#4 脱出を試みる

まずは状況を整理しよう。

俺は何もない白い部屋に座らされていて、足と腰を固定されているので立ち上がる事はできない。

手に届く範囲には忌々しい『婚姻届』と俺用の印鑑しかない。

ポケットの中にはビスケットしかなくて・・・


「ってちょっと待てよ!なんだよこのビスケットは!」


「え?私にもわかりませんが、ポケットの中にはビスケットがあるものでは?」


「どこの常識だよ!」


落ち着け、こいつが頭おかしいのは元からだ。情報を整理しろ。

発信機の類は全部奪われている。

スマホもない。


あれ?詰んでね?

これ詰んでね?


どーしよっ!あそれっ!どーしよぉ〜♪


「答えは決まりましたか?結月君♪」


「う、うん。」


「なら早く押して下さい。あぁ〜感激です!これから先ずっと結月君と一緒ですね。」 


「ちょ、その前に、お父さんと相談したいんだけど・・・・・・」


「それなら安心して下さい。既に婚約の許可は得ています。あとは結月君がそこに印鑑を押すだけです!」


「終わった・・・俺の人生・・・・・・」


「え?何が終わったんですか?」


だが俺は諦めない。

起死回生の手を探せ!探せ!探せ!

今俺にできる唯一の時間稼ぎと言えば・・・・・・


「あ、あぁ〜とりあえずそのビスケットを食べさせてくれないか?」


「えぇ、構いませんが・・・・・・」


俺は、渡されたビスケットを見つめる。

こんな物をポケットに入れた覚えはない。そして、このヤンデレもこのビスケットについては知らないらしい。

これが何を意味するか、そう、これはおそらく・・・・・・


俺は、ビスケットを真っ二つに割った。


たったそれだけ、だがこれが、トリガーになるはずだ。割れたビスケットを見つめる。


そしてそれからおよそ10秒後、扉が爆発した。


「大丈夫かっ!結月っ!」


ほらな、やっぱり。


「お、親父ーー!助けてくれー!」


「おぉ、無事か。」


「あぁ、無事だよ。」


よかった、賭けに勝った。

こんなよくわからないセンスをしているのは親父に違いないと思ったんだよな〜

これで全て解決だ、流石親父!


「私が作った護符に反応があったから急いで帰ってきたのだが・・・・・・なんだ?これは?婚姻届?あーなるほど、結婚の了承をして欲しいんだな?いいだろう、私が許可する。」

「えぇ、そうなんです。」


「違うわ!こいつに監禁されていたんだ!助けてくれー!」


嘘をつくな、ヤンデレ!


「監禁だと?なんだ、情けないな。仮にも市野家の男ならこれぐらいの状況ぐらい自分で打破してみなさい。」


「無理だったから呼んだんだろ!」


相手は、学校ランキング3位の化け物だそ?どこに俺の勝機があるっていうんだよ。

俺が教えてほしいぐらいだわ。


「ふっ!そうか、。」


「もったいない?」


「いや、忘れてくれ。早百合君、すまないが、息子は私の娘に夢中らしい。どうしても結婚したければ、こいつに「うん」と言わせるんだな。」


「わかりました、おじさま。次の手を考えます。」


「ふっ!そうか。じゃあ待たな。私は、早百合君の両親と旅行中なので、失礼するよ。」


そう言って、遠くの彼方へと消えていった。


・・・


・・・


「親父ー!俺まだ、拘束されたままなんだけどーー!というか別に可憐に夢中でもないわ!」





____________________________


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