#9 管理棟襲撃
「っ!!!可憐、お客さんがいるぞ。」
人工島の管理塔の一室で、紅茶を飲みホッと一息入れた直後、結月の父親である市野結都は突然立ち上がった。
「お父様?」
結都に言われ、可憐も手に持った紅茶のカップを机の上に丁寧に置いた。
そして、魔力を使って周囲の状況を確認する。
するとすぐに、結都が警戒していた者が何なのかがわかった。詳しい装備などは勉強不足なのでまだ特定できないが、200人の武装した能力者がこの管理塔を囲っている事を感じ取った。
「この感じ・・・・・・あそこのバカどもか。」
「どうしますか、お父様。私の探知ではわかりませんでしたが、おそらく襲撃を受けているのはここだけではないはずです。」
「まずは周りの雑魚を叩く。他へ救援に向かってここが落ちたら元も子もないからな。海底ケーブルや魔力アンテナはおそらく切断されている、衛星通信で千葉にある摩天楼と連絡を取るぞ。」
「わかりました。」
普段ははっちゃけている可憐ではあるが、今日はとても真面目そうな表情であった。
尊敬する父親の背中を追いながら、状況を確認する。
出発前に聞かされていた万一の可能性の、悪い方が当たってしまった。
すぐに、最愛の人物である兄を心配するが、兄を殺せる人物がこの地球上にはおそらくいない事を再認識し、気持ちを押し殺した。
セオリー通りに動くなら一般市民の救助が最優先である。
「市野さん、海底ケーブルやアンテナをプラスチック爆弾でやられました。魔力波による通信ができません。」
高速で移動し、窓から飛び降りようとした時、隣に走ってきたこの人工島の防衛部隊の隊長が結都に報告を行った。
「たかだかC4で全ての通信設備を壊せるわけないだろ。敵は相当な戦力を用意しているのではないか?」
通信設備ほどの重要な施設であれば魔力障壁が完備されているはずだ。
ならば、その魔力障壁を打ち破る手段を敵が持っている可能性が高いという事だ。
「はい、おっしゃる通りです。現在敵戦力の確認を急いでおりますが、敵の全兵数は2個中隊程度、指揮の高さから正規軍である可能性が高いです。敵の能力については、現在調査中です。」
通信が使えないのは厄介だが、通信が切断された事に気付けば、本土の部隊から応援が来るだろう。ここから本土までの距離はおよそ1000km、現在の技術であれば航空機が1時間足らずで到着する。
「こちらの兵力は?」
「300名で、そのうち全員が能力者です。」
「150人は島内の人々の地下シェルターへの避難誘導、残りは50人ずつ3つの部隊に分けてそれぞれ島内の敵を無力化しろ。ここの守りは僕がやる。それと、一応周辺の状況も見ておけ、海上に艦隊が待機さている可能性が高い!」
「了解!」
「可憐、お前は結月の護衛に行け!万が一の事があるかもだ、あいつが暴走を始めたら一般市民の避難を優先させろ!決してあいつを止めようとは考えるな!」
「わかりました、お父様」
結都の指示を受けると、可憐は一足先に窓から飛び降りた。『加速』と『マイナス減速』を同時に扱える可憐は、能力者の中でも飛び抜けて機動力が高い。瞬発なら秒速2km、長距離でも1時間に4000kmを駆け抜ける事ができる。愛する兄のおおよその位置を特定すると、全速力で空を駆け回った。
結都は、指示を的確に出すと窓から飛び降り、周囲を確認する。
「そことあそこと・・・あそこか・・・・・・すぐに片付ける。」
空中で静止した結都は、敵の数を数えながら笑った。
敵の位置は全て補足した。見たところ、目立った敵はいない。
「ちょっとはできるみたいだが、僕の敵ではないな。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます