#15 使命
私のお兄ちゃんは、 少し、いやだいぶ特別である。
そもそも『市野』という苗字だけで、世間では1目置かれ、喧嘩を売るような真似をする者はまずいない。
その中でも、私たち兄弟とお父さんは更に特別で、レッドリストにのるほどだ。
レッドリストにのるという事は2つの意味を持つ。
1つ目は戦争が起こった際に、強制的に参加しなければならないということ。普段は、能力者の事をバカにする政府であるが、レッドリストへの信頼と保護は厚い。
危険人物への認定と共に、政府の兵隊として雇用するのだ。
2つ目は、権力である。
レッドリストにのると、年に1度行われる会議に参加し、国の発展のために会議を行う事になっている。早い話、日本の政治に口を挟めるということだ。
ちなみに結月は例外として自分がレッドリストである事を知らない。
嫌な予感はあった。
まず、教室にお兄ちゃんがいないのである。
いつもなら絶対に可愛い妹を待ってくれている(本人の主観です。)お兄ちゃんが忽然と姿を消した。
大事件だ。
すぐさまスマホを取り出し、政府の能力者管理局へと連絡する。
「市野可憐です。お兄ちゃんの座標を10秒以内に下さい。いいですか、10秒以内ですよ。」
「は、はい!ただいま!」
焦ったようにそう告げると、プツンと通信が切れた。きっちり十秒後、可憐のスマホに一件の座標が送られる。
手慣れた手つきでそのファイルを開き、兄の位置を確認する。
「あそこのデパートか・・・・・・何しているんだろ・・・・・・」
頭の中で、いろいろな可能性を想定する。真っ先に浮かんだのは誘拐、だがそれならデパートに行くのはアホすぎる。
では、買い物とか?ありえない。
お兄ちゃんが帰宅よりも買い物を優先するはずがない。
だとしたら考えられるのは・・・・・・
ま、まさか・・・私の誕生日プレゼントの下見とか?!(2か月前)
だがそれもすぐに否定する。
あのお兄ちゃんの事です。既に結婚指輪を買ってくれているでしょう。
だとしたら考えられるのは・・・・・・
女・・・
ま、まさかね~あの奥手お兄ちゃんが放課後にデートするはずがな・・・
いや、あるかも・・・
どうしよう、不安になってきた・・・
「よし、私も行ってみよう。」
可憐は悩んだ末、決断する。
「ごめんねお兄ちゃん、これはストーカーじゃないのただお兄ちゃんを変な女から守るだけだから。」
フルスロットルで能力を行使し、兄の待つデパートへと向かった。
*
そこは、混乱していた。
火は消え、爆発は収まったが、圧倒的なエネルギーを持った何かがデパートの中にいた。
何重にもコンクリートの壁があるが、その圧倒的な存在感がそれを打ち破っている。人々は恐怖した、かつてこれほどの魔力を感じたことがあっただろうか。
身を守れるものは、すぐさまその場から離れようと散っていく。
身を守れないものは少しでも身を守ろうとうずくまった。
中には呆然とし、それを見つめているものもいた。
可憐の良い予感はあたる。
「この感じ、間違いなくお兄ちゃんだ・・・・・・」
崩れかかったデパートの屋上に降り立った可憐は、天井にできた穴から兄のもとへと向かう。
3階の中央付近に、お兄ちゃんはいた。
膝の上には、一人の女の子が嬉しそうに寝っ転がっていた。
見覚えがある子だ。
「久しぶりだな、可憐。元気そうで何よりだ。」
だがそんな事よりも、今は兄との再会がたまらなく嬉しかった。
間違いない、お兄ちゃんだ。
「おっおっお久しぶりです、お兄ぢゃん・・・・・・ずっとずっどあいだがっだでず・・・・・・」
思わず涙がこぼれる。
「あぁ、迷惑かけてすまないな、政府との約束だ。提案した側である俺が約束を破るわけにはいかないよ。」
お互いに何を喋っていいのかわからない。
「そろそろ時間だ、また近いうちに会おう。」
「はぁい!お元気で、お兄ちゃん・・・」
【固有能力『自立演算』は『盟約』によりマスターから2億5042万9032秒分の記憶を削除及び封印します。】
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前作も読んでいただいている方はそんなにですが、お久しぶりです。
昨日、一か月ぶりぐらいに昔から追っていた小説が更新され、やる気が出た佐々木サイです。
この小説を投稿し始めて半年ほど経ちましたが未だに15話、どうなっているんでしょうね。
はい、ごめんなさい。もう少し頑張ります。
星とレビューをいただけるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
ではまた次回~~
(何が言いたかったのか?)
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