきた。ひょろっとした髪の毛ボサボサの恐らく30歳前半であろう男の人。名刺にはグルメルポライターの針金次郎と書いてあった。
「これ、本名ですか?」
「本名ですよ」
僕は名前と顔を交互にまじまじと見てしまった。
「変な名前だね」とリサは言う。
「よく言われます」と針金さんは笑顔で答えてきた。
「・・・と本題からそれてしまいましたが、ラーメンお好きですか?」
針金さんからの質問に僕は「はい」と答える。そこに裏から三人組が登場する。
「こちらの方達はラーメン三銃士と言います。左から麺の乃士さん。その隣、スープの出川さん。一番右が具の多木さんです」
紹介をうけた三人は挨拶をする。
「うっす」乃士
「よろしくです」出川
「どうも」多木
針金さんの紹介にリサは箸を落とす。
「どうしたの?急に箸落として」
「本当に存在していたのね、ラーメン三銃士。・・・凄い威圧感だわ」
「知ってるの、リサ?」
「当たり前よ。漫画界では有名人のこの三人。ネタにされてる部分もあるけど・・」
と続け、ラーメン三銃士の説明をしてくれた。この三銃士は美味しんぼ38巻の漫画に出てくるラーメンに詳しい自称プロの三人らしい。あるラーメン屋を立て直すために連れてこられた三人らしい。しかもその姿が黒のタンクトップ姿で登場。
「美味しんぼ知ってるの?」
「当たり前でしょ。究極と至高の料理対決する親子がまたたまらないの」
「ジャンルの守備範囲広すぎじゃない」
僕はリサの知識に唖然とする。どんだけだよ。
「ちょっと、僕の提案でこの三人に協力してもらいラーメンを出そうと思ってるんですよ。副業でラーメン屋やりたいんですよ」
針金さんはライターの収入では生活もきついので副業で稼ぎたいとの事だった。その店で出すラーメンの試作を作ったので試食をして感想をしてほしいとの事だった。またいきなりだなぁと僕が思っていてもリサが話し出す。
「いいわ。ラーメン三銃士の考えたラーメンを食べてみたいわ」
リサはウッキウキ。僕はどうしてこの流れになったと考え、もしかしてどっきり?なのかと周囲を見渡す。だがフードコートのエリアには食事をしている家族連ればっかりで誰もいなさそう。何で僕たちなの?と考察していると。
「では、これをどうぞ。食べてみてください」
針金さんは僕たちにラーメンを差し出さしてきた。早いよ。出てきたラーメンの見た目はスープは透明で、麵は細麺、具材はチャーシュー、三つ葉、半熟卵の輪切りが乗っているラーメン。あっさり系か?
「これって、何味?」
リサは針金さんに質問していた。
「塩味です」
「なるほど」
リサは顎を擦る。僕はリサに対し何が成程だよと心の中でツッコみを入れていた。リサは箸で拉麺を一口すする。その時、リサに電撃が走った。
「美味しいわね」
リサのその言葉を聞き、僕もそのラーメンをすする。
「おお、確かに」
リサの言う事は本当だ。食べてみた時の麺の食感、スープの味は濃くなくあっさりした塩味。具のシャーシューも味が付いていて、そこ迄しつこくない。スープとシャーシューが味がぶつかると思ったけど、そんなことは無かった。
「流石です。ラーメン三銃士の方々」
「ありがとう」×3
これなら、店で出せるよと僕が言おうとしたその時、リサからある質問が。
「値段設定いくらしようとしてるの?」
「んー。そこ聞くかい」
針金さんは痛いとこ突くなぁと笑う。
「当たり前でしょ。お客さんはいくら味良くても、値段見ちゃうもん」
「実は手間のコスト、いい食材を使っているのを考えると、一杯1500円かな」
「たっか」
僕はその値段を聞いて飲んでいた水を吹き出してしまった。
「だよねぇ」
針金さんは苦笑いをする。そんな高い値段のラーメンだとここにいる一般庶民には手が出しずらい。ここにいる一般家庭層なら絶対に手を出さないかも。僕が頼んだスガキヤラーメンは単品690円、ライスセットで810円だ。学生のお財布にも優しいし、美味しい。昔はもっと安かったと母さんが言っていたことを思い出した。今、物価高で原価が上がっていて利益が出ないからこの値段設定なのだろう。
「そんなの売れるわけないじゃない、アホくさ」
リサは鼻で笑う。
「わかってるさ。でも食べてもらうなら、みんなに美味しいものを食べてもらいたいのよ」
針金さんは肩を落として、愚痴を漏らす。
「もっと値段下げて売る方法あるよ」
「本当?」
リサのその言葉に針金さんは天にも昇る気持ちで嬉しそうに聞いてくる。
「リサ、適当に言うなよ」
「本当よ」
リサはそう言うと本を針金さんに差し出した。
「はい」
「ラーメン才遊記?」
リサはラーメン才遊記という漫画を針金さんに渡す。針金さんはナニコレ?といった表情だ。
