#12 まるで、世界が一新したような。
不思議な声が頭に響いた。
【固有能力『自立演算』はマスターの精神の混乱を感知、問題の解決します。】
【固有能力『自立演算』は固有能力『エネルギー変換』の制御、及び自己防衛フルオートで行います。】
【周囲の状況を確認、情報を分析します。】
初めて聞いたようで、ずっと昔から知っていたような声。
何か、大切なものが再び蘇った感覚を得た。
俺は、ボロボロになった可憐を抱きかかえる。
対人戦闘であればほぼ無敵を誇る可憐だが、彼女とて傷つけばこのように気を失う事もある。
「あとはお兄ちゃんに任せろ・・・・・・」
気を失っているので聞こえないはずだが、少し可憐の顔色が良くなった気がする。
腕の中に可憐をかかえながら、空中を歩く。自分にかかる重力というエネルギーを変換する事でまるで空中を歩くかのように空を飛ぶ事ができる。
軽い足取りで、上空へと駆け上がる。
そして、敵戦艦に狙いを定めると、能力を行使した。
「『変換』」
結月の呟きによって、世界が改変され、構築されていく。物理法則に干渉し、自由自在に変化させる。
砲弾を防ぐ事なんて朝飯前、飛んで来た砲弾に干渉し、その物理的なエネルギーを生命エネルギーへと変換し、可憐の回復に利用する。
そこに論理的な思考回路は既に存在せず、どちらかというと本能によって動いていた。
「落ちろ。」
敵水上艦及び空中戦闘艦に作用しているあらゆる浮力というエネルギーを変換し、ゼロにする。
演算さえできれば射程無限、魔力消費量ゼロを両立できる。
12隻の戦艦及び駆逐艦は何も出来ずに海へと沈んでいった。働くはずの浮力が働かず、物体が落下するような速度で下へ沈んでいく。
結月はさらに追い討ちをかけた。
「やっぱりやめた、消えろ。」
これだけでは物足りないと言わんばかりに、さらに能力を行使する。
固有能力『自立演算』は、命令通りに演算を開始、コンマ1秒未満で演算を終えると実行に移す。
【固有能力『自立演算』は、固有能力『エネルギー変換』を行使します。】
干渉する対象は、搭乗員を含む全ての敵艦。
あらゆる物質は、粒子によって構成されている。それらが相互作用をし、物質や生物を構成している。そしてそこには当然、分子間力のようなエネルギーが発生しているのだ。
それらを全て熱エネルギーへと『変換』する。
文字通り、全てが分解され跡形もなくなった。
「・・・・・・直すか。」
地面に足を付け、振り返った結月は、街の修復を始めた。
✳︎
「ははは、相変わらず凄まじいな。」
島内の全てのテロリスト達を無力化し、暇になった結都は、空中に静止しながら息子の活躍を覗いていた。
そして、結月は期待に応えた。
覚醒から1分以内に敵戦力全てを跡形もなく消し去った。
おそらく敵は、誰にどのようにして殺されたかも気づいていないだろう。苦しむ暇もなく、文字通り消滅したのだ。
「無理やりな覚醒だったから、もしかしたら暴走するんじゃないかと冷や冷やしたが、何もなかったようだな。」
街の修復を始めた結月を見ながら、そんな事を呟く。
「見たところ記憶の方は戻っていないみたいだが、自分が能力を持っている事を自覚したって段階だな。」
結都は、結月がまだあの能力の本当の恐ろしさに触れていない事を踏まえて、記憶はまだ戻っていないと判断する。
しかし、人外レベルの演算能力の速さから『自立演算』の方は完全に理解しているようであった。
自らの五感+体内にある魔力回路から得た情報を自立的に分析、演算、予測、実行をし、マスターである結月のやりたい事をサポートする。
それをもう一つの能力である『エネルギー変換』によって自動かつ、永久的に行い続ける。
酸素が無くても酸素の代わりとなるエネルギーを作ったり、体内で二酸化炭素を酸素と炭素に分解したりできるので宇宙空間でも生存は可能だ。
「相変わらず、とんでもない息子を持ったな。」
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