#14 記憶
俺が初めて能力を使った時の周りの反応を今でも覚えている。
可哀想に、なんて弱い能力なんだ、と憐れむ顔だ。だが、俺の家族である父さんと母さんだけは喜んでくれた。
そしてその時、偶然その付近の魔力を測っていた研究者が驚きの声をあげた。
当然、みんなの視線がそちらに向かう。
そして、衝撃的な事を告げた。
「彼は、化け物かも知れません。」
大真面目にそう言った。誰もが耳を疑った。
確かに、あの市野 結都の息子ということで期待していたのは事実だ。だが、同年代の人達が100を超えた魔力量は未だに10、能力は凄いんじゃないかと期待したが、『エネルギー変換』というとんでもなく弱い能力。
何故弱いかは実に簡単だ。第一に、変換に魔力が必要なため効率が悪いこと、そして第2に肝心な変換の演算が人間の脳ではほぼほぼ不可能な点だ。
物理的運動と魔力の変換ならば比較的簡単だ。しかし、光エネルギー、音エネルギー、熱エネルギーなどイメージがしにくく、目に見えない反応を演算するのは非常に難易度が高い。
また、仮に演算が出来てもそれにかかる時間は相当なものになるだろう。
以上の理由からまさか誰も彼が化け物だなんて思わなかった。
この時までは・・・・・・
「君、今の発言はどういう事かね?君も見ただろ?彼は間違いなく無能だ。」
ある男が、自慢の髭を撫でながら呟いた。周りからも同じような意見が述べられる。だが、先程発言した研究員は声を震わせながら言った。
「魔力が、変化しなかったんです・・・」
「どういう事かね。」
「私の能力は、魔力の量を正確に感知する能力です。あまりパッとしませんが非常に便利で、例え魔力量1であろうと見逃せません。ですが、私には彼の魔力が動いたようには見えませんでした。」
「「「???」」」
言っている意味がよく分からず、首を捻る。
「つまりですね、彼は能力の行使に自分の魔力を必要としないんです。空気中の魔力を好きな時にエネルギーに変化でき、好きな時に魔力に戻せるんです。それも、永久に・・・まだ分かりませんか?もし彼が演算系の能力が新たに発現する、もしくは変換の演算を極めれば誰も彼の前で動けないということです。 」
だんだんと理解しだしたもの達がざわつき始めた。そして、その視線の矛先が1人の少年とその母へと集まる集まる。
少年の母の能力の1つは『並列演算』同時に複数の事を考える事ができる能力だ。そして、能力はよく、遺伝する。
「もし彼が演算を拡張する能力を得たとしたら、世界が変わります。想像してみて下さい、ありとあらゆるエネルギーがゼロになったり突然現れたりするのです。電気はもちろん無限に供給できるし、魔力だって無限に作れます。そして、エネルギーならば何でもです、例えば熱エネルギー太陽の熱をエネルギーとして捉え、変換できるとしたらもう誰も彼を止められません。」
「そこまでにしてくれませんか。」
パーティー会場に突然響いた凛とした声に全員が口を噤んだ。
「そのような話を私の大事な息子に聞かせるわけにはいきません。本日はもう結構です。先に帰らせていただきます。」
鶴の一声によって、誰もが別の方を向き黙る。唯一、このパーティーの主催者だけは参加していただき有難うございます!、と告げた。
そして俺は、母に手を引かれ会場を後にした。
そしてその日から1ヶ月後、2つ目の能力である『自立演算』が発現した。
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読んでいただきありがとうございます。
前作『序列1位の最強魔法師に明日はあるのか』もよろしくお願いします!
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