「この漫画にはラーメンにまつわる色々な事案について書いてあります。これを参考にやってみてはどうです?参考になりますよ。至高もいいですが普通のラーメンを提供するようにしてみたらどう?参考なると思うよ」
針金さんは漫画を読むと「おぉ、なるほど」と納得していた。まじか、それでいいのか。針金さんはその後は黙読し、本で涙を流していた。
「あなたは神様か、天使様、ありがたや、ありがたや。これを参考に出店頑張ってみます」
「は、はぁー」×3
針金さん、ラーメン三銃士はリサを手を合わせ拝んできた。拝むな。たしかに中身天使だけど。僕は周りの視線が段々怖くなってきたので、リサの食器と自分の食器を返却口に持っていくとリサの手を引き、その席から逃げるように帰った。僕たちが見えなくなるまで、針金さん達は拝んでいた。
その後・・・
ある日の夕方、夕食前の地元のTVニュースを見ていた時だった。母親は鼻歌交じりで夕食の食材を調理している。今日は何の料理だろうと匂いで僕は予想しているとリサが声をあげる。
「あ、見たことある人がテレビ出てるよ」
リサがTV画面を指を差し、僕に教えてくれた。僕もそのTV画面を確認。
確かに、見た人は針金さんだった。TVでは、この店が凄いというニュース番組の特集だった。ニュースによると針金さんのお店はラーメン屋で連日2時間待ちの人気ラーメン店と言う。
『今日はこの店が凄いで今乗りに乗っているラーメン店”天”さんの来ています。そしてこの方が店長の針金さんです』
『どうもよろしくお願いします』
『しかし、凄いですね。連日、大盛況で』
『ありがとうございます』
針金さんは笑顔でインタビューに答えていた。さらにインタビュアは質問を続ける。
『このラーメンのヒットの秘訣は何だったんですか?』
インタビュアにこの質問を投げかけられると針金さんから思わぬ答えが出てくる。
『実は、あるショッピングモールのフードコートで神様に出会ったんですよ』
インタビュアは針金さんの言葉に何を言ってるんだこの人は?という表情だった。
『二人組の高校生と出会ったんです。信じてもらえないでしょうけど私が見た時、一人の女子校生からオーラが出ているのが見えたんです。その時、私は直感でその子に近づき話しかけたんです。自身の作ったラーメンを試食してもらう為に近づいたんです。この頃、私のほかに三人とラーメンの試作を作っていたんですが行き詰ってしまったんですが、この女子高生こそが私にとって神の啓示だったんです』
針金さんはリサとの出会いを熱弁。神様じゃなくて天使なんだけど、針金さん鋭いな。
「私は神様じゃなくてホントはて・・・」
と言おうしたところで僕はリサの口を手で塞ぐ。リサの言葉に料理をしている母さんが反応しそうになる。
「リサちゃん、何か言おうとしたけど、どうしたの?」
「何でも無いよ、母さん。あはははは。リサは天功に憧れてて」
と僕が無理やりな感じでリサの言葉に被せ、僕はリサを睨みつけると何かを察したのかリサは黙って首を縦に振る。訳の分からない事を瞬時に言ってしまったけど、まぁいいか。母親も別に気にしている感じではなさそうだが聞いてくれていた。
「そうそう。私ね、将来マジシャンの助手になりたいの。プリンセス天功に憧れるわ」
「あら、そうなの」
僕の言葉を母親は信じているようでびっくりしていた。少しは疑ってくれよと僕は肩を落とす。リサからは肩を叩かれ、励まされる。
「お母様、私もお料理手伝いますよ」
「あらホント?嬉しいわ」
「智樹。私がサッポロ一番塩ラーメン作ってあげる」
とリサが僕に言ったのだ。10分後、作って出てきたものがどう見ても塩ラーメンと思われるが出てきた。
「何、これ?」
「ラーメン」
出てきた物はスープの色が真っ黒。麺を一本手でつかみ折ってみる。麺は真っ黒のバリ堅。具材はチャーシューと思われる何か。匂いはくさい。
「ちょっと袋のインスタントラーメンの作り方見ながらやって、どうしてこうなった」
「クッキングパパみたいな感じでインスタントをちょい足しで旨くならないかなとおもったらこうなった」
リサはエヘッと可愛く笑いながら答え、こうも言っていた。
「言うは易し行うは難し」
「自分で言うな。何で知ってのそんな言葉?」
「漫画で知ったの」
リサは自信満々に答える。
「じゃぁ、うちのルールでご飯はお残し駄目なので自分で食べてね。ね、母さん」
「そうね」
母さんは笑顔で答え、リサは肩を落とし「そんなの、いやぁーーー」と叫び夕食前に天使の絶叫が響くのだった。
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